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maverick-マーヴェリック-  作者: 流星の瞳
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第3話 Assailant-襲撃者-

 ジリリリリリリリリリリリリリリリリ────


 そう五月蝿く鳴く目覚まし時計を布団から伸ばした腕ですぐに止める。


「……朝……か」


 寝惚け眼をこすりながら、棗はそう独り言を漏らす。

 ゆっくりとベッドから出ると、カーテンを開け、伸びをしながら朝日を浴びる。一瞬で眠気が覚め頭が冴えていくことがわかる。

 頭が冴えていくと、昨日あった出来事が思い出させれる。あの斗真に拉致されて、その後棗が斗真の弟子になることになったやつだ。

 ぶっちゃけ、今でも現実味がない。まるで夢を見ていたような感覚だ。たぶん、あまりの非日常さに頭がついていかないのだろう。

 何気に充電器にさしてあったスマホを手に取ると電源入れる。ロックを解除し、少し弄る。するととあるSNSアプリで昨日、遊ぶ約束をしていた友達に棗が適当に言い訳をしながら謝っている会話履歴が残っていた。この履歴が昨日あった出来事が嘘ではない、夢でもないと証明してくれる。

 改めて現状を再確認すると扉を開け、部屋を出る。階段降りていくと、だんだんと朝食の美味しそうな匂いが漂ってくる。その匂いにつられてだんだんと階段を降りる足が早くなる。


『まぁ、今すぐに何か変わるわけでもないし、とりあえずは朝食を食べるか』


 棗はそう考えるとリビングへと入っていくのであった。



 ☆-☆-☆



 そんな朝から始まった日の放課後、棗は生徒会室の扉の前に立っていた。

 というのも、生徒会から呼ばれたからだ。クラスメート伝たいに放課後、生徒会室に来るようにと書かれた紙を渡された。一応、今も手に持ってる。

 斗真からしたらなぜ呼ばれたのか一切心当たりがない。生徒会なんて棗からしたら学校行事の度に働いているくらいの印象しかない。実際に見たのもこの前の体育祭での会長の挨拶で会長が全校生徒の前で喋っているのを聞いたくらいだ。

 ぶっちゃけ謎しかないし、初めての生徒会室なので少し緊張もする。

 しかし──


『こんなところで考えていても始まらないか……』


 棗はそう結論を出すと、ノックをして生徒会室に入る。


「すいません。失礼しま──」


 そう言いながら入ったのだが、最後まで言う事はできなかった。というのも棗が驚きで少し固まってしまったからだ。



 なぜならそこについ昨日も見た顔があったからだ。



「よぉ」


 そう昨日も見た顔──斗真──は言った。


「えっと……斗真……さん? なんで──」

「おいおい、斗真じゃなくて師匠と呼べよ。弟子なんだからさ。まぁ、学校内なら斗真先輩でも許すぞ。一年二組十三番の如月棗君」


 そう少し笑いながら冗談気味に斗真は言う。


「えっと……斗真先輩?」


 棗が困惑していると、斗真の後ろから誰かが近づてくる。その誰かは斗真の後ろまで立つと斗真にゲンコツを喰らわせた。割と容赦ないように見えた。


「痛ってぇな。やめろよ、会長!!」


 斗真が文句を言う。そのゲンコツを喰らわせた相手は棗も見たことがあった。現在の生徒会長である。


「やめろもくそもあるか。また何か始めやがって。あと生徒会室を私用で使うな」


 斗真の文句をにべもなく切り捨てる。


「別にいいじゃん。今、生徒会室にいるの俺と会長しかいないんだからさ」

「誰だか知らんがすまんな。うちのものが迷惑をかけたようで」

「無視ですか!?」


 その後の斗真のセリフはすべて無視して会長は棗の方へ謝ってくる。


「えっと……」

「あ、すまない。白鳥 諄しらとり まことだ。現在生徒会会長をしている。こいつがまたなんかやったりしたら呼んでくれていいぞ」

「あっはい。わかりました。大丈夫です。えっと……というか斗真先輩って生徒会だったんですね」


 それを聞くと斗真は少し悲しそうな顔をする


「そうかー、生徒会って知られてないのかー。まぁ、会長でもないと目立たないか……まぁ、そういうこと。生徒会役員だよ。会計だけど。だいたい生徒会じゃないとお前の名前を調べるのめんどかったからな」


 そう斗真は最後の一言はなぜかややドヤ顔ぎみに言った。


「つまり……」

「と〜う〜ま〜……」


 『ゲッ!!』って反応を斗真はしたが、時すでに遅く再び後ろに立っていたらしい会長に今度は斗真にヘッドロックをかける。


「痛い、痛いからやめろ、会長!!」

「何がやめろだ。また職権乱用でもしたか、お前は」

「いやいや、先生に適当に生徒会を言い訳に生徒名簿見せてもらっただけだから。ほんとそれだけだから」

「無断で生徒会の名前を使うな!!」

 

