第34階層 貰えるなら貰いたいけど、それが何かによる
ローウィ「頻繁に肉を食べさせてくれる主様は神様です」
万が一にも斬らないよう、刃を反した魔剣・腐滅を振るう。
受けるローウィは、冒険者から手に入れた剣で受ける。
危なくないよう、アビーラに刃を潰してもらった剣で、時折俺に打ち込みながら受ける。
運動不足解消のためにやっていた格闘技に、最近剣術が加わった。
理由は腐滅から、たまには剣として使ってくれと言ったからだ。
【やはり、こうして使われてこそ剣ですな。創造主よ】
こんな遊びに近い剣術でも、ちゃんと剣として扱われていることが嬉しそうだ。
できれば実戦でも機会を与えたいけど、呪いと効果のせいで扱い辛い。
まあ、こんなのでも満足してくれているのなら、それでいいか。
「主様、間違っても刃をこちらへ向けないでくださいね」
「こんな風にか?」
ローウィからの攻撃を受けた後、わざと刃を向けてみせる。
「ちょっ、冗談でもやめてください! 斬られたら私、死んじゃいます」
「ハハハッ。悪い悪い」
慌てた様子で腰を引いて退くローウィに謝りつつ、再び刃を反す。
だけど怒ってますよと頬を膨らませたローウィからの攻撃が、少しだけ激しくなった。
それをどうにか捌ききって、今日の訓練は終わった。
「さてと、じゃあ新しい階層の準備をするか。ローウィ、ラーナを呼んできてくれ」
「承知しました」
汗を拭いながら育成スペースを後にするローウィを見送り、この前の会議で決まった新しい階層の準備に移る。
まずは俺が提案した、スカルウルベロスとボーンベアタウロスのようなスケルトンを配置する階層の準備だ。
そのために集めた骨を収納袋から取り出して並べていると、呼び出したラーナがやって来た。
「お待たせしました」
「ああ、よく来てくれたな。ちょっと待ってくれ、先に俺が考案した階層の魔物を作るからさ」
「分かりました。そちらが今回、用意した骨ですか?」
「そうだ」
並べられていく骨をラーナがじっと観察する。
どんなスケルトンの魔物になるのか推測しているのかな。
今回用意したのは、侵入者との戦闘で倒された魔物達の骨。
放っておけばダンジョンに吸収される魔物の死体を回収し、今回のような計画のために骨を採取して収納袋に集めておいたんだ。
「パンプキンレイス、今回も頼むぞ」
「ギッ」
「じゃあまずは、こいつらに死霊魔法を掛けてくれ」
熟練度が上がった死霊魔法は、複数体のアンデッドを同時に生み出せる。
この調子で熟練度を上げ続けたら、一度にどれだけの数を生み出せるようになるんだろうか。
「ガァァ……」
死霊魔法を受けたスケルトン達がゆっくりと起き上がる。
見た目はゴブリンのスケルトンだけど、決定的に違うのは腕の本数。
同じゴブリンの腕の骨を四本分追加して、左右で三本ずつ腕がある六本腕ゴブリンのスケルトンが誕生した。
「さて、どんな感じだ?」
魔石盤でこいつの情報を検索っと。
名称:アシュラスカルゴブリン 新種
名前:なし
種族:アンデッド(スケルトン)
スキル:剣術 投擲
おっ? 最初からスキルを持ってる。
ひょっとして、スキルを持ったゴブリンの骨を使ったからか?
ということはこいつに使ったのは、ソルジャーゴブリンとスローゴブリンの骨か。
他の個体はどうだ?
名称:アシュラスカルゴブリン 新種
名前:なし
種族:アンデッド(スケルトン)
スキル:なし
「ありゃ?」
期待に反してスキルが無いから思わず声に出た。
他の個体も調べてみると、どうやら全部が全部スキル持ちとはいかないようだ。
まぁ、こればっかりは仕方ないか。
普通のままのゴブリンも配置はしていたし。
でもこの実験のお陰で、組み合わせ次第では思い通りのスキルを合わせ持つスケルトンができると分かった。
これは今後の魔物作成における、研究テーマの一つになるな。
「じゃあ、次はこいつらいってみようか」
「ギィ」
続いて死霊魔法をかけてもらった骨は、パラライズスネークをヤマタノオロチ風にしてみた。
詳細はどうだ?
