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第31階層 緊急事態の後でも仕事は待ってる

涼「……お疲れさま」


 とんでもなく強い化け物がダンジョンに侵入した夜が明けた。

 戦闘終了後はエマージェンシーシフトの解除、地下二階層に準備していた魔物達の警戒態勢解除、化け物に倒されて食われた分の魔物の召喚、化け物が食わずに吐き出した魔心晶の回収、今回の件の報告書作成、そして相打ちしたバイソンオーガと化け物の死体回収と大忙しだ。

 特に辛かったのは、相討ちしてまで化け物を倒してくれたバイソンオーガの死体が、育成スペースへ運び込まれた時だった。

 左腕は肘から先が無く、右肩と腹部には穴が開き、両足にも抉られた痕があって、魔面・蟻走の破片が所々に刺さっている痛々しい姿。

 それを、こいつの嫁さんに見せなきゃならなかったからだ。


「アァァウッ、アァァッ」


 子供の顔も見ずに死んだ夫に涙する嫁さんを前に、何も言えなかった。

 強力な侵入者に怯むことなく戦って刺し違えたと言えば、聞こえはいいかもしれない。

 だけど嫁さんからすれば、何で生きて帰って来なかったんだと思っているんだろう。

 ダンジョンマスターの立場から見れば立派な最期でも、嫁さんからすれば無事な帰還だけが望みなんだから。

 魔物と意思疎通が取れる使役スキルがある俺には、嫁さんの悲しみを感じ取る事ができる。

 だから余計に、どうすればいいか分からず、黙って一礼だけして飼育スペースから去った。


「あぁ、くっそ」


 こういう時、上に立つ立場ってのが煩わしくなる。

 こんな時はなんて言うべきなのか、どう振舞うべきなのか。

 それが分からないから、逃げるようにその場を去る事しかできなかった。


「こういうのを、正解が無い問題って言うんだろうな」


 こっちがどんな対応をしようと、相手の気持ちや感情で全てが決まるから正解なんて存在しない。

 相手が魔物でも同じだ。魔物達だって俺達と同じように、考えたり感情的になったりするんだから。


「先生、難しいですね、人間関係って」

「急にどうしたのっ!?」


 近くにいた先生に軽く愚痴ったけど、先生は魔物の被害数計測でそれどころじゃなかったみたいだ。


「ヒイラギ様、おはようございます」

「すみません、寝かせてもらっちゃって」


 ようやく事後処理が終わりそうになったタイミングで、戦いが終わった後にすぐ仮眠させたイーリアとリンクスが起きてきた。

 この二人には今日から入るアビーラとラーナを迎えに行ってもらうため、半ば強引に仮眠させた。

 寝不足状態で迎えに行って、書類に不備があったら大変だからな。


「気にするな。こっちの方はなんとかするから、新人の対応を頼む」


 エマージェンシーシフトを発令した後、翌朝からのシフトをどうするかは既に決めてある。

 制作しておいたマニュアル通り、交代で仮眠を取りながらのシフトを組んでおいた。

 ただ、今日はアビーラとラーナを迎えに行くのと、その二人の研修もあるからシフトがちょっとキツめだ。

 その分、夜勤開始時間を早め、眠りに就く時間を早めにしておいた。


「悪いな、手続きとか押し付けて」

「気にしないでください。正規の雇用者との契約とダンジョンギルドへの申告なら、委任状があればギルドから派遣された私で対応可能ですので」


 そういう制度があって助かるぜ。

 ともかく、アビーラとラーナの方はイーリアとリンクスに任せておこう。


「お待たせ、朝ごはんできた」


 時間が無いから戸倉にこっちへ持ってきてもらった朝飯は、さっと食えるスープかけ飯。

 そいつを流し込むように数分で食い終え、報告書のチェックを続ける。


「もうちょっと味わってくれてもいいのに」

「悪い、今日は本当に時間が無いんだ」

「根を詰めすぎるのは良くない。終わったらしっかり休んで」

「分かってるって」


 しっかり休まなきゃならないのは分かっているけど、今だけは見逃してくれ。

 それに今日から入る二人が仕事を覚えてくれれば、同じ事が起きても負担は減る。

 そう考えると、今回の採用の方向性は正しかったんだなって思う。

 提案してくれたイーリアには、改めて感謝しよう。


「じゃあ皆、そろそろ朝の連絡会をしよう。冒険者への対応はそのままでいいから、聞いてくれ」


 報告書のチェックを終え、いつも通りの連絡会を始める。

 伝える内容は、今日からアビーラとラーナが加わって仕事の研修に入ること。

 昨夜のエマージェンシーシフトの関係で変化した、今日のシフトについて。

 それと、あの化け物について。


「ユーリットが解析して、まとめてくれた報告書がここにある。全員、目を通しておいてくれ」


 以前に調べた時はまだ完全に習得できていなかった解析スキルを、数日前にユーリットは習得した。

 お陰でアッテム以外に解析を任せられるようになったから、熟練度を向上させるために解析を頼んでおいた。


