第45階層 収束したからって終わりじゃない
ロウコン「尻尾が傷つくと力がでないのじゃ……」
涼(子供の頃、そういうのを何かで見たような……)
「アグリよ! 今度こそ引導を渡してくれる!」
強そうな魔物達を引き連れて現れたオバさんが、凄く頼もしく見える。
当然だ。なにせこのエリアで一番のダンジョンマスターが、自慢の魔物達を引き連れてきたんだから。
「ちぃっ! 壊龍に滅龍、それにギガントゴーレム、カイゼルスネーク、ブレイブグリズリーか!」
舌はないけど舌打ちしたアグリが魔物の名称を口にした。
ていうかドラゴンの名称怖っ!
見た目もアグリが乗り移った化石と違って翼があり、後ろ足で二足歩行している。
迫力があって強そうだし、体の大きさもアグリに負けていない。
それが二体いるのに加えて、同じような大きさの魔物がさらに三体もいる。
これで勝てないはずがないと思うほど、頼もしい。
「行け! カイゼルスネーク、ギガントゴーレム、ブレイブグリズリー!」
オバさんの命令で三体の魔物が同時に突っ込む。
正面からカイゼルスネーク、右からギガントゴーレム、左からはブレイブグリズリーが包囲するように距離を詰めていく。
「ぬぅ!」
生半可な相手じゃないと分かっているのか、アグリは逃げようとせず魔法で迎撃した。
周囲にネジ状の岩の杭を無数に生み出し、迫る魔物達へ向けて放つ。
だけどドリルのように回転しながら放たれた杭を前に、魔物達は退かない。
「ゴオォォッ!」
頑丈さに物を言わせるギガントゴーレムは、防御も回避もせずに杭を破壊しながら突き進む。
「キイィィッ!」
カイゼルスネークは素早い動きで杭を避けながら接近していく。
「ルアァァァッ!」
まるでボクシングのジャブのように、素早い連打で杭を破壊しながら前進するブレイブグリズリー。
三者三様だけど、どれもスゲェな。
「おのれぇっ!」
通用しないと判断したアグリは地面が陥没するほど足を踏みしめ、岩の棘を繰り出してきた。
「させん! 壊龍、滅龍!」
オバさんに名を呼ばれた壊龍と滅龍が、口から光線っぽいのを同時に放った。
あれは確かロードンも使える龍魔法、ブラストフレアだ。
二つのブラストフレアは地面から出てくる棘を一掃し、アグリの足元を直撃した。
「ぬぐぅ。はっ!」
怯んだアグリにギガントゴーレムの拳が迫っていた。
「ゴアァァッ」
「おぶっ、ガアァァァッ!」
顔面に直撃したそれによって、初めてアグリの体が大きく崩れた。
続けてカイゼルスネークが巻きついて締めつける。
よほど強い力で締めつけているからか、どんな攻撃を受けても平然としていたアグリが苦しそうにしていて、化石の体もミシミシと音を立てている。
「ガルアァッ!」
さらにブレイブグリズリーが岩の杭を破壊した爪で顔面を何度も引っ掻く。
頑丈そうな頭部の化石が削れ、徐々に爪痕が残っていく。
「こんのぉっ!」
どうにかしてカイゼルスネークの拘束から脱しようと、アグリが身じろぎして抵抗するものの、しっかり締めつけているから拘束は簡単に解けない。
「いいぞ、ロウコン様!」
「頑張ってください!」
周囲の声援が響く中、ギガントゴーレムがアグリの尻尾を掴む。
ブレイブグリズリーとカイゼルスネークがすぐさま離れると、ギガントゴーレムはアグリの体を背負い投げの要領で持ち上げ、地面へ叩きつけた。
「ぬあぁっ!」
苦悶混じりの悲鳴を上げるアグリに構わず、ギガントゴーレムは尻尾を掴んだまま同じ要領で地面へ叩きつけるのを繰り返す。
