第54階層 休みだからって気が抜けなかった
涼「雷魔法を使って、充電みたいなこともできるかな?」
六日に一度の定休日がやってきた。
この日は農業組がダンジョンの居住部にやって来て、月に一度の現状報告を受ける。
どうにか再生させた畑での異世界野菜の栽培は概ね問題なく、販売開始もそう遠くないとのことだった。
「分かった。でも、決して無理はするなよ。無茶な計画で成功しても、そのツケがどっかで返ってくるからな」
「承知しています」
農業組の代表を務めるエルミから、しっかりとした返事を受ける。
普段からこうしてくれていれば、もうちょっと頼りがいがあるんだけどな。
「あぁ、でも私が大丈夫なだけで、他の人はどう思っているのか……。あの、大丈夫ですよね? 駄目なら駄目と、無理なら無理と言ってくださいね」
ほら、こいつの欠点のネガティブ思考が顔を出した。
能力は悪くないのに、こういう部分があるからエルミは頼り甲斐に欠けるんだよ。
「大丈夫ですって。私は美味しい食事とお酒さえ飲めれば、それで満足ですから」
「ウチは基本、木ごと移動しとるから、少なくとも過労はあらへんよぉ」
聞き取り方次第ではダメ人間のようにも思えるけど、これがヴィクトマとネーナにとって通常だから問題無い。
そういえばネーナって、あまり木から出ないよな。
出るのって、木が通れない出入り口を潜る時ぐらいだし。
あれは驚いたぞ。木から下りて、その木を何事も無いように肩に担いで運び込むんだから。
母親のナヅルさんも同じような事をするんだろうか?
ドライアド 見た目の割りに 怪力だ
うん、一句できたけど季語が無いから0点だ。
「ヒイラギ様? 何か余計な事を考えていませんか?」
「いや、別に」
平然と返したつもりだけど、バレてないよな?
最近のエリアスは、こういうところが少し鋭くなってきたような気がする。
さすがはいずれ俺の嫁。
「お前達はどうだ? 何か問題はあるか?」
「いえ、ありません」
農業組の奴隷三人に尋ねると、代表して年長者のバリウラスが答えた。
後ろにいる二人も本当に問題無さそうな表情をしているし、その言葉を信じよう。
「なら、現状の計画通りに進めてくれ。予定が前倒しになるか遅れそうなら、その時は伝えてくれ」
「承知しました」
さてと、仕事の話はここまで!
ここから先は休日仕様でいこうか。
「じゃあ話は終わったし、エリアス、イーリア、ネーナ。出かけようか」
今日の予定は嫁予定の三人を連れての外出だ。
普段の休日は誰か一人としか過ごしていないから、たまにはこういうのも良いだろう。
「はい。本日はどこに行きますか?」
「午前中は買い物して、昼を食べたら広場に行かないか? 午後から古本市があるらしい」
デートの行き先としては色気が無いけど、こっちの世界には映画館もゲーセンもボウリングもカラオケも無いから、どうしても選択肢が限られてしまう。
だけどこっちでは古本市も数少ない娯楽の一つだから、それなりに楽しめるだろう。
そもそも、本自体が数少ない娯楽品なんだから。
そういう事情もあって三人とも賛成してくれて、早速出かけることにした。
「昼は外で済ますから、用意しなくていいぞ」
「分かりました」
今日の昼当番のミリーナにそう伝えて外出する。
さあ、嫁予定の三人と思いっきり楽しもう。
そう勇んで出発したものの、女性の買い物に付き合うのは大変だ。
あっちに寄ってこっちに寄って、アレが安い、これはお得、やっぱり向こうの方がというのは当たり前。
資金はそれなりに用意してあるのに、気を遣ってかお買い得品ばかり狙って動き回る。
だけどいつまで続くんだとうんざりしても、決してその事は口には出さない。
デートでそういうのを言うのは野暮だし、相手に失礼ってもんだ。
「ヒイラギ様、これはどうでしょうか」