「誰か、他に連絡事項がある奴はいるか?」


 呼びかけに反応する声も挙手も無い。


「じゃあ連絡会は以上だ。今日の勤務はちょっと辛いかもしれないけど、なんとか頑張ってくれ」

『はい!』


 返事と共に解散し、それぞれが仕事や仮眠に入る。

 アビーラとラーナを迎えに行くまで時間があるイーリアに司令室を任せて、俺はローウィと共に育成スペースへ向かう。

 戦力補充のために召喚した魔物達の指導をして、従魔覚醒の影響を与えておかないとな。

 バイソンオーガの嫁さんのほうは……夫の亡骸の前で腹を擦って落ち込んでるか。

 あいつが何かと世話していた鴨達が周囲に群れて、動かないバイソンオーガに戸惑っている。

 駄目だ、まだどう対応すればいいか分からない。

 ともかく今は、新しく召喚した魔物達の指導に集中しよう。


「新入りは集合。これより、種族別に指導をする」


 育成スペースで指導できる魔物を先に指導し、後をローウィに任せたらキラーアントやロックスパイダーなんかを連れて地下二階層の通路へ移動して指導に入る。


「まずはキラーアント、天井に張り付いてだな」


 死んだ奴らの代わりが急にできるなんて考えてないから、ちゃんと育ってくれよ。

 ある程度の指導を終えて急ぎ足で司令室に戻ると、ちょうとイーリア達が出発する時間だった。


「悪いな、イーリア。ギリギリになって」

「いえ、元々余裕を持って出発する予定でしたので、まだ時間は大丈夫です」


 本当によくできた助手だよ、崇拝癖を除けば。


「では行って参ります」

「ああ、頼んだぞ」


 イーリアとリンクスが新人を迎えにダンジョンギルドへ向かうのを見送り、司令室でいつもの席へ着く。


(あぁ、やっと落ち着いたか)


 昨夜とさっきまでの忙しさに比べれば、普段のダンジョンの仕事はまだ大人しい方だ。

 さてと、今のうちにあの化け物の解析結果にもう一度目を通しておこう。




 名称:アンノウンオーガ 新種

 名前:なし

 種族:オーガ

 スキル:身体能力上昇 火属性付与

 種族スキル:触指しょくし 貫硬指かんこうし 防膜障壁ぼうまくしょうへき

 固有スキル:死食改


 スキル詳細


 火属性付与:自分自身、または武器に火の属性を付与する


 種族スキル詳細


 触指:指を触手のように伸ばして操る

 貫硬指:指を硬化させ、貫通効果を持たせて伸ばす

 防膜障壁:頭部を守る膜と同じ形状の防御壁を展開する




 アンノウン、つまり正体不明。

 オーガなのは間違いないけど、完全に未知なオーガ。

 見た目や種族スキルだけでなく、能力値が通常のオーガを遥かに上回っている。

 従魔覚醒スキルのような、能力を爆発的に上昇させるスキルも無いのにこれほど強い理由は、こいつの固有スキルにある。




 固有スキル詳細


 死食改:死体を食べることで能力値が上昇

     ただし死体に宿る怨念や恨みといったものも蓄積される

     一度に多数の死体を食べると、心身に悪影響の可能性有り




 アンノウンオーガの能力が異常に高いのは、これによるものだろう。

 それにしても、どれだけの魔物や人間を食ったんだ。

 報告書の考察欄によると元々普通のオーガだったのが、このスキルの過剰使用によりアンノウンオーガへ変化したのではないかと書かれている。

 そう、進化じゃなくて変化なんだ。こいつはオーガの上位種族じゃなくて、あくまでオーガの延長線の魔物。

 それがここまで強くなるだなんて、アンノウンオーガになる前はどんな奴だったんだ?


(今となっては知る由もないけどな)


 第一、知ったからってどうって事も無い。

 それよりも今は、アンノウンオーガの死体の処理を決めよう。

 パラライズスネークに痺れさせられ、ロックスパイダーに襲われている冒険者を眺めながら処理の方法を思案する。

 真っ先に思いついたのはゾンビ化だけど、頭部を貫かれているからゾンビ化することができない。

 頭を潰せばゾンビを倒せるのと同様、頭部が無い死体はゾンビにできないんだよな。

 残るは魔物の餌として食わせるか、武装化するかだ。


(個人的には武装化したいけど、どんな武器になるか想像できないな……)


 過去の武装化の実験データ通りなら、形状は想像通りにできても効果までは思い通りにならない。

 実際、魔面・蟻走や魔義手・鎌居太刀は微妙な出来だった。

 ボイスマーメイドに与えた二つの魔鐘は成功例だけど、調べるまで効果は分からなかった。


(でもやってみたいんだよな……)


 不安ではあるけど、同じくらい興味もある。

 あんな魔物を武装化したら、どんな武器になるのか見てみたい。


(……やってみるか)


 結局好奇心に負けて、やってみることに決めた。

 使えないのなら売却して、危険すぎて使うことも売ることも躊躇するなら、収納袋の中へ永久に封印しよう。


(そうだ。バイソンオーガの死体はどうしよう)


