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第33階層 立ち上げでドタバタするのはどんな仕事でも同じだ

涼「車と甘い物は勘弁してくれ。それと寒いのも」


 定休日明けの午前。

 ダンジョンでの仕事をあらかた片付けた後、新しく開始した副業の農業現場へフェルトを伴って出かけた。


「あの、これはなんでしょうか?」


 持たされた箱の中身をフェルトが尋ねる。


「向こうにいる六人への差し入れだ。今日の朝に食べたのと同じ、育成スペース産のトウモロコシを粉にして作ったパンだよ」

「ああ、あれですか。でも、どうしてわざわざ差し入れをするんですか?」

「こうした労いをしておくのも、労働意欲のためには必要なのさ」


 労働意欲の維持と向上のためには、こうした小さな気遣いも大事だ。


「さてと、元気にやってるかな?」


 寄り道することなく目的の農地に到着すると、三人の奴隷と農業指導者が畑で作業をしている姿があった。

 奴隷のまとめ役も作業に加わっていて、農業指導者と話し合いながら奴隷に指示を出す。


「おっ、やってるな」

「声をかけますか?」

「いや、いい。先に事務室へ顔を出そう」


 畑での作業を横目に見ながら、リフォームされた家屋の一階にある部屋へ入る。

 事務室として使用されているその部屋では、事務員として雇った女性が一人で書類仕事をしていた。

 作業に集中していて気づいていないようだから、こっちから声をかける。


「おう、元気でやってるか?」


 声を掛けると、書類と睨めっこしていた女性――ヴィクトマが顔を上げた。


「あぁっ! すみませぇん、気づかなくてぇ!」


 書類を机に置き、慌てた様子で席を立つ。

 以前に事務員を募集した時は不採用にしたものの、それでめげずにこっちの事務員に応募してきたのを採用した。

 堕天使になった理由は不安視していたけど、仕事そのものはちゃんとやってくれている。


「構わないさ。それだけ仕事に集中していたって事だろ? 悪いことじゃないさ」

「あう……。集中していたというより、まだ慣れていなくて迷っているだけですぅ」

「別に今は時間が掛かっても構わないさ。それよりも丁寧かつ、確実に頼む。どうしても分からなければ、ダンジョンの方へ聞きに来てもいいから」


 こういう時は責任感を持たせてプレッシャーを与えるより、逃げ道を用意しておこう。

 逃げ道が無いと、プレッシャーに押し潰されかねないもんな。


「はぁい、分かりましたぁ」

「うん。それで、奴隷達の様子はどうだ?」

「今のところは問題ありませぇん。農作業の教育も順調ですぅ」


 それはなによりだ。

 人材育成は時間が掛かるからじっくり育てるように言っておいたけど、上手くやっているようだな。


「そうそう、差し入れを持ってきたんだ。フェルト」

「はい」


 応接用のテーブルにフェルトが持ってきた箱を置き、蓋を開けて中身のパンを見せる。


「わぁ、わざわざすみませぇん。ではぁ、他の方も呼んできますねぇ」

「そっちには俺が行く。畑がどうなっているか、直接見て聞きたいから」

「そうですかぁ? ではお願いしまぁす」


 頭を下げるヴィクトマに見送られ、俺とフェルトは畑の方へ向かう。

 畑には作務衣姿の奴隷が三人と農業指導員の女性、そして奴隷のまとめ役の女性が農作業をしている。

 全員がいるのを確認して、その場から五人へ呼びかけた。


「皆、ちょっと集まってくれないか?」


 呼びかけに五人全員が振り向き、作業の手を止めて集まってきた。


「これはヒイラギ殿、こんな格好で失礼します」


 最初に声を掛けてきたのはヴァンパイアのエルミ、二十二歳。

 彼女はアッテムの実家と交流のある奴隷商の娘で、しかもダンジョンで奴隷を指導していた経験もある。

 そのダンジョンは既に攻略され、次の就職先を探しているのを確保した。

 ちょっとネガティブなところはあるものの、統率スキルと指導スキルは持っているし能力はあるから大丈夫……のはずだ、多分。


「ども。わざわざ、こげな所まで」


 複数の訛りか方言が混ざったような口調で話しかけてきたのは、農業指導者として雇ったドライアドのネーナ、十九歳。

 農業指導者を探す際、イーリアの実家経由で紹介してもらったんだけど、彼女はこの土地を紹介してくれたナヅルさんの次女だった。

 特に何か手が回ったという訳では無く、完全に偶然らしい。

