表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「卅と一夜の短篇」

ボルサリーノ2、または二代目鬼台貫(卅と一夜の短篇第16回)

作者: 錫 蒔隆

『北の国から』をきちんと観てはいないのだが、田中邦衛のモノマネの定番と言えば「ほたるぅ」である。私の年代であれば誰しも、一度はそのデフォルメを行使しているだろう。『北の国から』をきちんと観ていない人間としては、五郎と純と蛍について語る言葉を持たない。私が語りたいのは、『トラック野郎』における田中邦衛の魔的構造についてである。

『トラック野郎』シリーズ全十作のなかに二回、田中邦衛は登場する。第二作と第八作、同一人物としての出演ではない。それぞれまったくの別人として出演している。

『トラック野郎』シリーズについて語る必要があるだろう。「一番星」こと星桃次郎と、「やもめのジョナサン」こと松下金造。ふたりのトラック運転手が全国各地をめぐるロードムービーである。桃次郎のひとめぼれ、ジョナサンの日常としくじり。桃次郎とライバルの丁々発止、クライマックスの配送シーン……おおまかな筋は、以上のとおりである。

田中邦衛は二度とも桃次郎のライバル、敵として現われる。初出は白いスーツを着たダンプ乗り、ボルサリーノ2として。二度めは警察官、花巻の鬼台貫として。どちらとも、ジョナサンとの因縁が深い。ジョナサンはかつて警察官で、「花巻の鬼台貫」とおそれられていた。ボルサリーノ2はかつて、ジョナサンに捕まった恨みがある。二代目鬼台貫は、ジョナサンの後輩であった。警察を辞めたジョナサンへの愛憎が入りまじる。

ボルサリーノ2は、ジョナサンへの復讐のために現われる。最後にはジョナサンをひとりのトラック野郎として認め、和解する。『ワンピース』に出てくる海軍大将の ボルサリーノはたぶん、ここに由来するのだろう。

二代目鬼台貫は、桃次郎とジョナサンをしょっぴこうとする。使命感篤い警察官、頑なな正義漢である。難病に冒された妻がある。ラスト、桃次郎が運ぶのは医療機器である。妻が入院する診療所へ向かう桃次郎を、鬼台貫はパトカーで追う。法の番人として、法を冒す者を看過できない。妻の施術の妨害になるとわかりながら、桃次郎を追う。そうして医療機器を届けた桃次郎に鬼台貫は、「ありがとう」と涙ながらに言うのだ。

ボルサリーノ2と二代目鬼台貫、不可思議な構造である。ボルサリーノと鬼台貫が瓜ふたつ(同一人が演じているのだから、とうぜんである)なことに、誰もいっさいふれない。情が薄いのか、あるいは物忘れがひどいのか。はたまた、多元宇宙を表わした演出であるのか。脈絡のないそれに、感心することはない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「トラック野郎」も「ワンピース」もほとんど分からないカラスウリです。 ただ「北の国から」は語れます。あれを観なかった道民がいたであろうか? いや、(多分)いない。 しかしアレのせいで若かりし…
[良い点] 『トラック野郎』シリーズは未見です。あれは菅原文太でしたか?  そうでしたか、黄猿はそこからのネーミング。  頑なな正義感の警察官が、違反行為を追いかけながら、頭を下げるのって、ベタですが…
[良い点] 昔の映画には疎く、作品については分からなかったのですが、 >ボルサリーノ2は、ジョナサンへの復讐のために現われる。最後にはジョナサンをひとりのトラック野郎として認め、和解する。 よく分…
2017/08/05 13:08 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