鈍感なあなたを堕とす最適な方法!
昔投稿したものを加筆したものです。
『親友の娘がヤンデレな件について!』の葵ちゃん視点です。
色々とご都合主義ですが、お察し下さい。
性的な部分を含みますので、NGな方は、ブラウザバックをどうぞ。
私には好きな人がいる―。
「好きだ、俺と付き合ってくれ!」
ここは私の通っている高校の空き教室。
陽が暮れるこの時間に、知らない先輩に呼び出され告白をされた。
真剣な表情でこちらを見る先輩は世間一般で見ればかっこいいほうだと思う。
でも―、
「ごめんなさい」
私はそう告げ、空き教室から去ろうとするが、
「待ってくれっ!」
ガシッ―。
先輩は私の手を掴み放してくれない。
「あの―
「理由を教えてくれ!俺の何がいけない!?」
私の手を掴む力が強くなる。
痛い…、"あの人"ならもっとやさしく握ってくれるのに―。
再び向かい合い私は最後の言葉を発する。
「私には好きな人がいるの、だからあなたとは付き合えないわ」
手を振り払い私は先輩を残しその場を後にした―。
「勿体無いな~、あの先輩結構お金持ちの会社の息子らしいよ?」
自分のクラスに戻ると、中学からの友達である綾瀬千晶が話しかけてきた。
「興味ないわ」
あらかじめ帰る準備をしていた私は鞄を手にとり教室を出て行く。
「ちょっと葵~、おいて行かないでよっ」
「千晶が変なこというからでしょ?」
私の名前は橘葵。
私と千晶は友達という事もあるけど家が同じマンションであり隣の部屋同士。
千晶は一人暮らしであるが、私は家族と一緒に住んでいる。
高校で一人暮らしは羨ましいけど、色々と一人でやらないといけない為にそれなりと苦労があるみたい。
そんな彼女の家にはよく"避難"という名の遊びにいくことが多い。
「千晶、今日も泊めてくれない?」
「いいよ~。私としては食事作ってくれるだけでありがだいし!」
しばらくして私達は家路につく。
徒歩で10分程のこのマンションは学校に通う場所としては最適な場所。
鍵を開け、リビングへと入ると薄い壁のせいか横から艶めかしい声が聞こえてくる―。
「泊めてほしいってこういう事ね…」
「いつも本当にごめんね…」
私の両親はとても、それは"とても"仲がが良い。
特にお母さんからお父さんに対してどこか狂気じみた愛を感じる。
私は高校一年の15歳、両親は共に同い年の30歳と私を生んだのが今の私くらいの歳だという事実。
こうやって千晶の部屋に泊まりに来るのはよくある事だ。
もし今の状況で家にでも帰ったりでもしたら一体どんな顔をするだろうと考えた事がある。
だけどそんな恐ろしい真似はしない。
お母さんはお父さんの愛情が実の娘である私に向く事にさえ嫉妬し、狂気を孕んだ目で私を見てくる事がある。
別に仲が悪いわけではない、お母さんとは一緒に買い物も行くし映画だって見に行ったりする。
むしろ仲良しなのだが、お父さんの事が絡むと人が変わったようになってしまう。
その結果、私は親友の千晶の部屋によくお邪魔するようになった。
「いいよ、こっちの部屋は聞こえちゃうから閉めておくね」
例の声が聞こえてくる畳の部屋を閉じ、安息を手に入れる。
「今日は何つくるの?」
千晶の返答に私は冷蔵庫を開ける。
勝手知ったる友達の家、私が以前買った食材が多数保存してあった。
「う~ん、牛肉にジャガイモ…ニンジンっと…」
