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第39階層 人には無害でも動物には有害な物もある

アッテム「海の魚を食べると、何故か、懐かしい気分に、なります」


 もうすぐ月末ということで、俺とイーリアは司令室でダンジョンの仕事をしつつ、今月の収支報告書をまとめていた。

 ダンジョンと副業、両方の税金がちゃんと口座から引かれているのを確認し、作業を続行。

 今月の収入額を計算し、そこから人件費等の支出分を引いて純利益を導き出す。

 農業の方はまだ収入が無いから支出しかないけど、他の副業はアイディア料を収入として受け取っているだけで支出が無い。

 おおよその計算だと黒字っぽいけど、だからといって油断はできない。

 計算が済んだら今月の利益や支出を年間用の方に記録して、折れ線グラフで額の変化を確認する。

 黒字でも利益が下降していたり、支出が上昇していたりしたら注意が必要だから、原因を調べる必要がある。


「ダンジョンの方は……こんなものか」


 ダンジョンの収入と純利益は上がっているけど、先月と先々月から見れば僅かにしか上回っていない。

 支出が特別増えた様子は無いから、伸びが停滞してるんだろう。

 利益を増やすため、ダンジョンへテコ入れする手もある。

 だけどそれで悪影響が出る可能性もあるし、かといって今のままで満足していたら、今後の成長は難しくなる。

 こういうところのバランスは難しいな。


「ヒイラギ様、副業の収支報告ができました」

「ああ、ありがとう」


 イーリアから手渡された副業の収支報告を確認すると、こっちも微々たる額だけど右肩上がりを続けている。

 商品だけを見れば、蒸篭や折り畳み式の椅子とテーブルの伸びが止まりかけている。

 これらはウスターソースやケチャップと違って消耗品じゃないから、こうなることは予想していた。

 むしろ、それを補っているウスターソースとケチャップの勢いが凄い。


「今月のダンジョンと副業も、共に黒字で何よりですね」


 あくまで結果だけを見れば、だけどな。

 どっちも伸びが止まりかけているのは否めない。

 だけど農業の方でも利益が見込めるようになれば、副業の方は問題無いんじゃないかな。

 本業のダンジョンはちょっと考える必要はあるけど、まずはこれをちゃんと記録して保管しておこう。

 収納袋は冒険者から大量に入手しているから、まだまだ保管には困らない。


「皆は口座から税金が引かれていたか、確認したか?」

「私は問題ありませんでした。他の方は不明です」


 今の時間に司令室で勤務しているのは、俺達を除けば税金とは無縁な先生とミリーナとエリアス。

 奴隷の先生とミリーナは収入が無いし、エリアスはまだ未成年だから収入を得られない。

 そもそもエリアスは俺の婚約者としてここにいるから、収入自体が発生しない。

 一応結婚するまではオバさんがエリアスの生活費を援助してくれているけど、それは収入には当たらないから税金の対象外だ。


「確認していない奴には、ちゃんと確認するよう伝えておいてくれ」

「承知しました」


 口座から引かれるように手続きをしたとはいえ、何かのミスで引かれていない可能性はあるからな。

 向こうの不手際なのに勘違いされて、脱税疑惑を掛けられたら面倒だ。


「そういえば、この前ダンジョンギルドでルエルから聞いたけど、給料上がったんだって?」


 ダンジョンへ派遣されているダンジョンギルドの職員は、派遣先のダンジョンのランクやランキング順位で給料が変動する。

 俺のダンジョンはランキング上位に名を連ねていないけど、ランクは上がっているし順位もそこそこの位置にはいるから、それに伴ってイーリアの給料も上がっている。


「はい! これもヒイラギ様のお陰です!」

「俺だけの手柄じゃないって」


 このダンジョンは俺だけじゃなくて、皆で育てて築き上げたものだ。

 その中にはイーリアも含まれているから、自分で勝ち取った昇給とも言える。

 切っ掛けは俺かもしれない。でもその切っ掛けを掴んだのは、他ならぬ皆の力に違いない。


「そうだ。こっちのチェックもしておかないと」


 手にしたのは養蜂に関する企画説明書。

 実は新たな副業として養蜂をするに当たり、再編されたエリア委員会へ養蜂の概要を説明することになった。

 きっかけは「異界寄せ」の存在を知り、異世界の食材を求めるオバさんに養蜂の話をしたら、こちらにない事業だからエリア委員会へ説明する必要があると言われ、今度プレゼンをすることになった。

