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永遠の未完作品  作者: 夜桜詩乃
8/9

来襲

 人は必ずしも無意識のうちに選択を間違える事がある。

 例えば、朝食のメニューだったり時間管理だったり……色々だ。

「神谷君、朝ごはん出来ているわよ」

 そして、俺が間違えた選択肢としてはやはり昨日のアレだろう。

 どうして、あの時俺は飯島との決別を選ばなかったのか……。

「確か、ミニトマトは嫌いだったわよね? 好き嫌いはよくないと思うけど、今回は目を瞑ってあげるわ」

 そう言って俺のサラダにはミニトマトを入れない飯島。

 もう、コイツに何を言っても無駄だと悟った俺は飯島が作った朝飯を食べることにした。

 メニューは簡易的なサラダ(ミニトマトなし)に目玉焼き、トースト、コーンポタージュという洋風な感じだ。

「いただきます」

 とりあえず、トーストに噛り付いた俺を正面に座った飯島がニコニコと見つめている。

 正直、気持ち悪い。というか完全に何か裏があるんじゃないかと疑ってしまう。

「なんだよ……?」

「別に特に意味はないわ。ただ……おいしい?」

「ああ、美味いな。流石ヤ〇ザキパンの食パンだわ。焼いてもそのままでも美味い」

 俺がそう言うと、飯島はムッとして自分のサラダに入っていたミニトマトを一個俺の方に入れてくる。

「……なんでだよ」

「さぁ? 何でかしらね?」

 女心……というか、コイツが考えている事はよくわからん。

 ヤマ〇キパン、おいしいと思うんだけどな。

「ところで、神谷君は朝食は洋食派? それとも和食派?」

 飯島がトーストを手に持ちながら俺に聞いてきた。

 正直、好みはないんだが……ここで何も答えないとまたミニトマトを入れられかねない。

 コップ一杯の水と引き換えに食べたのだから、また入れられたらたまったもんじゃない。

「そうだなぁ……どちらかと言うと和食派だな」

 俺がそう答えると、飯島は手からトーストを落とす。

 皿の上に綺麗に着地したトーストに対して俺が脳内で100点を与えていると、飯島はワナワナと震え始めた。

「なんてこと……失敗したわ」

「は?」

「嫌いな物は把握していたし、好きな食べ物も知っていたけれど……まさか、和食派だなんて……」

 え? 逆になんで把握してるの?

 ちょっと怖い。

「いや、そこまで気にする必要は……」

「あるわ! 幼馴染はきちんと相手の好みにあった料理を出す義務があるのよ!」

 ねぇよ!!

 大体、現実に幼馴染が朝食を作りに来る事もねぇよ!!

「安心して! 明日からはキチンと和食にするから!」

「明日も来る事は確定なんですね……」

 俺は一人燃えている飯島を放置して、朝食を食べ続けるのだった。



「あっちー……」

 現在、通学路を歩きながら(飯島は当たり前のように俺の隣を歩いている)この暑さに呪詛でも吐いてやろうかと考えて居た。

「今日の最高気温は30℃を超えるらしいわよ」

「マジかー……」

 30℃を超えるとか、ちょっと地球さん本気出し過ぎじゃないですかね?

 もうちょっと、人類に手加減してくれてもいいと思うんだけど。

「てことで、はい、コレ」

「なにこれ……?」

 飯島が差し出してきたのは一本の魔法瓶。

「スポーツドリンクが入っているわ。ちゃんと水分補給をすることね」

「あぁ、なんかありがとう」

 魔法瓶を受け取ってカバンに突っ込んでおく。

 まぁ、飲み物を買う手間が省けたと思えばありがたい。

「ん……?」

 そう思って歩いていると、前方にスーツを着た男性がしゃがみ込んで何かを探しているようだった。

「はぁ……」

 スルーしてもいいが、それはそれで何か罪悪感がある。

 それに、授業中に寝るのにも支障が出そうだ。

「あの~、どうかしたか?」

 俺が声を掛けると、男性は顔を上げてこちらを見た。

「あぁ……すいません、ちょっとコンタクトを落としてしまいまして……」

 男性の年齢はぱっと見で30代中盤と言ったところか。

 結構イケメンな気がする。

「そうでしたか……よければ、探すの手伝いますよ」

 俺はそう言ってその場にしゃがみ込む。

 てか、普段なら何かしら言いそうな飯島が何も言わないのが気になるな……。

 まぁ、コイツの不可思議な行動は今に始まった事じゃないから別にスルーしてもいいか。

「ん~……」

 肉でも焼けるんじゃないかってレベルまで熱されたアスファルトを手で触って探すが、一向にコンタクトが見つかる気配はない。

 てか、この暑さだと溶けたりしてるんじゃないか? コンタクトが溶けるのかは知らないけど。

 と、そこで先ほどまで黙っていた飯島がこちらに近づいてきた。

「……お父様、何をやっているのですか?」

「え……?」

 俺が顔を上げると、先ほどまで一緒に地面をまさぐっていた男性はいつの間にか立ち上がっておりこちらをニコニコと微笑みながら見下ろしていた。

「なに、恵が気になっているという男を見てみたくてね」

「へ……?」

 アカン、完全に状況を把握できていない。

「さて、バレてしまっては仕方ない」

 男性はそう言って自分の顔に手を当てると……。

 べリべリッ! と音を立てて顔をはがし始めた。

 うっわ、グロ……。

「さて、改めて自己紹介をしようか」

 顔の皮膚を引き破って出て来たのは、やはり30代半ばに見えるイケメンの男性。

「飯島グループの社長をやっている、飯島 孝之だ。よろしくな青年」

 謎のドヤ顔でこちらに手を差し伸べてくる男性に向かって、俺はその手を取るわけでもなく口を開いた。

「その映画も裸足で逃げ出すレベルの変装マスク……この気温だとくっそ熱くなかったんですか?」

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