私は材料を台所へ並べ、野菜を水洗いしていく。
「その材料からして、カレーだねっ!」
自信満々にこちらを指差してくるが―、
「不正解。今日はボルシチよ」
「ボルシチ…!?あんたそれ一般家庭で作る料理じゃないでしょ…」
千晶が呆れているが私はそんなの気にせず野菜を切り、鍋に水を入れ牛肉を煮ていく。
その動作をじっと眺めていた千晶がふと思い出したように言う。
「葵って確か、料理教室通ってるんだって?」
「そうよ。私には栄養管理しないといけない人がいるし、将来は栄養士でも目指してみようかしら?」
「うへ~、私はまだ将来の話とかはいいよ…」
食器棚からスープ皿を用意し、盛り付けていく。
よし、できたっ。
「さ、食べましょ?」
「待ってました!!」
私達はテーブルを挟んで座り合い、夕食を頬張る。
「ん~、おぃしい~。ほんと葵には私の嫁に来てほしいわ~」
はふはふ、と美味しそうに頬張りながら食べる千晶はハムスターのように可愛い。
小さい口に小さい顔、身長も小さいが、胸が私よりあるのが妬ましい…。
小動物系の彼女は学校でもとても人気があるらしい。
「それは無理ね。私には心に決めた人がいるの」
その言葉に千晶が食いついてくる。
「それがあの先輩を振った理由?」
「えぇ、そうよ」
「どんな人なの?」
どんな人…。
私にすればあの人の全てが好き、としか言えない。
家は有名人である神鳴家の御曹司。
自身でもお金を稼ぐ能力をもった、容姿端麗・頭脳明晰・運動神経抜群の三拍子。
街を歩けば、10人中10人が振り向くほどオーラを持っている人…。
だけど…、
「そうね…、すごく鈍感な人だわ。超がつくほどの…」
私の言葉に千晶は笑い出す。
「さっきの百面相を見ていればあんたがどれほどその人の事好きかってわかるわね」
「そ、そう?」
どんな顔してたのかな私…。
夕食を終え、お風呂を借りる。
さっぱりとした体を拭き、着替えを用意するのを忘れていた私は以前泊まった際に洗濯して置いてあった衣服をとりに体にタオルを巻いて出る。
「うわ、なんて格好…」
「いいでしょ、ここには千晶しか見る人いないんだから」
ベットがひとつしかない為、その横ふとんを敷いてくれていた。
千晶はその動作を止め、こちらを凝視してくる。
「スタイルいいな~。私ももう少し背があれば…」
「私は千晶の胸が羨ましいわよ…」
お互いにコンプレックスを言い合いながら就寝の準備をする―。
私はふとんに、千晶はベッドに入る。
「電気消すよ~」
「は~い」
パチ―。
静かになった部屋には窓からでる月明かりしかない。
「ねぇ葵」
「何よ?」
「私にも本気で好きになれる人できるかな?」
「できるわよ、人生は長いんだもの」
「そうだよね…、ありがと」
「おやすみ」
「おやすみ」
――――
朝の5時半。
まだ2月からか外は肌寒い―。
千晶の部屋に泊まって翌日。
私は、ある場所へと向かっている。
ここから徒歩で20分はかかるため、自転車を使っている。
キキー、ガタンッ―。
いつもの定位置に自転車を置き、かばんから鍵を取り出して玄関を開ける。
一戸建てのこの家はとても整備されており、広い庭に車を収容するスペースまである。
トントントン―。
ぐつぐつぐつ―。
台所を借り、朝食の準備をする。
流しには昨日暖めて食べてくれたと思われる空の食器が置いてあった。
私はそれだけで嬉しくなり、笑みがこぼれる。