「私はこれがいいかと」
「うちはこれがいいと思うったい」
三者三様に薦めてくるのは全て俺のために選んだ服。
今回はロシェリ達の物じゃなくて、俺の普段着や身に着ける物を中心に見て回っている。
彼女達が真剣に考えて選んでくれたんだから、なおさらちゃんと対応しないとな。
「個人的にはエリアスのがいいな。イーリアのはちょっと色が明るすぎるし、ネーナのは柄が派手だと思う」
意見を述べるとエリアスは喜んで、イーリアとネーナはちょっと不服そうにした。
「だってマスターは、地味な柄の黒や紺ばかり好むじゃないですか」
「そうやよ。せやから、たまにはこういうのを着てみてもよかと思うったい」
そう言われても、それが俺の趣味だからな。
あまり派手な服って、昔っから苦手なんだよ。
「ではヒイラギ様、試着なさっては如何ですか?」
まあ、試着くらいならいいか。最終的に買わなければいい話だし。
だけどまさか、この試着が一時間以上も続くとは思わなかった。
試着地獄が終わり、どうにか買う物を決めて購入した時は、ようやく解放されたと心の底から安堵した。
しかし、それも束の間の話だった。
「じゃあ次は装飾品ですね」
「ヒイラギ様には指輪とネックレス、どちらがいいでしょうか?」
「イヤリングはどうやろ?」
ああ、まだまだ続きそうだ。
唯一の救いは、買った物を収納袋に入れて楽に持ち運べることか。
もしも手荷物として運んでいたら、確実に両手が塞がっていただろう。
(でもまあ、悪い気はしないか)
この状況が気に入らない奴は、そうそういないと思う。
さほどハーレム願望が強くない俺ですら、嬉しいと思えているんだから。
「どうかされましたか?」
「いや、別に」
言ってもいいけど、あえて言わない。
だって言われたエリアス達より、言った俺の方が絶対に照れるから。
「さっ、行くぞ。次は装飾店だろ。行きたい店はあるのか?」
「はい! リンクスさんに教えてもらったお店です!」
リンクスに教わったって聞いた途端、これから行く店の店員に若干の不安を抱いだ。
大丈夫だろうかと思いつつ、不安を感じていないエリアス達に腕を引っ張られて店へ向かう。
そして不安は的中した。
「うん、やっぱりか」
店に入るとムキムキの筋肉質の大柄で、顔の彫りの深さを厚化粧で隠し、やたら可愛らしい服装に身を包んだ熊の耳がある中年男性に出迎えられた。
予想はしていたさ、リンクスと同じ趣味の人なんじゃないかってさ。
「いらっしゃいませぇ。あら、あなた噂の異世界人ダンジョンマスターちゃんね。アタシのお友達のリンクスちゃんから、お世話になってるって聞いたわよ」
やたらとしなを作って喋る怪物に、エリアスの目が色を失ったかのように虚ろになっている。
イーリアは入店時の笑顔のまま固まっているし、ネーナは信じられない物を見ているかのような目を向けている。
俺だって予想して心構えをしていたからギリギリ耐えられたけど、そうでなければ思わず口にしていただろう。
これは酷い、と。
「アタシはこの店の店長、熊人族のダグラスっていうの。でもできることなら、魂の名前のエリーゼって呼んでね」
無理!
「ご丁寧にどうも。柊涼です。こっちは」
「知ってるわよ。三人とも婚約者ちゃんなんでしょ? リンクスちゃんから聞いてるわよ」
リンクス、お前はどこまで俺達のことを喋っているんだ?
「ところでどうしたのかしら? 婚約者ちゃん達、さっきから反応が無いけど」
あんたの見た目のおぞましさに意識が飛んでるんだよ!
耐えた俺を褒めろ! 褒め称えろ!
心の中でそう叫びながら、肘で小突いて三人の意識を取り戻させた。
「はっ! あっ、今、何か凄い光景を見たような……」
「あらぁ、嬉しいわね。気を失うくらい、アタシが美しいだなんて」
そんなの一言も言ってねえよ!