 その後、会長はもう一回軽く斗真にゲンコツをした後、満足したのか元の自分の席に戻ってまた仕事に取り掛かり始める。


「で? 斗真先輩。なんで俺を呼んだんですか?」

「ん? あぁ、それはお前に言うことがあったからだ」

「言うこと?」

「うん、今週の日曜日、模擬戦っぽいことすることになったから予定開けとけよ、そういうことでよろしく」

「……え?」


 一応弟子という立場なので当然かもしれないが、結構な無茶ぶりだった。まさかの一切の相談もなく、事後承諾で話が進められていたのだから。

 というか昨日弟子になったばかりなのにいつそんな話を決めたのだろう……と棗は疑問に思った。

 会長の方はというとまた少し動き出しそうだったが、個人の話にまで介入するつもりはないのか結局動かなかった。


「というわけでよろしく」


 そのまま斗真は話し続け結局斗真のペースにのせられる。一応、棗はその後いくつか質問はしたが、日曜日に特に予定は入ってなかったのでそのまま受け入れる事にした。というか棗に拒否権はなさそうだった。

 その話が終わるとさっさと帰れと言わんばかりに帰される。どうもそれだけの話のためにわざわざ呼ばれたらしい。

 斗真の方は一応生徒会役員なので、仕事があるらしくそのまま生徒会の机の一つに向かうと何か書き始めていた。

 棗は時計を見ると棗が思っていた以上に時間が経っていたので、そのまま帰ることにした。



 ☆-☆-☆



 そんな生徒会室でのやり取りがあったあと。棗は通学路を歩いて帰っていた。

 朝は雨がしとしとと降っていたが、今はどんよりと曇ってはいるものの雨は降ってなかった。棗はその事をありがたく思いながらも家に向かって歩を進める。

 にしても今日も色々あったな、と改めて思う。

 いつもより学校を出る時間が遅くなったためだろう。元々曇りで薄暗い空がさらに暗く闇夜に包まれていく。


「夕飯もできてるだろうし、急いだ方がいいかな」


 なんて独り言を漏らしつつ、近道のために通学路を外れて普段は通らない人気のない路地裏に入る。

 そして、少し急ぎ足ぎみに歩いていた時だった──


「?」


 前に人が一人現れた。

 いや、それは別に問題ない。基本的に人気がない道とはいえ、別に誰も通らないわけではないのだから。

 しかし、後ろにも同じように一人の人が立っていて、どちらも通さないといった感じで立っているのが問題だった。


『そういえば、昨日も似たようなことあったな』


 そう思い棗は少し後悔する。またこんな事に巻き込まれるならちゃんと近道なんかではなく通学路を歩くべきだったと。


「あなた達はなんですか? そこの道を通りたいのでできればどいて頂けると助かるんですが……」


 とりあえず話しかけないと始まらないか……そう思い、棗から謎の二人に話しかける。

 その問に対する答えは行動で示された。


 棗の前にいる人の方は手を伸ばすと、みるみるうちに何も無いはずの手の先の空間に剣が創り出される。ロングソードとでも言うのだろうか全長一メートルほどのありそうな両刃の剣である。

 そして前の人物はそのままその創り出した剣を持つとゆっくりと構えた。剣道などでよく見る中段の構えである。構えはびしっと決まっており、素人の棗の目からしても綺麗な構えってこういうのを言うんだろうな、と思わせるものだった。

 棗がそんな前の人物を見て急いで後ろを向くと、もう一人の方は、伸ばした片手から火を出していた。手から出た火はみるみるうちに丸く整っていくと火球と化す。サイズはバレーボールくらいだろうか……

 この状況を見て、流石にこれはヤバイと棗が焦り始めた頃、後ろにいた方はその火球を棗に向けて撃ち出した。


「!!」


 その驚きからかそれとも恐怖からか棗の思考は一瞬止まる。だがいわゆる反射神経と言うのだろうか……考えるよりも先に体は動いていた。そうしてすぐに体を逸らす。その瞬間にその真横を火球が通り抜ける。火傷するかと思うくらい熱を感じた。まぁ、火の玉なので当たり前かもしれないが……

 少し焦げ臭いような臭いもする。もしかしたら、少し制服が焦げたのかもしれない。


「何するん──」


 棗は悪態が口から出かけたが、それは最後まで言い切ることはなかった。剣を持つ方がスキを逃さまいと斬りかかってきたからだ。

 相手が剣をこちらに振り下ろしてくるのがわかる。棗にはそれが非常にスローモーションに見えた。


『あっ、やばっ……死っ──』


 咄嗟に切られそうな顔を両手で守ろうとする。もちろんその程度では止まるはずがない。

 が、しかし、腕に重い衝撃を感じた後、棗は軽く吹っ飛ばされただけで済んだ。顔どころか腕も無事である。


「えっ……?」


 思わず棗は自分の腕を見る。すると腕には篭手と言うのだろうか……指から前腕の中ほどまでを覆う鎧が自分の腕を包んでいた。どうやら、これのおかけで腕が切り落とされるような事態にならずに済んだらしい。