「ギガントゴーレム、投げろ!」
何度目かの叩きつけの後、オバさんの指示に従ってギガントゴーレムがアグリを空中へ放る。
それを逃さず目で追う壊龍と滅龍は、口元に光の球体を作る。
「龍魔法 ブレスオブメテオ! 撃てぇ!」
オバさんの命令で壊龍と滅龍が龍魔法を放つ。
一つの球体から複数の光線が放たれ、アグリに向けてほぼ全方位から襲いかかった。
飛行手段が無いアグリはそれを避けられず、全て命中する。
「ぬぐあぁぁっ!」
あまりの威力に余波が地上まで届いて突風が吹く。
さらに余波の影響か、遥か高くにある地底都市の天井の土や小石がパラパラと降ってきた。
それと共に白煙を纏ったアグリが地上に落下し、轟音と地震のような揺れが起こる。
「やったのか?」
誰かの呟きに、その場にいる全員が地面に倒れているアグリに注目する。
ピクリともしない様子から、倒したのかと思った直後に化石の目に光が灯る。
「ぬああぁぁぁっ!」
怒りが込められた雄叫びを上げ、再びアグリが立ち上がった。
「この程度で、私は負けない!」
怒りを露わにするアグリが前足を大きく上げて地面に叩きつけた。
地面が陥没して、叩きつけたアグリの前足がめり込む。
すると、オバさんが連れて来た魔物達の足下から複数の岩が隆起して、魔物をそれぞれ囲んで動きを封じ込めた。
「ぬおっ!?」
しかも動きを封じただけでなく、徐々に岩が大きくなりながら、魔物達を押し潰そうとしている。
ギガントゴーレムとブレイブグリズリーが押し返そうとするものの、岩の圧力の方が強く押し返せない。
体が細いカイゼルスネークですら、隙間から頭を出すこともできず、地面も岩に塞がれて地中へ潜ることすらできずにいる。
壊龍と滅龍も動けず、ブレスを吐こうにも喉元が圧迫されて撃てそうにない。
「このっ!」
オバさんが魔法で炎の渦を岩に当てた。
でも岩に炎じゃ相性が悪い。
いくら炎を浴びせても岩はビクともせず、魔物達を苦しめていく。
「このまま潰れろ!」
よほどの魔力を込めているのか、岩は欠けることなく魔物達を苦しめている。
助けようと他のダンジョンマスター達が魔物に岩を攻撃させているけど、壊れそうな気配は無い。
「駄目、壊れない!」
「このままではロウコン様が」
気持ちは分かるけど、狙うならそっちじゃないだろう。
「ロードン、行け!」
「承知!」
アグリの方を指してロードンを向かわせる。
岩を直接壊すよりは、岩を生み出して今も操っている方を叩いた方が助かる可能性は高い。
「邪魔をするなっ!」
飛翔して接近するロードンへ、地面から岩の棘が飛んでいく。
ロードンはそれを壊し、回避し、なおも距離を詰める。
「えぇい、小癪な!」
今度は三日月形をした岩のブーメランを複数放ち、円を描く軌道で左右から同時にロードンを狙う。
「二の轍は踏まん」
既にどんな攻撃なのか理解しているロードンは、災襲血閃の柄にある宝石へ魔力を流して防壁を展開する。
防壁に当たった岩は全て砕け散り、防壁を解除したロードンは再接近する。
「おのれっ」
「ドラゴンバースト!」
接近しながらロードンが龍魔法を撃つと、アグリはそれを避けようとせずに巨大な岩を複数放って相殺した。
ひょっとして、あの魔法を使っている最中は動けないのか?
だとしたら。
「ロードン、もう一発だ!」
「承知。ドラゴンバースト!」
「ちぃっ!」
再度放った龍魔法にも、アグリは岩を放って相殺した。
同時に二つの魔法を行使できるのは凄いけど、ボディががら空きだぜ?