「幻じゃ……なかったんですね……」
「現実ったい。でも、間違いなく今夜の夢に出てくるとよ」
「まあまあまあ! そんなに褒めてくれるなんて。嬉しいから、サービスしちゃうわよ」
サービスはともかく、一言も褒めてねえよ!
確かに受け取り方次第では褒めているように聞こえるけど、エリアス達の表情を見ろよ。
半分死んだみたいな表情だぞ、これのどこが褒めている表情なんだよ!
まだリンクスや、前に紹介してもらった心の名前がシェリーなレオンさんの方が褒められるわ!
「それで、本日はどのような品をご所望なのかしら?」
おっと、そうだった。俺達は買い物に来ていたんだ。
「ええっとですね、普段から身に着ける物を……」
こっちの要望を伝えるとダグラスさんはいくつか品を選び、その中からさらに要望を聞いて絞り込んでいく。
その選択は外見の割りに的確で、しかも試しに見せてくれた品は、俺から見てもセンスがある品だと思う。
接客態度も決して不快じゃないし、改めて店内を見渡すとキチンと清掃されていて内装もいい感じだ。
この店が損をしているのは、店長の見た目だけだな。
それとネーナが本気で気持ち悪がってるから、歩く時に必要以上に尻を振らないでほしい。
「お値段はこれでどう? リンクスちゃんがお世話になっているのと、さっき褒めてもらったお礼も兼ねて、お安くしておいたわよ」
褒めてないけど、サービスしてくれるのなら黙っていよう。
「いいんですか?」
「大丈夫よ。ちゃんと利益は出るお値段だから」
それならいいんだけど、ウインクはやめてくれ。
エリアスとイーリアは苦笑いだし、ネーナはちょっと刺激すれば吐きそうな顔してるし。
とりあえず代金を支払って、そそくさと店を後にした。
「また来てねぇん」
できれば二度と行きたくない。
見送ってくれて悪いけど、そう思わずにはいられなかった。
「あんの……」
「どっかで休むか」
青い顔で何かを言いたそうなネーナの気持ちを汲んで、適当な店で休憩を取る事にした。
入った店でお茶を頼んだ後、ネーナは大きな溜め息を吐いた。
「はぁ……。凄い怪物を見たとばい」
「夢に出そうです……」
「言わないでください! 本当に夢に出たらどうするんですか!」
おぞましいことこの上ないな。
「とにかく、アレの事は忘れよう。よほどの事がない限り、もう会うことはないだろうから」
「「「はい!」」」
もしも何か用ができた時は、リンクスに頼んで行ってもらおう。
元々あいつが教えてくれた店だ、アレに対する耐性もあるだろうし。
とにかく、もう彼? 彼女? の事は忘れるに限る。
そう決めたらお茶ついでに昼飯もこの店で食べ、その足で古本市をやっている広場へ向かう。
「思ったよりも賑わってるな」
時間的にまだ開催して間もないのに、結構な人数が来ている。
数少ない娯楽である本だから、誰かに買われる前に好みの本を見つけたいんだろうか。
売る側も売る側で、のんびりしている人もいれば、熱心に売り込みをする人、金一冊でも多く売ろうと血眼になって客引きをしている人もいる。
ただ、客引きはルール違反だったらしく、その人は警備兵に連れて行かれた。
「なんかアホな人がいたけど、気にせず読みたい本を探そう」
「そうですね」
「そうしましょう」
「同感だぎゃ」
皆で移動して適当な露店に立ち寄っては好みの本を探して行く。
周囲からの視線は気づいているけど、俺が女連れだからか声を掛けてこない。