 だって挨拶に同行してきたナヅルさんが、俺を見てすごく驚いていたから。

 世間ってのは狭いもんだ。


「ご足労いただき、感謝します」

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「……」


 最後にやって来て頭を下げるのは、ここの専属として買った三人の奴隷達。

 全員が元冒険者で、男が二人の女が一人。

 一人目は角刈りで筋骨隆々な大男、バリウラス。

 正式な名前はバリウラス・フェールン・ワイズマンと言って、地方の貧乏貴族の四男だったそうだ。

 どうせ家を継げないからと体を鍛え、冒険者として活動していた三十半ばの力持ちのおっさん。

 二人目はフェルトの兄弟子だったという、ガルベス。

 貴族の愛人をしていた母を持つ二十後半の男で、狩人として修業の後に訳あって冒険者へ転職。

 フェルトと再会した時は、奇妙な縁だと楽しそうに会話をしていた。

 今回のお供をフェルトにしたのは、この二人を会わせるためでもある。

 そして三人目は無言を貫いている少女で、名前はエリィ。

 貧しい農家出身の三女で、嫁の口もそうは無いからと冒険者になった気の強い十六歳。

 過去に男から襲われかけた経験があり、その際は辛うじて助かったものの、それ以来男に対して強い敵意を持っているらしい。

 だけどここの職員は女性だけだし、仮にバリウラスとガルベスが何かしようとしても、そういったことを禁じるようにして契約を交わしたから問題無い。

 それもあってか指示には従ってくれているし、仕事も手を抜いていない。

 ただ、打ち解けるにはもう少し時間が必要だろう。

 今もジッと睨み続けてるし。


「今日は作業の様子を見に来た。ネーナ、三人の育成は順調か?」

「はい。特にエリィさんは農家出身やから、飲み込みがとってもえぇんです」


 その辺りは経験の差って訳か。

 まあ、焦る必要は無いからじっくりやっていかせよう。


「エルミ、三人の生活は?」

「ヒイラギ殿に指示されたように、キチンと食事を食べさせ、休憩と睡眠も充分に取らせています」

「ならいい。今後の収入を支える大事な人材なんだ、ぞんざいには扱わないように」

「分かりました」


 最初にこんな指示を出した時は驚いていたけど、大事な働き手を丁寧に扱って悪い事は無い。

 こっちの世界には労働基準法なんてものは無いから、雇用主がきちんと管理しないとな。


「ところで、今の作業はまだかかるか?」

「いえ、間もなく休憩に入る予定です」


 それはちょうどいいタイミングだ。


「なら、休憩になったら事務室へ来てくれ。差し入れを持ってきたから、ちゃんと手と顔を洗うんだぞ」

「差し入れどすか? こらぁ、わざわざどうも」


 差し入れと聞いて無表情のエリィ以外、全員の表情が緩んだ。

 さてと、続きは差し入れを食べながら話すとして、先に事務室に戻ってよう。

 ヴィクトマの奴、つまみ食いしてなけりゃいいけど。

 戻ってみたら案の定、つまみ食いをしようとしていた場面に遭遇し、ヴィクトマの額にデコピンを打ち込んだ。

 痛いって泣かれたけど、自業自得だから反省しておけ。

 それからしばし、お預け状態のヴィクトマを監視しながら農作業組が戻って来るのを待ち、全員が事務室に集まって良しを出したら、真っ先に動いてパンにかぶりついた。


「むふぅ! おいひいですぅ」


 こいつ、反省する気無いだろ。


「これが俺達の育てている、異世界の野菜で作ったのか」

「勘違いしないようにもう一度言うけど、これは育成スペースで作った物だ。実際はこれより落ちると思っておけ」


 関心を示すバリウラスに釘を刺して、俺も一口かじる。うん、朝も食ったけど旨い。

 ネーナもエルミは夢中になってかぶりつき、ガルベスもフェルトと喋りながら食べ、エリィは無言でリスかハムスターのように食べている。


「じゃ、食いながらでいいから打ち合わせをしよう。ネーナ、今の野菜の成長具合だと収穫時期は?」

「そうやなぁ。今の調子やと、三ヶ月後にはどれも収穫できるんやないかと」


 三ヶ月後か。やっぱりこっちと元の世界じゃ、成長スピードが違うな。

 さすがに育成スペースで育てるのと比べるのは酷だけど、元の世界に比べると段違いに速いし季節も無関係だ。

 その畑だけど、養蜂用を除く畑用の土地は全体を使っている訳ではなく、三分の一くらいを耕して利用している。

 残る三分の二は時期をズラして三分の一ずつ利用し、その間に残る三分の二は土を休ませる。