名称:ボーンパラライズオロチ 新種
名前:なし
種族:アンデッド(スケルトン)
スキル:麻痺 潜伏
おぉ、潜伏スキルがあるパラライズスネークの骨を使っていたのか。
使ったのがパラライズスネークだから、こいつ自体の大きさは大した事ない。
だけど潜伏するオロチって、なんか怖いな。
しかも骨だから、突然出てきたら見た目的にも怖いかも。
「じゃあ次はこっちで」
今度はダンジョンで倒された冒険者と魔物の骨を組み合わせてみた。
ロックスパイダーと組み合わせたから、見た目的には蜘蛛人間って感じだ。
動物同士や魔物同士は上手くいったけど、元が別の生物同士の組み合わせはどうなるかな?
パンプキンレイスが死霊魔法を使うと動き出したものの、生まれようとしていた魔心晶が霧散し、崩れ落ちて動かなくなった。
「あれ?」
「どういうことでしょうか?」
俺だけでなく、ラーナまで不思議そうにしている。
ここまでは成功していたのに、何でだ?
ひょっとして人間と魔物を組み合わせたのが悪かったのか?
「ギュウッ?」
イマイチ表情は分からないけど、不安そうにしているパンプキンレイスの声に、組み合わせが悪かったのかどうか調べる事にした。
「これとこれに、死霊魔法をやってみてくれないか?」
次に指差したのは、一方が人間と動物、もう一方が動物と魔物の骨による組み合わせ。
これも失敗だったら、魔物同士とか人間同士とかでしか合成スケルトンは生み出せないと分かる。
そして結果は失敗。
さっきと同じで一度は動き出したけど、すぐに魔心晶が霧散して崩れ落ちた。
最後に人間と動物と魔物の三種混合も試してみたけど、これも駄目だった。
「どうやら、こういった組み合わせはスケルトン化できないようだな」
「そのようですね」
「という訳で、パンプキンレイス。お前のせいじゃない、良かったな」
「ギィッ!」
さてと、原因は分かったけど組み合わせが限られちゃったな。
でも出来ないんじゃ仕方ないから、限られた中で考えていこう。
「ラーナ、今から骨の組み合わせを変更するから、その間にお前の考案したゴースト系の魔物を生み出しておけ」
「承知しました。では、使用する魔物達を連れて来ますね」
今回のゴースト作成で使うのは、人間じゃなくて魔物だ。
これまでに人間を使ったゴーストは作ったことがあるけど、魔物を使ってのゴーストは作ったことが無いから、それをやろうという訳だ。
死体もパンデミックゾンビとして再利用するから、無駄は無い。
ただ、鍛えた魔物達を使う訳にはいかないから、今回のためにいくらか魔物を召喚しておいた。
召喚早々に死んでもらうのは悪いけど、ただでは死なないから勘弁してもらいたい。
さてと、さっさと骨の組み合わせを変えるとしますか。
****
新たな魔物の作成が終わって予定していた数の魔物が揃うと、育成スペースはスケルトンにゴーストにパンデミックゾンビの集団によって混沌と化していた。
スケルトンもスケルトンで、魔物同士、動物同士、人間同士の骨で色んな組み合わせをやったから、見た目が凄いのが何体かいる。ちょっと調子に乗りすぎたかな?