 そんな棗の腕を見た相手は少し驚いたようだが、すぐに剣を構え直すと再び剣を振り下ろす。

 今度は吹っ飛ばされて体制が崩れていた事もあって棗のガードが間に合いそうもない。今度こそ終わったな、そう棗は思った。しかし、突如どこからともなく放たれた雷が、今にも棗を切り捨てんとばかりに振り下ろれている剣を弾いた。


「!?」


 これは棗の仕業ではないと気づいた相手はキョロキョロと周りを見渡す。すると──


「弱いものいじめはいけないって親に習わなかったのか?」


 そう剣を持っていた相手の後ろから聞こえてきた。

 そう語りかけてきた相手は斗真や棗と同じくらいの青年だった。その片手は雷を纏っている。


「……」


 そんな新たに現れた謎の人物相手に、棗を襲ってきた二人は無言で返答をした。


「……まぁいい。なら俺が参戦してやるよ。それで二対二。公平だろ?」


 青年はそんな二人を無視して話し続ける。棗は状況を見守ることしか出来ない。

 そんな青年の様子を見て、棗を襲ってきた二人は目配せ合う。どうもこの青年が現れることがかなりのイレギュラーだったらしい。


「……逃げるぞ」


 そう剣を持っていた方が初めて口を開く。火球を操っていた方はその言葉を聞くと頷いて走って逃げ出す。

 剣を持っていた方はその様子を少し見たあと、謎の青年の方を少し睨む。数秒ほど睨んだあとこちらもくるりときびすを返し、走って棗の隣を通り過ぎるとそのまま逃げていった。


「大丈夫だったか?」

「えっ……あぁ、大丈夫です」


 謎の二人の襲撃者が逃げていったのを確認した後、青年が棗の方へ無事を確認してくる。


「そうか、それは良かった「

「あっ、はい。さっきは助けていただいてありがとうございました」

「いやいや、別にたいした事はしてないさ」


 棗が感謝の言葉を述べていると、昨日、今日とよく聞いた声が聞こえてきた。


「よぉ、レン」

「遅かったな。トーマ」


 斗真はそう、青年──蓮に声を掛けながらゆっくり歩いて近づいてくる。


「えっ? 二人って知り合いなんですか?」


 棗は、その事実に少し驚いて素直に口から思ったことが出ていた。そんな疑問に斗真が答える。


「ん? あぁ、そうだぞ。棗、こいつが学校で言ってた日曜日の対戦相手の上地 蓮だ。んで、レン、こいつがこの前言ってた弟子だ。……まぁ、その様子だと知ってたみたいだけどな」


 どうも、斗真の言う通りらしく、蓮の方は特に驚いた様子もない。


「まぁな。棗……だったっけ? あんまり人気のない道を通るのは危ないぞ。あっちの表通りなら襲われないと思うからそっちから早く帰った方がいい」

「あっ、はい。ありがとうございます」


 棗は感謝の言葉だけ言うと走って来た道を戻っていった。たぶん近道なんぞせずにちゃんと人気のある正規のルートで帰るのだろう。

 後には斗真と蓮が残される。

 棗が自分の視界から消えるのを確認した後、蓮は口を開いた。


「なぁ、トーマ。お前はさっきの能力者の顔を見たか?」

「いや、見てない。俺が来た時はもうお前が追い払った後だったからな」

「ふーん……まぁいい。お前はさっきの能力者についてどう思う?」


 先程の能力者について意見を求めてくる蓮。斗真は素直に答えることにした。


「どう思うって、見てないから確かなことは言えんがいつも通り新たに誕生した能力者だろ。この町の能力者なら俺とレンが知らないはずないから隣町かそこら辺のどっかの奴がまた能力を発現させたとか」


 その返答を聞くと蓮は頷く。


「あぁ、そうだろうな。俺もそう思う。襲いかかる手際とかが慣れてない感じもしたしな」

「それについては俺は見てないから分からんが……まぁ、レンがそういうならそうだろうな」

「まぁ、俺もトーマもたぶんあの程度なら負けないだろうし、大丈夫か」

「あぁ。……あっ、さっきはありがとな。棗助けてくれて」

「別にそれくらいなんてことないさ。まぁ、これで貸し一つな」


 そう蓮は笑いながら言った。斗真はその言葉に少し苦笑いしながら返す。


「貸しって……まぁ、そういうことにしてやるよ」


 そう言うと斗真は踵を返し歩き始める。


「一応、棗追いかけるわ。たぶん大丈夫だと思うけど、そいつらが往生際悪くまた襲いかかってきてもあれだしな」

「あぁ、そうしろ」


 『じゃあな』そう言わんばかりに片手を軽く後ろも見ずに蓮に向かって振ると斗真はそのまま棗が行った道へと消えていった。


「ふぅーん……あれが斗真の弟子ねぇ……」


 もう街中の街頭が付き始めるころ、そんな蓮の独り言だけが蓮以外にいなくなった路地裏に響いた。


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