朝食ももうすぐ出来そうになり、味噌汁の鍋を弱火にしてあの人を起こしにいく。
ガチャ―。
素朴なままの飾り気のない部屋のベッドに私の最愛の人が眠っている。
「旦那様、旦那様。起きて下さい…。なんてね…」
未だ起きる様子のない彼に対して、自分の未来の願望を口にしてしまう。
そっとベッドの中に制服エプロン姿のまま潜り込む。
なぜこんな事をしているかと言うと、彼の寝るときの癖で近くにあるものを抱きしめる癖がある。
ぎゅっ。
彼は私をそっと抱きこみ、寝息を立てる。
それだけで私は幸せな気分になる、こんな彼の癖をしっているのは私だけ…。
…私だけの優也さん、優也さん、ゆうやさん、ユウヤサン。
優也さんの匂いを嗅ぐだけでとても気持ちいい…。
すると彼の手が私の体の至る所に触れ、つい艶めかしい声を出してしまう。
その声を聞き、彼の目がゆっくりと開かれる―。
「……う~ん、…ん?ってうわぁあっ!」
起きてしまった…。せっかくもうちょっと堪能していようと思ったのに…。
「おはようございます。優也さん」
「葵ちゃん!?いつもベッドに入るのはやめてくれっていってるだろ!」
「ゴメンナサイ」
「反省してないでしょ…」
はぁ~。と溜息をついた優也さんはベッドから降りる。
「着替えるから、リビングに戻ってて」
「お手伝いしましょうか?」
「葵ちゃん!」
バタンっ―。
追い出されてしまった…。
彼が私の最愛の人。神鳴優也さん。
優也さんはお父さんとお母さんの中学校時代からの友達で親友だという。
お母さんの妊娠時やお金の面で困ったときや若年出産のとき。
数え切れない程の恩があるとお母さんとお父さんは言っていた。
優也さんにお金を返す事を当面の目標にしているとも。
そんな私も小さい頃から一緒に遊んでくれたり、欲しい物をいっぱい買ってもらったりと感謝してもし足りないくらいだ。
昔は私も子供で欲しい物を買って欲しいと願ったりしたけど、今度は私が優也さんに尽くす番。
バイトを禁止されている今の学校では、お金を返す事が難しい。
そんな時、お母さんが優也さんの両親に連絡をとってくれて、優也さんの食生活をなんとかしてほしいと話を聞いた。
私はすぐに立候補し、料理教室にも通うようになった。
勿論、栄養の事も考えて色々と本も買っている。
ガチャ―。
「改めて…おはよう、葵ちゃん」
「おはようございます、優也さん」
そんなこんなで私は今、優也さんに一番近い立ち位置を獲得している。
この日常を大事にしたい…、けど。
私はもっと前に、もっと深い関係になりたい!
この日、私はある決心をした―。
――――
朝の出来事の後。
今は学校の昼休み。
私はクラスでは少し浮いた存在になっている。
自惚れではないが、私はお母さん譲りの容姿の為。入学して当初はかなり告白をされた。
私には好きな人がいた為、いつも
「ごめんなさい」か「わたしには好きな人がいるの」
と断っていた。
そしてあまりにもしつこい人には、
「ごめんなさい、あなたに興味がないの」
と言ってから、私は一年の中で"氷の女王"などと呼ばれるようになってしまった。
それからと言うもの、女子からはちょっと距離をおかれ男子からは変な羨望の目で見られる…。
そんな私に話しかけてくれるのは、親友である千晶と―、
「今日もスーパードライだね。葵さん」
「何よそのビールのCMみたいな表現…」