 資料は既に作成して、事前に皆を相手にプレゼンの練習をして、内容も練りに練ったものにしてある。


「委員会への説明はいつでしたっけ?」

「こっちの都合でいいって言うから、今度の定休日にしておいた」


 そこで問題無しとされれば、ベアングのおっちゃんに巣箱を作ってもらおう。


「早く、甘いハチミツを食べてみたいです」

「そのためにも、絶対にこのプレゼンは成功させないとな」


 資料のチェックしながら決意を固めるけど、あんな問題が浮上するとは夢にも思わなかった。




 ****




 遂に訪れたプレゼン当日。

 お供に名乗り出たエリアスを伴い、ダンジョンギルドの会議室で新しく再編されたエリア委員会を前に、資料を配って養蜂に関するプレゼンを開始する。

 前回のメンバーから引き続き残っているオバさんとハンディルのおっちゃんも、真剣な表情で資料へ目を通していく。


「まず、お手元の資料の二枚目をご覧ください」


 配った資料を使っての説明は、何度も練習した甲斐あってスムーズに進む。

 だけど委員会の人達は全員渋い表情をしていて、何故か受けが良くない。

 それでもプレゼンを進めるしかないから、様子が気になりつつもプレゼンを進めていく。

 やがて説明を全て終えると、委員会の人達は顔を寄せ合って小声で相談を始めた。


「あの、大丈夫ですよね?」

「だと思いたい」


 ひょっとして委員会には、俺達が気づかなった不安要素があるのだろうか。

 プレゼン中もずっと渋い表情だったし、何か嫌な予感がする。


「では、そういう事で」


 ようやく相談が終わったのか、委員会の人達がこっちを向いた。


「ヒイラギ君。残念ながらこの事業は承認しかねる。悪いが養蜂は諦めてくれないか?」

「えっ……」


 いったいどこが悪かったんだ。

 理由も聞かず、はいそうですかとは言えない。


「理由を教えていただいても?」

「いいでしょう。それはこのミツバチというのが、毒を有していることです」


 ミツバチは毒性が弱いとはいえ有毒だから、その点は包み隠さず伝えた。

 対策として、使役スキルで刺さないように指示するのと、早めの処置とその処置方法も説明して、必要とあらば数匹を提供して毒の成分を調査し、解毒剤の研究をしても構わないとも。


「君が対策を考えているのは、資料と説明でよく分かりました。しかしこの毒の効果は、あくまで人間に対してなのでしょう? 我々亜人にとって、この毒は猛毒ではないと言い切れますか?」


 あっ……。


「刺さないように指示をしていれば、ミツバチとやらが刺すことは無いでしょう。しかし、万が一ということはあります。例えば何も知らない子供が捕まえて、遊びのつもりで毒針を刺したり、悪意ある人物が捕まえて毒を利用したりとか」