「振り抜け!」
たったこれだけの指示でロードンは意図を理解してくれた。
災襲血閃の刀身を伸ばし、迎撃に夢中でがら空きの胴体を薙ぎ払う。
「がふっ!?」
突然の腹部への攻撃で岩の放出が止まった。
完全に相殺しきれなかったドラゴンバーストが命中し、怯んだ隙に災襲血閃で何度も斬りつけていく。
するとオバさんの魔物達に使っている魔法への集中が途切れたのか、岩による圧迫が止まった。
「今じゃ、全力で脱出じゃ!」
全力を振り絞るギガントゴーレムとブレイブグリズリーが岩を押し返し、力任せにぶち破る。
そのまま他の魔物達を囲む岩も破壊し、遂に拘束から脱出した。
「やるのヒイラギ。なんじゃ、あの魔物と武器は」
「……ノーコメントで」
どうせ後で追及されるだろうけど、今は後回しだ。
「ロードン、撃て!」
「承知! ブラストフレア!」
放たれたブラストフレアがアグリに直撃する。
「こっちも撃て!」
今がチャンスと踏んだオバさんの指示で、壊龍と滅龍もブラストフレアを放つ。
さらに他の魔物達も一緒に攻撃を始め、エレンとパンプキンレイスもそれに混じって魔法を放つ。
反撃の隙を与えない四方八方からの攻撃に、徐々にアグリの苦しむ声が弱くなっていく。
「こんな、こんなことが……」
「ゴルァッ!」
「ガァッ!」
今にも崩れ落ちそうなアグリにギガントゴーレムとブレイブグリズリーが接近し、下顎へアッパーを浴びせた。
顔は完全に上を向き、前足も浮いて胴体とそこにある結晶が無防備に晒される。
「今じゃ! 一斉に結晶を狙うのじゃ!」
オバさんの声に反応して全ての魔法が結晶に集中する。
いくつかは肋骨に当たって命中しなかったけど、ほとんどの攻撃が結晶に命中した。
「あぎゃあぁぁぁっ!」
悲痛な声を上げたアグリは轟音を立てながら崩れ落ちた。
攻撃も止み、全員が黙ってアグリの様子を見守る。
「ま、まだ……まだ……」
立ち上がろうとしているけど、随分弱っていて足元はガクガクに震えている。
「私は、こんなところで……」
「往生際の悪い奴じゃ。壊龍、滅龍、トドメじゃ!」
最後の一撃を放つため、壊龍の口元には青白い魔力、滅龍の口元には赤黒い魔力が収束していく。
集まってくる魔力の量からして、相当な威力の攻撃を撃とうとしているのが分かる。
これが決まればさすがに終わるだろう。
けれどアグリの方もただで終わるつもりは無く、自分の周囲に槍状の岩を大量に作り出した。
「死ねぇっ!」
先に攻撃したのはアグリ。
無数の岩の槍が壊龍と滅龍へ迫るけど、オバさんは慌てずにアグリへ指先を向けてた。
「撃てぇ!」
オバさんの声を合図に、壊龍と滅龍は攻撃を放つ。
放たれた魔力は青白いドラゴンと赤黒いドラゴンの頭部を形作り、槍を全て破壊してそのままアグリへ噛みつく。
閃光が辺りを眩しく照らし、次の瞬間には大爆発した。
吹き荒れる突風に、エレンと一緒にスカルウルベロスにしがみ付いて、スカルウルベロスも合流したロードンに支えられながら踏ん張る。
やがて爆風が治まると、アグリがいた場所には巨大なクレーターができていた。
クレーター内は土煙で様子が見えないけど、さすがにこれは決まっただろう。
「勝った、勝ったあっ!」
「さすがです、ロウコン様!」
「ロウコン様、バンザイ!」
勝利を確信して、あっちこっちから歓喜の声とオバさんを称える声が響き渡る。
そんな中、土煙が晴れてきたクレーターの中を覗き込むと、バラバラになって散らばっている化石の中心に、アグリの魂の結晶がそのまま残っていた。
「ロウコンさん、アレ」
オバさんを呼んで結晶を指差す。
戦いが終わって安堵していたオバさんは結晶を見ると、緩んでいた表情を再度引き締めた。
「ふっ!」
壊龍の背から飛び降りて軽やかに着地を決め、クレーターの中を進む。
「ロウコン様!」
どこにいたのか、リコリスさんが駆け足で後を追う。
俺のエレンを伴い、その後に続く。
「デカッ」
近づいて見てみると、結晶は思った以上に大きい。
直径も高さも大体一メートル半くらいあるぞ。
顔を近づけて観察するオバさんの隣に並び、結晶を観察する。
やっぱり見た目は魔心晶とよく似ている。