まあ、連れているうちの一人がエリアマスターの娘で、しかも正妻候補なんだから当然か。
「これ、面白そうですね」
「私はこれがいいと思います」
「ウチはこの本欲しいなぁ」
いくつかの露店に立ち寄るうちに、エリアス達は好みの本を見つけたようだけど、俺はまだ見つけられない。
俺が探しているのはダンジョン運営に関係する本なんだけど、見つけたのはどれも内容が酷くて、とても参考にできるものじゃない。
仕方ないから諦めて普通の本を探していたら、興味を引かれる題名の本を見つけた。
「魔物観察記録?」
「それは昔、とあるダンジョンマスターが記録していたものじゃ。ダンジョン攻略されたのを機に出回り、巡り巡ってわしの所に来たんじゃよ」
説明してくれたのは、ドゥグさんと同じ先祖返りの猫人族の婆さん。
なんだか気になるから手に取って捲ってみると、興味深い内容が書かれていた。
(なんだこれ、魔物に関することが凄く詳細に書かれてる)
訓練内容は他の書籍同様に論外だったけど、どの魔物がどういう食事をしたとか、どれだけの量を食べたとかが詳細に記されている。
特に多いのは、食事が進化に影響を与えるスライムについて。
このスライムはこういう物を食べていたとかが、感心するくらい細かく記録してある。
残念ながらイータースライムには進化しなかったのか、イータースライムに関する記述は無いけど、進化させようとして研究した痕跡はある。
(これはこれで使えるか?)
他所のダンジョンマスターからすれば価値が無いんだろうけど、俺からすれば充分に価値がある。
特に今はイータースライムへの進化の研究のため、スライムの進化に関する実験をやっている最中だから、この観察記録は役に立つ。
これがあれば不要な実験を見極められるし、うちにはいないスライムへの進化にも使える。
「いくらだ?」
「そんなものが欲しいのかい? そいつなら、石貨二枚でいいよ」
周りがどう評価しようと、買い手にとって価値があればそれでいいだろう。
そう思いながら代金を払って次の露店へ向かう。
この本の他にも、昔来た異世界人が書いたという英語で書いた日記のようなものと、アンデッド系魔物についての考察という本を興味本位で購入。
後は普通の本を何冊か買って、古本市を後にした。
エリアス達もだいぶ収穫があったようで、ホクホク顔で本について話している。
「さてと、次はどこに」
「やぁっと見つけたぁ。もう、何で外出してるのよぉ」
次の行き先について話そうとした途端、後ろの方から緩い口調の声が聞こえた。
誰に話しかけているのかと思いながらエリアスを見ると、後ろを振り向いて顔色が青くなっていた。
咄嗟にエリアスを背中に隠れるようにして庇いつつ、声の主を見る。
そこにいたのは、ネーナと同じドライアドの少女だった。
「どうして……?」
エリアスの様子からして、このドライアドは無視できない存在なんだろう。
すっかり周囲の視線や陰口を平気で流すようになったのに、あのドライアドに対しては今までに無い反応を見せている。
確かにあのドライアドが漂わせている雰囲気は、ただ者じゃない。
まるで真剣モードのオバさんみたいに感じる。
「まさか、あなたは……」
「な、なして、こげなところに……」
おいおい、イーリアとネーナまで知っているのかよ。
一体何者なんだ。
「ヒイラギ様、あの方はヴァルア様といって、第四エリアのエリアマスターです」
他所のエリアマスター!?
なんでそんな奴がここにいるんだよ!