 こうすることで、一年を通して安定した供給をするのがダンジョンタウンの農業とのこと。


「分かった、その調子で頼む。見てくれはともかく、品質は出来る限り良くなるようにな」

「承知したばい」

「エルミは何かあるか? 人数は足りているか?」

「いえ、人数は大丈夫です。しいて挙げるのなら、私なんかがお役に立てているのかですね」


 いやいや、役に立ってるって。

 ここにいる奴隷三人の主は俺だけど、普段はダンジョン運営でこっちにいられない。

 だから奴隷のまとめ役を委任する人材は、絶対的に必要なんだ。

 しかもエルミには、ここの責任者も務めてもらっている。

 最初は最年長だからって理由で頼んだんだけど、思いのほか優秀だった。

 ネガティブ思考のせいで本人が自覚していないだけで、能力は高いんだよな。


「エルミは役に立ってるぞ。役に立っていなかったら、責任者なんて任せていないって」


 選出方法こそ年齢という点も含めて消去法だったけど、実力が確かなのはこれまでの仕事ぶりで分かる。

 だから彼女には、もっと自信を持ってもらいたい。


「わ、私が、役に立っているのですか?」

「勿論だ」

「うぅ……。お世辞だとしても嬉しいです」


 お世辞じゃないっての!

 はあ、こいつのネガティブさは想像以上に厄介だな。

 まぁいい、とにかく仕事の話を続けよう。


「じゃあ次は、この前見せてもらった販売計画についてだ。販売責任者は帳簿の管理もあるから、ヴィクトマが事務と兼任なのは構わない。だけど、販売のために新たな人手を雇う部分にちょっと意見がある」

「ほえ? なんでしょう?」


 俺は計画書通りでいいと思っていたけど、単に売るだけならアルバイトでいいんじゃないかって香苗に言われた。

 通ってもらう必要こそあれど、住み込む必要が無くて難しい業務にも関わらない売り子なら、それでも良いんじゃないかとイーリアやラーナからも賛成された。

 そういった経緯を説明し、意見を求める。


「という訳で、売り子は未成年者による手伝いはどうだろうか」

「いいですね。その方が経費を押さえられますし、将来の人材育成や人材発掘にも繋がります」

「うちも賛成するとよ」

「私もですぅ」


 おお、好感触だ。

 ならこれでいこう。


「じゃあ、そういうことにしよう。採用者は計画通り四名で、交代で休憩をとらせながら働かせるように」

「分かりましたぁ」

「次に募集と面接についての日取りだけど、収穫時期に合わせて調整するとして」


 それからしばらくは仕事の話をして、引き上げたのは昼をちょっと過ぎたぐらい。

 道中で適当に昼食を食べた後にダンジョンへ戻ると、戸倉とユーリットが地下へ向かう姿が見えて、その後にローウィが司令室から出てきた。


「あっ、主様。おかえりなさい」

「ただいま。戸倉とユーリットが地下へ行ったけど、何かあったのか?」

「いえ、侵入者を捕獲しただけです」


 なんだ、そんなことか。

 どんな奴なのかローウィに聞いてみると、捕まえたのは男女三人ずつの冒険者パーティーとのこと。

 装備品がなかなかの物らしいから、鑑定と解析の結果がちょっと楽しみだ。

 そんな事を考えながら司令室に入り、留守中の報告を聞いて倒された魔物の補充をしていると、ユーリットが報告書を持ってきた。


「マスター様、装備品の鑑定結果です。解析は現在アッテムさんが行っていて、後ほど報告書を提出するとのことです」

「うん、ありがとう」


 報告書を受け取って内容を確認し、いくつかにチェックを入れてユーリットへ返す。


「これをいつもの通りに頼む」

「チェックを入れた物は使うため、装備品保管用の収納袋へ。他は売却するためマジックバッグに入れるんですね」

「それと」

「分かっています。ローウィさんの確認を取るんですね」


 うん、分かっているならそれでいいんだ。

 ローウィには気になる箇所があれば、明日の売却前までなら言いに来るように言ってある。

 そうして厳選した装備品は、全てじゃないけどダンジョン内の魔物の手に渡り、冒険者と戦うために使っている。


「マスターさん、鑑定結果の、報告書です」

「どれ?」


 へぇ、六人とも身体能力は高いし、スキルの数が多くて熟練度も高い。

 その分、評価額の見積もりも高いから良い収入になるな。


「全員売却だ。働き手の数は足りているからな」


 これで今月の収入は、先月のをちょっとだけ上回るかな?