「これ、どういう物なんでしょうか?」
「分からん。こんな物、見た事も聞いた事も無いからの」
リコリスさんの質問に、オバさんは腕を組んで考え込む。
他のダンジョンマスター達も次々にやって来て、結晶を観察して意見交換をしだした。
「ヒイラギよ、異世界人としてこれをどう見る?」
ここで俺に意見を求めるか。
異世界人から見ての意見を聞きたいんだろうけど、俺にも何とも言えない。
そもそも元いた世界には、魔法やスキルなんてのが存在しないんだから。
「俺にもなんとも言えません。それよりも、これをどうしますか?」
「うぅむ……」
判断を誤れば大事になりかねないから、オバさんは慎重になっているようだ。
とりあえず考えが纏まるのを待っていると、結晶からアグリの声が聞こえてきた。
「ふざ……けるな……。こんなこと……」
おいおい、こんな状態になってもまだ意識があるのかよ。
あまりの執念深さに周囲はざわめき、距離を取ったり警戒心を露わにしたりする。
「私はまだ……終わる訳……には……」
だからって、肉体も無しに何が出来るっていうんだ。
「本当に往生際が悪いの」
「どうなさいますか?」
「……我が引導を渡す。皆、念のために離れておれ」
破壊するつもりか。
まっ、あんなのが中にいるんじゃ仕方ないか。
指示に従って皆とクレーターから出て、中心部にいるオバさんと結晶へ目を向ける。
注目が集まる中、オバさんの尻尾から放たれた炎が結晶を包み込んだ。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!」
炎に包まれた決勝から、アグリの悲鳴が響き渡る。
「むん」
「ひぎいぃぃぃっ!」
炎の威力が増して色が赤から青白くなった。
すると結晶が徐々に溶け始め、液状になって地面に垂れだした。
「やめろやめろやめろやめろやめろやめろ!」
やめるはずがないだろう。
自分勝手な理由で何をしたのか、その炎の中で思い出して後悔してろ。
まっ、そんな余裕は無いだろうけどな。
結晶が溶けていくに伴って悲鳴は小さくなっていき、残り僅かになったところで悲鳴は消えた。
そして残り僅かな結晶も溶けきると、オバさんは炎を消した。
「やっと終わりおったか、このバカ者が」
弁護のしようもない末路にオバさんは悪態を吐く。
オバさんだけでなく、誰もが冥福を祈らず恨みがましい目で溶けた結晶を睨んでいる。
そういう反応をするのも当然だと、周囲を見渡して被害状況を見て思う。
しかも被害の全容は目に見える範囲だけじゃないから、今から気が重くなる。
「皆、よくやってくれた」
結晶の処理を終えてクレーターを登ってきたオバさんが、労いの言葉を掛けてくれた。
と言っても、たいしたことはできなかったけどな。
ロードンは通用していたけど、ほとんどオバさんが連れて来た魔物達が倒したようなものだ。
「当分は事後処理で忙しくなるじゃろうし、身内や従業員に被害が出てるかもしれぬが、どうか気を強く持ってほしい」
異世界から来た俺に身内はいないけど、イーリア達の身内には被害が出ているかもしれない。
帰ったらすぐに調べるよう、伝えないとな。
「では、それぞれのダンジョンへ戻れ。我はハンディルに事態の収束を伝え、ダンジョンの制限を再起動させる」
そっか、戦闘が終わったから魔物達もダンジョンに戻さなきゃな。
というか、さっきから俺が連れて来た魔物達へ視線が集まっている。
ロードンもエレンもスカルウルベロスも、これまでの記録に無い魔物だから注目されるのも当然か。
それを避けるようにスカルウルベロスの背に乗って、崩壊した町中を帰路に着く。
あっ、そうだ。ボーンベアタウロスの骨を回収しておかないと。
アンデッドをもう一度アンデッド化することはできないけど、埋葬するぐらいはしてやらないとな。
****
道中でボーンベアタウロスの骨と戦斧を回収してダンジョンへ戻ると、玄関前でエリアスとイーリアが待っていた。
「おぉい! エリアス、イーリア!」
スカルウルベロスの背から降りて声を掛けたら、二人揃ってこっちを向いてエリアスが駆け寄って来て抱きつかれた。
よほど心配だったのか、涙をボロボロ零している。