「そこの席借りていいか?」
「どうぞ、ご自由に」
紳士そうな女性顔の新田一君と、ぶっきらぼうに見えて案外優しい久詰翔君。
この二人は席が近いから話すだけの仲だったが、最近はよく話しかけられる。
「葵~」
購買で買ってきたパンを抱えて小走りで向かってくる千晶。
「相変わらずちっこいな綾瀬は」
「ちっこくないよ!」
「まぁ、大きいよね。一部…」
「新田君、あなた親父くさいわよ」
新田君の言葉に、千晶はぜんぜん気にした様子はなくそのまま私の横に座る。
「セクハラ~!とか他の男子には怒るのになんで新田君にはいわないの?」
千晶の身長の小ささと胸の大きさは反比例しており、よくクラスの男子にからかわれる。
「ふぁ?ふぁってにっふぁふんは」
「口のものをちゃんと食べてから話しなさい…」
ごくんっ。と飲み込み、
「だって、新田君はなんか女の子みたいだから気にならないし」
その言葉に新田君は机に突っ伏してしまった。
彼のコンプレックスは自分の童顔の顔らしい…。
「おにぃちゃん!!」
クラスに大きな声が響き渡る。
しかし、誰も気にせず。一度振り向いただけで世間話を続ける。
もうすでにこのクラスでは日常的になった出来事。
ズンズンと勢いよく歩いてきて久詰君の横にくる。
「おにぃ、なんでいつも私の作った弁当忘れるのっ!」
「お前…、自分の作った弁当味見した事あるか?」
久詰君はコンビニで買ってきた弁当を食べている。
「わ、私は自分の作った物は味見しないようにしてるの…、その…おにぃに一番最初に食べて欲しくて…」
この娘、やっぱりかわいい…。
「俺はこの弁当がある!そうだ…、一の奴が今日弁当忘れてるらしいから。こいつにくれてやってくれ」
「おまっ!?」
「ほんとですか!!」
この妹ちゃんこと久詰夏帆ちゃんは一年間ほど見てきて気づいた事がある。
ブラコンなのは見てわかるが、それ以上に新田君が好きらしい。
だが、その想いは全然通じていないけど…。
私も―、優也さんに好きって気持ちは通じていないのかな…。
結局無理やり弁当を食べた新田君は学校を二日休むことになった―。
そして…。
待ちに待った日がやってくる―。
明日は私の16歳の誕生日。
夜に両親を呼び出し、私の気持ちを伝える。
「な、何を考えてんだ!?あいつは俺たちと同い年なんだぞっ!?」
やっぱりというか、そう言われると想定はしていた。
「ふふふふふっ」
「おぃ、桜!何わら…って…る…!?」
狂気に満ちた目で笑うお母さんを見て、お父さんは縮こまる。
「あなたは黙ってなさい。やっぱり私の思った通りだったわね」
「え?」
そっと私に近づき、頬に手をあてられる。
「私と同じ目…。綺麗だわ…」
「お…かあ…さん…?」
すると、お母さんは何かを取り出し私に手渡してくる。
「これを使いなさい。きっと葵の役に立つはずよ」
渡されたのは小さな飴玉が入った小瓶。
ピンクの色をしている。ストロベリー味かな?
「これは?」
「媚薬よ、それもかなり強力な」
「おまえ、それっ!?」
「優也さんに飲ますときは、口移しにしなさい。その方が葵にも少し効果が出て積極的になれるわ」
び…やく?日本にこんなものがあるの?
だけど、それ以上に私はお母さんがこれを渡した意味が許せなかったっ。
「お母さんは私が振られると思っているのね…」
「確実に…ね。だから既成事実を作りなさい」
!!!