あっちこっちにアンデッド系が蠢いていて、下手なホラー映画より怖いかもしれない。
「冷静に考えてみたら、アンデッド系が随分と増えたな」
最初の頃は虫系とかゴブリン系ばっかりだったのに。
だけどまあ、死霊魔法を利用したダンジョン用の魔力節約術だと思えばいいか。
ダンジョン用の魔力はたくさん余っているけど、無限にある訳じゃないから節約しておいて損は無い。
「さてと、階層を広げる前に片っ端から指導しるぞ。ラーナ、もうひと頑張り頼む」
「お任せください」
とはいえ、数が多いから指導には時間が掛かりそうだな。
でも従魔覚醒の効果を与えるには必要だから、気合いを入れて取りかかろう。
そうして指導に取り掛かり、終わったのは昼過ぎだった。
「お疲れ、しばらくは休んでいていいぞ」
「そうさせていただきます……」
律儀にもずっと付き合ってくれたラーナには休憩を取らせ、俺は司令室へ向かう。
司令室に詰めていた皆に声をかけ、コアにアクセスしてダンジョンの構造に手を加える。
ダンジョン用の魔力を消費して新しい階層を増やし、ついさっき用意した魔物達を配置していき、フロアリーダー級の魔物もそれぞれの階層に配置。
最後に上下の階層と繋げて、新たな階層が開通された。
「これで合計六階層か」
処理の完了を見届けたら背もたれに寄りかかり、大きく息を吐く。
前に階層を増やした時は、予めゾンビ系の魔物をたくさん用意していたから今回ほど大変じゃなかった。
それを考えると、これが階層を増やす時の普通の忙しさなのかな?
いやいや、今回も予め準備しておけばこんなに大変じゃなかったはず。
副業として農業の立ち上げとか、そっちでの雇用と奴隷を購入しての教育を理由に、新しい階層の準備を後回しにしていた自分の責任だ。
「お疲れ様です」
仕事が終わったタイミングを見計らっていたのか、ミリーナが麦茶を出してくれた。
これも今じゃすっかり定着したな。
「悪いな」
「いえ。それより、もっと時間をかけて準備しても良かったのでは?」
それは俺も考えていたよ。でも……。
「せっかく階層を増やせるのに、ゆっくり準備している間に攻略されたくなかったんだ」
「何故です?」
「前に言ったろ、この場所を奪われるのが嫌なんだ」
ダンジョンマスターの仕事は大変だけど、なんだかんだでこの場所は居心地が良いからな。
それを守るためにも、やれることは早めにやっておきたいんだよ。
「どうせ攻略されるなら、全力でやって攻略された方が後悔は無いだろ?」
「そうですね」
分かってくれてなによりだ。
さてと、席を外している間の報告を聞こうか。
「アッテム、用事は終わったから報告を頼む」
「は、はい!」
パタパタと駆け寄って来たアッテムから、ダンジョン内での出来事を聞く。
侵入者の数、倒された魔物の種類と数、その他諸々の報告を聞きつつ報告書を受け取る。
それを聞き終えたら侵入者から入手した品々、捕らえた侵入者、倒された侵入者や魔物の死体についての扱いを指示していく。
「これで全部か?」
「はい。席を、外している間の、報告は、以上です」
「分かった、ありがとう。休憩に入ってくれ」
アッテムを下がらせて報告書へ再度目を通す。
やっぱり侵入者の数が僅かに減少傾向にあるな。
だけど侵入者と持ち物の質は高くなっているから、捕まえた侵入者と不要な品を売却した金額はこれまでの記録と比べ、下がっているどころか微々たるものだけど上昇傾向にある。
(侵入者が減っても、収入が上がっているのは助かるな)
黒字が続いているから給料の支払いは問題無く、生活費も余裕がある。
この余裕があるうちに農業の方が軌道に乗ってくれれば、ダンジョンが攻略されても生活には困らないだろう。
そうだ、向こうで野菜の販売が始まったらバイト代を出さなきゃならないから、その分の予算を計算しておかないと。
ダンジョンの様子に目を配りながら予算の計算をしていたら、居住部から戸倉がやってきた。
「柊君、ロウコンさんの所から遣いの人が来たよ。エリアスさんとの件について、話し合う日を伝えに来たって」
エリアスとの件っていうのは、エリアスとの婚約に関する話か。
「いつだ?」
「明後日が向こうの定休日だから、その日でって」
「ん、分かった。ちなみに、使いっていうのは誰だ」
「よく傍に付いてる、犬人族の女の人」
だったら直接対応しなくていいか。
「そうか。了解したと伝えてくれ」
「分かった」
居住部へ戻る戸倉を見送りつつ、エリアスでないのをちょっと残念に思う。
でもエリアスだって色々都合があるんだろうし、そう毎回は来れないか。
そんなことを考えていると、ユーリットが話しかけてきた。
「マスター様、ちょっと残念だなって思ったでしょ?」
ん? 顔に出てたか?