 だからといって、襲われたら刺していいなんて指示は出せない。

 悪意ある相手ならまだしも、好奇心で手を伸ばした子供を刺して、大事になる可能性がある。

 亜人にとってミツバチの毒が、どれだけの効果があるか分からないんだから。


「気にし過ぎとも思えるでしょうが、今までに無い毒を有している以上、我々は慎重にならざるを得ないのです」

「私達はこのエリアの住人達の代表として、危険な可能性も考慮しなくてはならないの」


 言っている事は分かる。

 俺だって皆との暮らしを壊されたくないから、侵入者っていう外敵を容赦なく殲滅している。

 前回のことがあって失念していたけど、委員会はこのエリア全体のために運営されている。

 だからこそ、未知の毒を有する生物に強い警戒心を抱いているんだ。


「しかもアタシ達は種族がバラバラだ。あの種族は耐えられて、この種族は耐えられないという可能性もある」

「このダンジョンタウン全ての種族に対し、毒の効果を調べるのは無理でしょう?」


 考えられる問題点の指摘に、ただ頷く事しかできない。


「このハチミツとやらは非常に魅力的だ。だが、委員会に名を連ねる者としては、苦渋の決断をさせてもらった」


 オバさんはちょっと黙っていてくれ。

 せっかくのシリアスな空気が、食欲に塗れた発言のせいで壊されそうだから。


「おほん。とにかく、養蜂は承認できません」


 残念だけど仕方ない。

 こればかりは毒性について、元の世界基準で考えていた俺の落ち度だ。


「分かりました。養蜂は断念します」

「くっ、うぅ……」


 うわっ、オバさんマジ泣きしてる。

 頼むからもう少し堪えてくれよ。エリアスや他の委員会の連中も困惑顔してるぞ。

 しょうがない。


「ロウコンさん、今回の件でこうした場で説明をするよう、提案してくれてありがとうございます。お礼に来集、焼肉パーティーに招待します」

「楽しみにしているぞ!」


 秒で笑顔だよ。

 食い物に関してはホントに単純だ、このオバさん。


「お母様が申し訳ありません……」


 小声でエリアスに謝られたけど、気にするな。感謝しているのは本当の事なんだからな。

 もしもこの場で指摘されず、万が一の事があったらと思うとゾッとするぜ。


「では、本日はここまでとします。お疲れさまでした」


 ハンディルのおっちゃんの締めで解散し、委員会の人達を見送ってから俺とエリアスも退室し、帰路に着く。

 それにしても、今回のプレゼンは勝ち目自体が存在しなかったのか。

 万全の準備をしたつもりでいたけど、ミツバチの毒の効果が亜人に対しても人間と同じだと勝手に思い込んで、間違った前提の上で計画を進めていた。

 ここが別の世界で、多種多様な亜人がいるという点をもっと考えるべきだった。

 他の皆が気づけばというのは責任者として無責任だから、ちゃんと俺自身が受け止めておかないと。


「エリアス、帰ったら反省会だ。この件の責任は俺にあるけど、反省そのものは皆でやろう」

「分かりました」


 責任は責任者たる俺が背負う。

 でも反省は皆でやっておくことで、失敗の情報を皆で共有して今後の再発を防ぐ。

 それと記録にも残しておかないとな。


「農場の皆も反省会に参加してもらいたいから、農場の方に寄って帰るぞ」

「はい」


 皆、がっかりするだろうな。




 ****




 農場に寄ってエルミ達を連れて帰り、居住部に全員を集まってもらって今回のプレゼン結果と、その理由を説明したら頭を下げて謝罪する。


「ヒイラギ様、別に謝らずとも」

「そういう訳にはいかない。俺は養蜂の提案者で、責任者でもあるんだからな」


 下手をすれば、責任の取りようが無い事態に陥っていたかもしれないんだ。

 今回はたまたま助かったけど、責任者なりの態度は示す必要がある。


「完全に失念していた。向こうでの常識に囚われて、毒に変わりないという点を、深く考えなかった」

「ヒイラギ様だけの責任ではありません。毒だと知りながら、弱いと言うから大丈夫だと思い込んだ私達も同罪です。今回の件は私達全員のミスですから、一人で背負おうとしないでください」