「ヒイラギ様! ご無事でなによりです!」
「ああ、なんとかな」
頭を撫でてやっていると、少し遅れてイーリアも小走りで駆け寄って来た。
エリアスほどじゃないけど涙を流していて、それを拭っている。
「心配かけた。皆は無事か?」
「はい。全員無事で、居住部にて待機しています」
「分かった。じゃあこれから……なんだ?」
皆の無事を聞いたタイミングで、ロードン達の体が光に包まれて消えた。
「これは……制限解除が終了したようですね」
ということは、ロードン達は飼育スペースに戻ったのか。
後で確認しておこうと思いつつ、エリアスとイーリアと共に居住部へ入る。
「皆さん、ヒイラギ様が戻られました」
イーリアの言葉を聞いて皆がこっちを向いて、安堵した表情を浮かべたり、抱きついてきたりした。
それを受け止めたり、心配掛けたことを謝ったりしていると、目元を拭ったエリィに尋ねられた。
「あの化け物は?」
その問いかけに全員の視線が集まる中、表情を緩めてつ立てる、
「安心しろ。あいつは倒したから、もう大丈夫だ」
倒したと伝えると、全員がホッとした表情になった。
でも安心するのはまだ早いぞ。
「皆、すぐに家族の安否を確かめに行け」
この指示に、ダンジョンタウン出身者全員がハッとした。
異世界から来た俺や香苗達、地上から来たフェルト達とは違い、ダンジョンタウン出身の皆の家族はこの町がいる。
事態が収束した以上は、身内の安否確認をすべきだ。
「結果がなんであれ、見つけるまで帰って来なくても構わない。早く行ってこい」
真っ先に動いたのは、母親の安否を気にしていたラーナだった。
続いてエルミ、イーリア、ローウィと順々に外へと飛び出して行く。
それを見送った俺は、香苗達と一緒に室内外の様子を確認することにした。
「室内での被害は?」
「特に無い。あえて言うなら、うっかりコップを一つ割ったぐらいか」
「外壁は見たか?」
「まだだよ」
だったらすぐに確認しておこう。
もしも外側の家が潰れたら、居住部から出られなくなるかもしれないからな。
という訳で男奴隷の三人を連れ、外壁の様子を確認しに向かう。
「フェルトとガルべスは右回り、俺とバリウラスは左回りに確認しよう」
「「「はい」」」
一人じゃ見落としがあるかもしれないから、二人で確認しながら外壁を確認していく。
「見た所、大きな損傷は無さそうですね」
「そうだな」
幸いにも外壁には亀裂も穴も無く、損傷らしい損傷は見られなかった。
そのまま裏手まで回り、反対側から確認をしていたフェルト達と合流する。
「そっちはどうだ?」
「外壁のレンガに、小さな損壊が数箇所ありました」
「さほど問題は無いと思いますけど、気になるなら直した方がいいと思います」
小さくとも損傷があったか。
直すかどうかは確認してからにしよう。
「分かった。フェルト、案内してくれ。バリウラスとガルべスは農場に行って、向こうの被害確認をしてきてくれ」
「承知しました」
「行ってきます」
駆け足で農場に向かう二人を見送って、損傷の様子を確認していく。
小さな亀裂が走っていたり、何かがぶつかったのか小さく欠けていたりしてるけど、さほど大きい被害じゃないから修復は様子を見てからにしよう。
確認はこれで切り上げて、次は金銭と食料の備蓄を確認をする。
こういう状況だから、生活のためにも金と食料はちゃんと確認しておかないと。
えっと、金はこれだけあって食料の備蓄がこれだから……。
「当面の生活費は問題無し。食料も備蓄と育成スペース産の野菜があるから、当面は大丈夫そうだな」
「なあ涼。これからオレ達の生活、どうなるんだ?」
「……さあな。結構被害が出たから、復興にも時間が掛かるだろうし」
いくら魔法が存在する世界とはいえ、簡単に復興とはいかないだろう。
元の生活を取り戻すのがどれだけ大変なのかは、元の世界での被災地のニュースで分かっているつもりだ。
「ともかく、一日一日をしっかりやっていくしかないか」
足下を見ながら一歩ずつ進む。
それが今の俺達にできる事だろう。
さてと、次はボーンベアタウロスの骨を手厚く埋葬しておくか。