「……よく分かったな」
「あはは。それなりに付き合いが長いですからね、なんとなく」
なんだ、顔に出ていた訳じゃなかったのか。
別にポーカーフェイスぶっている訳じゃないけど、分かりやすい奴だと思われるのは癪だ。
「マスター様がエリアスさんを気に入っているのは、彼女と話している時の雰囲気で分かりますよ。来ていないと分かった時の雰囲気からして、そうじゃないかなって」
エリアスと話している時の俺って、そんな雰囲気を出しているのか!?
そりゃあ、推測すれば分かるな。
「気に入っているなら、ロウコン様と話し合いとかせずに貰っちゃえばいいじゃないですか」
簡単に言ってくれるけど、そう簡単な話じゃないだろう。
あれ? でも考えてみれば俺はエリアスを気に入っていて、エリアスも嫌じゃなさそうだった。
婚約話も親のオバさんからだし、問題無くないか?
いやいや、俺はまだダンジョンマスターを始めて一年も経っていないし、向こうに比べれば収入もまだまだ。
加えて新しい副業を開始したばかりで、今後の収支の見通しが不透明。
貯蓄額は結構溜まっているけど、現状で簡単に嫁を貰っていいはずがない。
「婚約とか結婚となると、そう簡単に決めていいものじゃないだろ。せめて農業の方が軌道に乗って、安定した収入を得られるようになってから」
「マスター様は考えすぎですよ。もっと気楽に決めてもいいんじゃないですか?」
見た目小学生のお前に言われると、なんか調子狂うな。
「そうだぞ。お前そうやって、何度か欲しいもの逃してきただろ?」
香苗、お前まで参戦か。
確かに欲しい物があった時、残りの金とか今後の使い道とか考えて保留して、結果としてそれを逃してきた経験は何度もある。
でも、それとこれとは話が違うだろ。
「言っておくけど、そういうのとは違うとか考えるなよ」
こいつ、心読んでないよな?
「おんなじだよ。欲しいのにその場で決断できなくて、何かしら理由を付けて決断を先延ばしにしているだけだ」
ぐっ……。さすがは幼馴染、
「確かに一生のことだから決断できないのは分かるけどさ、グズグズしてたら持ってかれるぞ」
それは……嫌だな。
いくら嫌われている混種とはいえ、物好きはいるだろうし、エリアマスターとの繋がりを求める相手との政略結婚だってありうる。
うん、グズグズしている場合じゃないか。
「香苗」
「なんだよ」
「ありがとな、覚悟ができた」
さすがは幼馴染、こういう時は頼りになる。
となれば、今度の話し合いは直球勝負を仕掛けるか。
エリアスを嫁にくれって。
話し合いに至った理由を聞かれたら、正直に覚悟が無かったと伝えておこう。
「いいって、別に。まあ、どうしても礼がしたいって言うなら? そのエリアスって人の次に孕ませてくれればいいぜ」
「お前な……」
まったく、感心したかと思えばこれだ。
まぁ、香苗らしいと言えばらしいか。
「ということは、新しい部屋を増築しておくべきですね」
うおっ、いつの間にかイーリアが近くにいたよ。
「部屋の増築って、エリアスのか?」
「その通りです。婚約を結んだとなれば、エリアス様はこちらへ住むことになるでしょうから」
「何でだ?」
「嫁入り先の環境に慣れるのと、周囲へ婚約が事実だと知らせるためです」
なるほど、そういうことか。
こっちの世界での風習なんだろうけど、うちは少々特殊だから前者は歓迎だ。
後者は……俺とオバさんの立場を考えての理由だろう。
片や異世界人の男で、片や混種とはいえエリアマスターの娘だもんな。
「分かった。話が纏まったら部屋を増築しよう」
「お願いします。それとちょっと気が早いですが、結婚後はヒイラギ様の部屋で共に過ごすでしょうから、その時には部屋の拡張をすべきかと」