 イーリアの発言に全員が頷いてくれた。

 皆の気持ちは嬉しい。でも、それとこれとは話が違う。

 責任の所在はあくまで提案者であり、責任者でもある俺にある。

 それに、お前達の取るべき責任の所在はそこじゃない。


「そうだな。全員のミスだ」

「では、報告書にはそのように記しますね」

「それは待て。確かに全員のミスかもしれないけど、俺とお前達じゃミスの方向性が違う」


 指摘した事の意味が分からず、各々が近くにいる奴と顔を見合わせる。


「どういう事でしょうかぁ?」


 小さく手を挙げたヴィクトマの問いかけに、ミスの違いを説明する。


「俺のミスはさっきも言った通り、ミツバチの毒が亜人へ与える影響への浅慮。対する皆のミスは、俺の言葉を信じすぎたことだ」

『あっ……』


 気づいてくれたか。

 ミツバチの毒は弱いと言ったのをそのまま受け止め、信じてしまった。

 亜人の自分達には、どうなんだろうと考えずに。


「今回の件の全責任はあくまで俺にある。けれど、皆が俺の言葉に信じて疑問を持たなかったのも事実だ。これは報告書に残す記録じゃなくて、教訓として皆の心に刻んでおいてくれ」


 皆のミスは報告書に記すようなミスじゃない。

 各々の自覚の問題だから、教訓って形で十分だ。


「これを踏まえて、今後はもっと疑問を持ってくれ。これまでもそうするように言っていたけど、徹底が足りなかったからこそ今回の事態になった。俺も含めてここにいる全員がその点を再確認して、これからの業務に当たるようにしよう」

『はい!』


 よし、いい返事だ。

 にしても、ハチミツでの収入が見込めなくなったのは痛いな。

 だからといって、いつまでも引き摺る訳にはいかないから、気を取り直して次の議案に移ろう。


「じゃあ次に、養蜂用に確保していたスペースの有効活用法について話し合おう」


 養蜂が駄目なら駄目で、それ用のスペースを何に活用するかは重要だ。

 スペースを余しておくのは勿体ないし、反省会の後だからこそ、新しい案に対しても注意が行き届くだろう。

 さてと、どんな案が出るかな?


「何か案がある人、挙手」

『はい』


 手を挙げたのはユーリットとアビーラとネーナの三人。

 他は案を考えている最中なのか、考え込む仕草をしている。


「じゃあ、アビーラ」

「うす! 鴨と同じく、毒の無い生物を飼育するっす!」


 意見としては普通だけど、元々生物の飼育用に空けていたから有りと言えば有りか。

 毒の無い生物にして、外に出さなければいい話だけど、肝心なのは何を飼育するかだ。

 もう鴨は召喚できないし、かといって飼育方法がよく分からないのを召喚しても意味が無い。

 そうなると召喚対象を話し合う必要があるな。


「なるほど。ユーリットは何だ?」

「育成スペースに植えている薬草を何種類か、向こうで栽培できませんか?」


 それも有りだ。

 向こうで栽培して薬剤師や商人へ販売すれば、このダンジョン内でだけ使っていた薬を広められる。

 毒草じゃないから今回のような事も起きないだろうし、効能についてはユーリットが把握しているから取扱いも問題無いだろう。

 ここにいる皆も飲んだり塗ったりしているから、害が無いのは立証されているしな。


「一考する価値はある。ネーナの意見は?」

「うちは、そのスペースで別の野菜を扱いたいなと、思うてるんよ」


 別の野菜ね。

 他のことをするんじゃなくて、そのまま畑を広げようってことか。


「これから土の準備やら耕したりやらせんとアカンから、時間はかかるったい。だけんど異世界野菜なら、その価値はありまっしゃろ?」


 有る。種類を選べば十分に有る。

 だとすれば、無毒の生物同様に何を召喚するかが鍵になるな。


「あの、ちょっといいかな?」


 ここで先生が挙手してきた。何か疑問に思った事でもあったかな?


