7 手放した者とその手を取る者
「夢だったら、と」
死は救いだ。
全て終わるという意味において。
これ以上続くことがないという意味において。
それは逃げだ
と、
生きなければならない
と、
撓んだ荷造りの紐みたいな、
戯言を吐く奴は、
今すぐ同じ苦痛を受けてほしい。
先の見えない暗闇が、
全身を覆い尽くすあの時間、
光なんて射し込まない、
閉じた部屋の中で、
自分がこれまでに、
何の罪を犯してしまったんだろう
と、
ずっと繰り返した。
ソレだけを支えに、
どうにか過ぎ去ってくれるのを
待っていた。
幼い頃に聞いた神様は、
多分いないんだろう。
良い事をしていれば、良いことが。
悪い事をしていれば、悪いことが。
そんなの、嘘だった。
音の消えた静かな世界で、
死神様が早く来てくれるのを、
私は祈っていた。
「導く者のつぶやき」
死は救いだ。
現世には、
ヒトが耐えきれない苦痛が多い。
それらに直面した際、
罅が少しでも入れば、
崩壊は始まる。
日常にも
届き得る苦痛が無いわけではないが、
それらは比較的、
ヒトが耐えられる苦痛である。
個人差はあれど。
目の前に横たわる仔羊は、
すでに崩壊していた。
事ここに至って、
私がやれることは一つ。
静かに眠れる場所へと、
導くことのみ。
さぁ行こう、ヒトの子よ。
こちらに君を害する者はいない。
優しい夢をみなさい。
その傷が癒えるまで。