気が早いにもほどがあるぞ。
エリアスはまだ未成年なんだから。
だけど今の部屋は一人用で、そんなに広くないから拡張は必要になるか。
「そうなった場合、空いた部屋はどうするべきでしょうか」
ああ、それがあったか。
部屋の主のエリアスが拡張した俺の部屋に移るから、必然的にその部屋は空いちゃうか。
「大丈夫ですよ、有効活用する案はあります」
……なんでだろう、ちょっと変な事を言われそうな気がする。
アホな案だったらハリセンで引っ叩いて、ついでにデコピンもしてやろう。
「どんな案ですか?」
「エリアス様以外の奥様や、愛人の方々と愛し合う場として使えば良いのです」
どうだとばかりに胸を張り、耳を上下に動かしながらドヤ顔をするイーリア。
その頭をすかさずハリセンで引っ叩いて、デコピンをくらわせてやった。
「何をするんですか!?」
「自分の胸に聞いてみろ」
「でしたら、他にどこで愛し合うつもりですか?」
そりゃあ俺の部屋……って、結婚後の話だから俺の部屋にはエリアスがいるか。
というか、いつの間にか二人以上の嫁と愛人の存在が確定している。
別に嫌じゃないからいいけど。
「必要ですよね? そういう部屋」
くそっ、癪だけどその通りだ。
別の奴の部屋に泊まってもらうという手もあるけど、正妻がそういう扱いなのもどうかと思うから却下だ。
「私、悪いこと言ってないのにぶたれたんですけど」
言っていることは不満が籠っているけど、俺に向けている目は何かを期待している。
昼食や夕食の献立に困った時、あの目を何度も向けられていたから分かる。
あの目は、大好物のコーンチャーハンを強請っている時の目だと。
材料はあるから作ってもいいけど、思い通りになるのはなんか悔しいから、ちょっと仕掛けてやるか。
「そうだな。じゃあ、それなりのお詫びをしないとな」
これから言うのは冗談じゃなく、全て本音だ。
「特にイーリアには、こっちに来てから世話になりっぱなしだからな。それも含めてお詫びをしよう」
多分、イーリアの脳裏には山盛りのコーンチャーハン、それとトウモロコシを使ったいくつもの料理が浮かんでいるだろう。
わくわくした目を向けているけど、悪いがお詫びはそんな物じゃない。
一つ息を吐き、相応の覚悟を持ってイーリアに告げる。
「エリアスとの婚約が纏まったら、第二夫人として婚約しようか」
「……はいっ!?」
おっ、耳の先端がほぼ真上に上がった。
なるほど、心底驚いたときはそうなるのか。
「ちょっ、待っ、私が、第二っ!?」
「こっちの世界の住人じゃ一番付き合いが長いし、色々と世話になっているからな。それくらいの優遇は問題無いだろ」
それに、崇拝の眼差しを向けられるのは苦手だけど、イーリア自身への好感度は高い。
世話になってきたのを除いても、作る飯は美味い、外見も良い、出会った当初の氷のような態度とは真逆のコロコロ変わる表情が見ていて楽しい。
唯一欠点を挙げるとすれば、さっきも挙げたけど崇拝の眼差しくらい。
でも、そんなのは些細な事だ。
「嫌ならいいんだ。嫁入りが確定しているような、雇っている別の誰かを」
そう告げると、真っ赤になった耳を激しく上下させながら頭を下げてきた。
「不束者ですが、よろしくお願いします!」
なら、今度の定休日にイーリアの実家へ挨拶に行っておくか。
「涼、お前がそういうのを普通に言うなんてな」
「それだけこっちの世界に順応してきたってことさ」
ついでに、奴隷でなければお前が第二夫人だったと香苗に耳打ちしたら、顔を真っ赤にして立ち上がった勢いでド派手に転んだ。
さてと、嫁を貰うと決めた以上は、もっと仕事頑張って稼がなくちゃな。