(利益向上が確認できたら、皆への給金の分を除いた二割をダンジョンの魔力に変換して、残りは貯蓄と生活費に回すかな)


 なんだかこういうのを考えていると、運営をしているって実感が湧いてくる。

 これで周りから、嫁にどうだという娘やなんかの紹介が無ければいいんだけど……。

 まぁ、こっちの事情を考慮すれば無理な話か。


「どうかしましたか? 主様」

「ん? いや、何でもない。どうした?」

「先ほど渡された、装備品のチェックについてちょっと」


 分かった、話を聞こう。

 この後、さらに三つの装備品を手元に残しておくことが決まった。



 ****



 翌朝、ダンジョンギルドへ売却に向かうラーナとフェルトとリンクスを見送り、魔物達の指導へ向かう。

 今から指導するのはランク三になって召喚できるようになった、ミストスライムって魔物だ。

 周囲から水分や湿気を吸収して霧を作り出せる能力を持っているから、足場が水浸しの階層へ配置して霧を発生させて侵入者の視界を奪っている。

 これによって潜んでいる魔物達が余計に分かり辛くなり、奇襲の成功率が上がっただけでなく、精神的な消耗を早めたり進行速度を低下させたりといった効果も出ている。


「でもお前達の能力は、他にも使い道があると思うんだ。例えば、侵入者から直接水分を吸収するとか」


 それが可能なら、侵入者を干からびさせて倒すことができるんじゃないかな。


「ピギィ?」


 当の本人達も半信半疑か。

 だからこそ、実験あるのみだ。


「とりあえず、ここに用意した猪で試してみろ」


 指導の手伝いをしているローウィに、昨夜侵入して倒した猪を運んできてもらう。

 さあ、どうかな。


「ギュピッ」


 ミストスライムの一体が前に進み出て、猪の体に引っ付く。

 しばらくすると猪の体が干からびていき、やがてミイラのようになった。


「よし、成功だ。ほら見ろ、上手くいったぞ」


 結果が出た事でミストスライム達が騒ぎ出す。

 使役スキルの効果で伝わってくるのは、自分達でも侵入者を倒せると分かって張り切っている気持ち。

 うんうん、良い感じに士気が上がっているな。

 さてと、そうなると問題は水分の吸収に時間が掛かる点か。


「じゃあ吸収速度を上げる訓練をしよう。水を染み込ませた布を用意するから、まずはそれで水分を吸い取るのに慣れようか」

『ピギャァァッ!』


 という訳で、急遽侵入者から入手して処分待ちだった衣服を持って来て、それを育成スペースの水場から桶で汲んだ水で濡らす。

 それを地面へ置くとミストスライムが群がり、交代で水分を吸収する訓練を開始した。


「そこ、今は早く吸うよりも確実に水分を吸いきれるようにしろ」


 指導を挟みながら訓練を見守っていると、リンクスが育成スペースにやってきた。


「あっ、いた。マスター、マスターの知り合いだと思われる方の情報を入手しました」

「なんだと?」


 誰だ? 野球部の藤井か学級委員長の関谷か。

 それともバスケ部の松川か?


「ギルドのルエルさんが言うには、第七エリアで異世界人と思われる方が二人、ダンジョンで捕まったそうです。名前はヤジマとハマダっていうそうです」


 あいつらかよ!