私はその小瓶を壁へと投げつける。
瓶の蓋がとれ、じゃらじゃらと飴が床にばらまかれる。
「わ、私はお母さんとは違うっ!」
「違わないわ。あなたは私の娘よ?どうしても欲しい物はどんな手を使ってでも奪うものよ」
「間違ってるわっ!」
お、おぃ…。とオドオドとどうしたらいいか分からないお父さんはあたふたしている。
「約束通り協力はしてあげるわ、明日私達はここには帰らないから」
「え、まじで!?」
「あなた、前に泊まったホテルに電話を」
「えぇ!?」
「返事は!?」
「は、はい!」
お父さんは自分の携帯をとりに寝室へと入っていった。
お母さんと一度もこんな喧嘩はしたことなかった私であった為、この無言の時間がつらい…。
「葵」
「な、なに…?」
「優也さんだっていつまでも一人ではないわ、誰かに奪われる前に手に入れないと…後悔するわよ?」
「わ、わたしはっ……」
それから後の事はあまり覚えていない。
いつのまにか朝になっておりお母さんたちはもう既に家にはいなかった。
―――
学校より帰宅し、準備に取り掛かる。
気持ちを切り替え、まずはケーキを作成する事から始めた。
自分の為にケーキを作るのも変だが、それ以上に今日祝いに来てくれる優也さんに食べてもらえると思うと料理も楽しくなってくる。
ピンポーン―。
チャイムが鳴る。
今のこの時間にくるのは優也さんしかいない。
私は少し鏡で自分の髪型を直し、玄関へと向かう。
ガチャ。
「いらっしゃいませ、優也さん。今日は来てくれてありがとうございます!」
「おめでとう葵ちゃん、また歳をとったね」
「む、その言い方。女性にはあんまり言わないほうがいいんですからねっ!」
「おっと、悪い悪いっ」
二人で笑いあう。
(でも…、今日ほど待ちに待った日はないです)
私は本音をボソっと呟く。
今日で私は16歳。
"結婚"できる年齢になったんだ。
なぜこの日に"告白"をしようと思ったのか、それは結婚できる年齢になった私を"女性"として見て欲しかったから。
優也さんは、小さい頃からの私を知っているせいで娘や妹のようにしか見てくれていないふしがある。
でも、今の私なら…、結婚できる年齢になった私ならっ。
優也さんは両親が私の誕生日の日にいない事を不満に思っていた。
ごめんなさい、私のせいなんです…。
とは言えず心の中で謝っておく。
すると、なぜかこっちをじっと見つめる優也さん。
「どうしました?」
「な、なんでもないよ!はい、これ」
少し疑問に思ったが、渡されたものを見て私は感動した。
今までは誕生日にはいつも味気ないもの(大事にはしているけど)を貰っていたが今回は違った。
本人は気づいてはいないようだが、この包装はあの有名なアクセブランドのもの。
「ありがとうございます、すごく…嬉しいです」
私はそれを抱きしめ、感動を胸にしまう。
こんな日に、こんな物をくれるって事は期待していいんですよね?ね?
二人で一緒にケーキを食べ、色々な事を話す。
学校の話や友達の話。
あまりの楽しさに私は告白することを忘れかけていた―。
「さてと、もうすぐ21時だし俺は帰るよ」
「え!?何か用事があるんですか?いつもは23時までいてくれるのに…」
そんな…っ!!
待って、私はまだ言ってないっ!いかないでっ!
私は優也さんの服の裾を掴む。
すると、優也さんから一番聞きたくない言葉が紡がれる。
「ごめんね。今日はこの後両親がお世話になってる人の"娘さん"と食事なんだ」
え…、今…なんて言ったの?
私は今はどんな表情をしているのだろう、幸せの気分から地獄に落とされたような…。
「む…すめ…?女の、ひと...」
「う、うん…。俺もそろそろ結婚したいしね、今日は頑張ってくるよ!」
け、っこ…ん…?
優也さんは何を言っているの?
その相手は私じゃないの?
困惑しているうちに優也さんはドアを開け玄関へとつながる廊下へ出て行く。
やだ、やだやだっ。
いかないで、いかないでっ。
私の力ではどうする事もできないの?
どうすれば、どうすればっ!
ふとリビングの机の上に昨日捨てたはずの"小瓶"があった。
迷う事なく私はその中の飴を口に含む。
そのまま廊下を歩く優也さんの背中に抱きつく。
「葵ちゃん?」
体が熱い…。
「優也さん、言いましたよね。もし私に好きな人ができたら、"なんでも"協力してくれるって?」
先日、料理をしている最中に約束した事だ。
「あぁ、そんな事もあったね…」
私は勇気を振り絞る―。
「優也さんこっち向いてください」
「え?う、うん…んんっ!!?」
優也さんが振り向いたと同時に私はその唇を奪った。
「あむっ、むちゅっ、んっ」
好き、好き、好き…っ!