「何ですか先生」

「あのね。どうせ野菜を作るなら、こっちの世界の野菜と私達の世界の野菜。これを交配させる実験場として使ってみたらどうかなって」


 なんだそれ、面白そう。

 そうか、二つの世界の野菜を掛け合わせた品種改良か。

 さすがは元化学教師、そういう発想は無かった。


「ネーナ、どう思う?」

「めっちゃオモロそうです!」


 好奇心を刺激されたのか、普段はぼんやりした印象を与える目が見開いて、これでもかってくらい輝いている。

 でもまだ本決まりじゃない。もっと皆の意見を聞かないと。


「さっ、意見があればどんどん出そう。俺も思いついたら出すぞ」


 それから数時間かけて会議は続いた。

 最初は意見していいのか戸惑っていた農場の奴隷三人も、先生が意見を言ったのを切っ掛けに意見をくれた。

 疑問に思った点はその場で質問し、対策についても話し合い、解決できないと判断したものだけを却下して候補を絞っていく。

 そうしてようやく会議は終わり、農場組は帰って行った。

 せっかくの定休日がこんな形になったけど、今後のためには有意義だったと思う。


「マスターヒイラギ。こちらの意見の精査は如何なさいますか?」

「後でやるから、そこに置いといてくれ。少し疲れた」

「承知しました」


 反省会からそのまま会議をやったから、さすがに疲れた。


「お疲れさまです」


 ミリーナが目の前に置いたのはいつもの麦茶じゃなくて、育成スペース産の薬草で作った薬膳茶。

 体に染み込む感覚が心地よくて、後口がスッキリしている。

 ただ、一つだけ大きな欠点がある。


「ありがとう。……にっが」


 この世のものとは思えないほど苦い。

 こっちの世界の薬草と混ぜて作ったからなのか、とにかく苦い。

 後口は悪くないのに、ブラックコーヒーより遥かに苦い。


「この苦さが無ければ、仕事明けの一杯にはいいんだけどな」

「どうしてここまで苦いのか、ユーリットさんも分からないそうです」


 せめて砂糖かハチミツを混ぜれば、少しはマシになるかな?

 そうだ、今日はまだ「異界寄せ」を使ってないから、ここで使う分として召喚しようかな。

 加工前の状態だから熱処理が必要だけど、それくらいなら問題無いだろう。


「なあミリーナ、ハチミツ召喚するから容れ物を用意してくれないか?」

「ハチミツを召喚なさるんですか?」

「養蜂の件でのお詫びも兼ねてな」


 オバさんにも世話になったから、少し分けた方がいいかな。

 あっ、農場の面々にも届けてやろうっと。


「少々お待ちください」


 容れ物を探しに行ったミリーナを見送ってしばらくすると、大きな瓶を持って戻って来た。

 しかも他にも何人か連れて。


「ハチミツを召喚すると聞きました!」

「どれだけ甘いんでしょうね」

「加熱処理はお任せください!」


 顔と態度に出していなかっただけで、そこまで興味があったのか。

 正直、こっちの甘味に対する好奇心を舐めていた。

 香苗達でさえ、久々のハチミツに目を輝かせている。

 集団の後ろには養蜂の件に関する報告書を頼んだ、エリアスまでいるし。


「あ、あの、養蜂を断念した経緯に関する、報告書ができました」


 真面目な仕事で来たのか、すまない。

 ハチミツに目の眩んだ連中にも見習ってもらいたい。


「ありがとう。確認をするから、ハチミツはちょっと待て」

『えぇぇぇぇっ』


 文句を言うな、ハチミツに目が眩んだ罰だ。

 早く早くと訴える視線を無視して、報告書へ目を通していく。


「うん、これなら大丈夫だ。お礼にハチミツを一番最初に味わっていいぞ」

「い、いいんですか!?」

「仕事をちゃんとやってくれた礼だ」


 目が眩んだ連中を睨みながらそう言ったら、全員が目を逸らし、黙って空の瓶を差し出してきた。

 そこへハチミツを限度いっぱいまで召喚すると皆が群がり、瓶の中いっぱいのハチミツを眺めだす。


「こ、これがハチミツ」

「どれだけ甘いのでしょうか」

「それよりも早く加熱処理をしましょう。今のままじゃ、食べられないわよ」

『おぉー!』


 先生の指摘により、ハチミツは台所へ運ばれていった。

 さてと、今のうちに意見の精査をするか。

 結局、この日のうちに新しい活用法は決まらなかったけど、ようやく味わえたハチミツに皆は歓喜した。

 最初に味わえたエリアスなんか、耳も尻尾もパタパタ動かしながら両頬を押さえてたし。

 未練がましいけど、販売できれば大儲けだったかもな。実に惜しい。


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