 矢島は俺達がいた世界では有名な財閥の御曹司で、浜田は理事長の孫娘だ。

 どっちも親の立場や権力を利用して好き勝手していたから、クラスどころか学校中で嫌われていた。

 向こうでは何事にも無関心だった俺は大して絡まれなかったけど、あいつらのせいで退学や休学した生徒が何人もいるって噂があった。

 だけどあくまで噂止まりだったから、教師達でさえ対応に苦慮していたっけ。


「そいつらはどうなってる?」

「そこまでは分かりません。ですが異世界人だと確定すれば、子孫を残すために使われるかと」


 だろうな。

 前にギルド職員から聞いた話だと、俺が捕まえて売った奈良原と渡部もそういう状況らしい。

 しかし、あのプライドの高い二人がそんな状況とはね。

 こっちでは親の立場も権力も通じないから、どんな生活を送っていたのやら。

 まあいいか、もう俺には無関係なんだから。

 一応ミストスライムの指導を終えた後、香苗達にもこの事を伝えたけど、相手が相手だからか先生ですら反応は薄かった。

 その後で書類を保管してある収納袋の一つの中から、一枚の書類を取り出す。


「矢島と浜田……と」


 取り出した書類は元クラスメイトの名簿のような物。

 これまでに確認した奴に印を付け、どうなっているのかを記載してある。

 まず最初に出会った大和田は、今もあの豚の奴隷として遊ばれているようだ。

 次いで再会した香苗達は俺の奴隷として働き、その次の奈良原と渡部は奴隷として売り飛ばして、ミリーナからの情報で桜田が地上で冒険者ギルドの職員をしているのを知った。

 それ以外にも、ダンジョンギルドの知り合いやアッテムの実家や情報通のラーナによって、何人かが捕まったという情報を入手している。

 ここ第五エリアだと、テニス部の川上が捕まっているらしい。

 異世界人だと知られていないから普通の奴隷として買い取られ、闘技場の飲食店で働かされているそうだ。


「で、別のエリアでさらに二人……」


 喧嘩っ早くて腕っ節の強かった須藤と、陸上部所属で俊足が自慢の相馬。

 この二人が別のエリアで奴隷になっていて、しかも異世界人だと知られていて大変な目に遭っていると、ダンジョンギルドでルエルやミナから聞いた。

 これで確認が取れたのは、俺も含めて十三人か。

 先生を含めて三十七人いるクラスの情報は、まだ半分以上が埋まっていない。


「まだ見つかっていない奴らは、今頃どこで何をやっているんだか」


 冒険者になった奴は既に死んでいる可能性もあるし、桜田のように働いている奴の情報は手に入るのかも分からない。

 今回の矢島と浜田のようなのはともかく、交流のあった面々は無事であることを祈る。

 そう思いつつ名簿を片付け、司令室での仕事に入った。

 ダンジョン内には三組の冒険者パーティーがいて、その内の一組が新しく召還したフロアリーダーの魔物と戦っている。


『くそっ、どういう事だ。前に別のダンジョンで戦ったのより、ずっと強いじゃないか』

『知らないわよ。とにかく防御魔法を早く!』


 戦っているフロアリーダーはシャドーガーゴイルっていう、悪魔系統の魔物。

 近接戦闘もなかなかだけど、影魔法を使っての死角からの攻撃が上手い。

 冒険者自身の影から黒い刃状の魔法を放ち、避けられはしたけど大怪我を負わせた。

 これだけの能力に加えて従魔覚醒の影響もあるから、生半可な強さじゃない。

 能力の数値でだけならランク七くらいの強さに相当するって、前にラーナが言ってたっけ。

 そうこうしているうちに戦闘が終わり、冒険者はシャドーガーゴイルの影魔法と鋭い爪の餌食になった。


「アビーラ、今の戦闘データを纏めておいてくれ」

「うっす!」


 さてと、結構魔力も溜まって余裕があるし、そろそろ居住部のグレードでも上げようかな。

 前みたいに急にやって驚かれないよう、皆に伝えておかなくちゃ。

 通達した後に居住部のグレードを上げたら、ドラム缶レベルだけど遂に風呂が備え付けられた。

 勿論、一番風呂はダンジョンマスター特権で俺がもらった。


 名前:ヴィクトマ

 種族:堕天使

 性別:女

 スキル:鑑定 解析 解呪



 名前:エルミ

 種族:ヴァンパイア

 性別:女

 スキル:裁縫 統率 指導



 名前:ネーナ

 種族:ドライアド

 性別:女

 スキル:農耕 料理



 名前:バリウラス・フェールン・ワイズマン

 種族:人間

 性別:男

 身分:奴隷

 スキル:礼儀作法 算術 剣術【封】 身体能力上昇



 名前:ガルベス

 種族:人間

 性別:男

 身分:奴隷

 スキル:弓術【封】 解体 潜伏 索敵【封】 採取



 名前:エリィ

 種族:人間

 性別:女

 身分:奴隷

 スキル:農耕 剣術【封】

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