そうか、エリアスの反応は過去の因縁とかじゃなくて、それが分かっていたからか。
他所のエリアマスターが目の前に現れたら、驚くのも当然だ。
「はっじめましてぇ、異世界人のダンジョンマスターさぁん。私がドライアド初のエリアマスター、ヴァルアちゃんでぇす!」
ドライアド初、ね。
おそらくネーナが反応したのは、そういう意味でドライアド達の間では有名人だからだろうな。
「エリアマスター様でしたか。これは失礼を」
「やだなぁ、そんな堅苦しいの止めてよぉ。今日はぁ、完全にプライベートなんだからさぁ」
だからって、初対面で気楽に喋るわけにはいかないだろう。
せめて最初くらいは敬語でないと。
「ではお言葉に甘えて。今日はロウコン様との会談が何かで?」
「うぅん、まだちょっと硬いなぁ。まぁいいかぁ。違うよぉ、あんなオバさんに用は無いのっ。用があるのはぁ、君だからねぇ」
警戒心を一気に最大まで引き上げる。
プライベートでわざわざ会い来たということは、明らかに何かを狙っている。
だけどそれが何か予想できず、心の中で身構えている。
「ふんふん。やっぱ直に見ると違うねぇ。何さ、その固有スキルとかぁ、従魔覚醒とかいう変わったスキルはぁ」
解析された!? でもどうやって?
倒した冒険者から入手した、解析を阻害する腕輪型の魔道具を、念のために装備しているのに。
「んふふぅ。私に解析対策は意味無いよぉ。私の固有スキルは、「無効無効」。有効範囲内にある、何かを無効化したり阻害したりする効果を無効化しちゃうんだぁ」
なんだよそれ! そんなのアリかよ!?
有効範囲があるみたいだけど、それを差し引いても強力だろ。
「私の前ではぁ、誰もがぜぇんぶさらけ出すんだよぉ? なにもかもねぇ。キャハハハハッ!」
この女は何かヤバイって、本能が叫んでいる。
とてもじゃないけど、俺がどうにかできる相手じゃない。
「うふふぅ。いいねぇ、凄くイイよ、君。そんな混種なんかには勿体無いよぉ」
俺の後ろに隠れているエリアスを蔑むような目で見ながらの言葉に、苛立ちを覚えつつもそれを堪える。
周りは遠巻きに見るだけで助けてくれそうにない。
面倒を嫌っているというのは、表情を見れば分かる。
「どう? ダンジョンマスターもその混種との婚約も投げ出してさぁ、私のエリアにぃ、というよりも私のお婿に来ない?」
「誰が行くか!」
思わず叫んで反対した。
こいつ、なんてこと言ってやがる。
余程俺が欲しいんだろうけど、そのためにエリアスも、皆との居場所も捨てろだなんて普通言うか!?
「えぇぇぇぇぇぇ。来てくれないのぉ? 私の他にも良い女の子をたくさん用意してあげるしぃ、お小遣いもいっぱいあげてぇ、働くことなく毎日をダラダラ過ごすこともできるのにぃ?」
こいつは俺を駄目人間にしたいのかっ!?
「断る」
「今ならぁ、私のダンジョンの運営にも口出しさせてあげるよぉ?」
「必要無い!」
段々と口調まで乱暴になっていく。
だけど無茶苦茶言っているのは向こうなんだから、構うもんか。
「ふぅん。あくまで逆らうんだぁ? この私にぃ……」
ヤバイ、雰囲気が豹変した。
あいつの顔は笑っているのに、金縛りにあったように体が動かない。
ここまではなんとか頑張れたけど、これ以上はなんか無理っぽい。
エリアス達も同じような感じで、とても助けを呼びに行ける状態じゃない。
くそっ! こんなことなら、もっと早くエリアスをオバさんの下へ走らせればよかった。
「だったらいっそ、無理矢理にでも」
「そこまでです。あなた、何をしているのですか?」
その声で場の空気が変わった。
目の前にいるヴァルアなんかより、ずっと重圧のある空気が一瞬でこの場を支配する。
なんだこれ、体が震えそうだ。
「あっ……あっ……」
さっきまで一方的に主導権を握っていたヴァルアが、怯えた表情をしている。
一体誰なんだ?
「あなた、自分が何をやっているのか分かっているのですか? 一部始終見ていましたが、あなたの行為は立派な違反行為ですよ?」
ゆっくりと現れた声の主は、これまでに出会った誰よりも圧倒的な迫力を放っていた。
その人を見ているヴァルアの顔色は青くなり、膝どころか全身が震えている。
一体誰なんだ、この熊人族の女性は。