バタンっ。
「いっつ…、むぅっ!?」
足りない、足りないよっ…。
飴を飲み込ます事に成功し、口内をさらに犯す。
私は優也さんを押し倒し馬乗りになった形で更に濃厚なキスを繰り返す。
「はぁ、はぁ、はぁ、優也さん優也さん、んっ、あむっ」
「むむぅ、ぷは!?…お、落ち着け!」
「あ…」
やはり男性の力には適わない。
抵抗され、私は自分が拒まれている事に対して自然と涙が頬をつたう。
「どうして拒むんですか?なんでも協力してくれるっていったじゃないですか!」
「そうだけど!これは本当に好きな奴にしかしちゃいけない事なんだ!」
「ここまでしてどうして分かってくれないんですか…、私はあなたが…優也さんが好きなんです!!」
言った…。
言っちゃった。
だけど、優也さんの顔はすぐれない…。
え…?
ちがうっ!私が見たいのはそんな優也さんじゃないっ!
「小さい頃から私は優也さんだけを見ていた!そして今日やっと結婚できる年齢になったんです…」
「け、けっこん?」
結婚に対して動揺しているように見えるけど、これは違う。
これはもしかして―、
「あはは、飲んじゃったんですね…、体がこんなにも熱くなってます…」
「もしかしてさっきの飴っ!?」
まだ私の事を女性として見てくれていないのかな?
それならばと、私は自分の衣服を乱し誘惑をしてみる。
「どうですか?いっぱいいっぱい見ていいですからね?私の全部…」
「駄目だ、葵ちゃん…こんな事しちゃ…」
駄目じゃないです。
もっと…、もっと私を見てください。
「まだ堕ちないんですか?早く私の所まで堕ちて来てください」
優也さんの体がものすごく敏感になっている。
大事な所も私を意識してくれている事に感動を覚えてしまう。
しかし―、
「みはる…」
!?
誰、誰なの…。
なんて言ったの?その名前はだれ?
嘘よ、嘘よ嘘よ嘘嘘嘘っ!
「今、誰の名前を、呼んだのです、か…?」
「え?」
私は優也さんが"みはる"という人と一緒に笑い会う場面を想像してしまう。
そんな人知らない人なのに、鮮明に映しだされる映像。
…っ!
「だめっ! そんなの絶対だめっ!」
嫌だ、なんでこんな事が頭に浮かぶのっ!?
消えてっ!
私の優也さんを返してっ!
「優也さんは誰にも渡さない…、他の人のところになんていっちゃヤダ…っ!」
「あ、おいちゃん…き、みはいつ、から…?」
優也さんはとても自分の衝動を頑張って抑えて苦しそうだ―。
でも、もう優也さんの言葉は聞こえない。
聞かない。
聞きたくないっ!
「もう優也さんの気持ちなんて知らないっ!わたしの…わたしだけのものにすればいいんだ…」
昨日、お母さんが言っていた言葉が蘇る。
「そうだ…そうだよね…、お母さんの言った通りだった…、誰かに奪われる前に―
奪っちゃえばいいんだ。
そうですよね…? 優也さん
――――――
今日は、学校時代の友達が集まる同期会。
つまり飲み会。
千晶とはちょくちょく会うけど、久しぶりに会う久詰君と新田君が来る事が楽しみ。
「ママ~」
最愛の娘が私の名前を呼ぶ。
「いい子にしてるのよ~?」
「むふー」
娘は任せてっ。とばかりに張り切っている。
私は見送りに玄関へと来ている最愛の人へと振り向く。
「じゃ、行ってきますね。旦那様」
「いってらっしゃい、葵」
そこには私が求めていた最高の笑顔があった―。
連載も書いてみたいですね
《追記》日間、週間、月間ランキング入り。ありがとうございます!まさかここまで伸びるとは予想していませんでした。今後も自分のペースで書いていきますので宜しくお願いしますm(_ _)m