 できればゾンビ化や武装化をして引き続き戦力として活用したいけど、それを嫁さんがどう思うかな。

 ダンジョンマスター権限で強行することもできる。

 でもそれを嫁さんが良しとしなかったらと考えると、強行するのは避けたい。

 となると、一度嫁さんと話した方がいいか。

 気持ちが重いけど、強行したなくない以上は避けられないと割り切ってやるしかないか。

 とりあえず今は、侵入者の持ち物を回収するよう指示しておこう。

 それからしばらくは普段通りに侵入者への対応を続け、そろそろ昼辺りという頃、イーリアの案内でアビーラとラーナが司令室へ現れた。


「こちらが司令室になります」

「うわっ! 凄えっす!」


 興奮した様子のアビーラに対して、ラーナは冷静に周囲を見渡している。


「イーリア、ご苦労だった。ようこそ、俺のダンジョンへ」

「ど、どうも! この度は採用してくれて、ありがとうございまっす!」


 緊張しすぎだアビーラ。

 口調もお辞儀もガッチガチだぞ。


「今回は採用していただき、誠にありがとうございます。誠心誠意職務に務めますので、何卒よろしくお願い申し上げます」


 ラーナは堅いって。

 雇い主と雇用者とはいえ、顔見知りなんだからもっと気楽に接していいんだぞ。


「こちらこそよろしく。イーリア、もう居住部の案内は済んだのか?」

「はい」

「なら早速で悪いけど、ここでの仕事の内容を教えてやってくれ」

「承知しました。それとこちらは、保管用の雇用契約書です」

「ん、分かった」


 差し出された保管用の雇用契約書を受け取り、ローウィ達の雇用契約書と一緒にして保管しておく。

 こういった書類とかの保管には倒した冒険者から頂戴した収納袋を使い、木製のタグを付けて中身を記録している。

 収納袋を使うと場所を取らないから、保管しやすくて助かるな。


「な、なんですか、あの魔物達の戦い方や見事な連携は!?」


 おっ、ラーナがモニターの戦闘を見て驚いている。


「うおぉぉっ! 魔物ってあんな風に戦うんすか!」

「いえ、叔父上のダンジョンにいた魔物は、あのような戦い方などしていませんでした」

「ピッグン様のダンジョンどころか、私が研修に赴いたダンジョンや過去のダンジョンの記録にも無い、ヒイラギ様だからこその成果です!」


 確かにそうだけど、なんでイーリアが胸を張ってドヤ顔をするんだ。

 あっ、なんかラーナの目がキラキラしてる。

 ひょっとして、イーリアと同じ眼差しが向けられるんだろうか。


「凄いです。魔物にこんな戦い方をさせることができるなんて……」


 ちょっと警戒している中で向けられたラーナの眼差しは、崇拝じゃなくて尊敬のものだった。

 これならまだ良いかな。


「ヒイラギ様、報告書を使って説明をしてよろしいでしょうか」

「ああ、いいぞ」


 確認を取ったイーリアは、各種の報告書を収納袋から取り出し、それを読ませながら説明をしていく。


「動物の骨を組み合わせ、パンプキンゴーストの死霊魔法で生み出された新種のスケルトンが二体」

「このゾンビも新種っすね。しかもなんすか、この感染ってスキルは」

「加えて魔物達に、これほどの訓練やらせているなんて……」

「しかもそれで、新しいスキルを習得しているっす!」


 初々しい反応だな。

 以前のイーリア達を思い出すぜ。


「うわっ、侵入者の数や売却額をこんなに細かくまとめているんっすね」

「だからこそ、新しい事務職の方が必要なんです」


 言っておくけど、報告書の種類はまだまだあるぞ。

 案の定、ダンジョン関係以外にも副業に関する報告書や実験関係に関する報告書も見せられ、二人は目を白黒させていた。

 特にダンジョン運営に関わっていた経験のあるラーナは、目を見開いて何度も報告書を読み返している。


「見ての通り、色々と記録を取ったり報告書を書いたりしているから、二人には頑張ってもらうぞ」

「うっす、頑張りまっす! 俺、絶対にお役に立つっす!」


 気合いの入ったいい返事だな。

 さて、ラーナの反応は?


「ヒーラギさ……いえ、マスターヒイラギ。私はこれまでの十六年の生涯で、一番の衝撃を受けました」


 なんだその呼び方は。今までに無い新しいタイプだな。


「あなた様の下で働ける事を誇りに思い、お役に立てるよう精進します」


 精進するのは良いことだけど、もっと気楽に構えていいぞ。

 アビーラみたいに気合いが入っているのはともかく、あまり堅苦しいのは雰囲気的に好きじゃない。


「分かったから、もっと肩の力を抜いてくれ。気軽に接してくれて構わないんだぞ」

「そういう訳には参りません。お仕えする以上は、相応の態度というものが」

「ラーナさん、ここではそういうのは無用ですよ」

「……はい?」


 言葉を遮ったイーリアからの指摘に、ラーナは呆気に取られた。

 そういえばラーナの前、というか外ではこっちでの一般的な上下関係で振舞っていたから、内部も同じと思い込んでいるのかな。


「今日一日働けば分かるさ。じゃあイーリア、引き続き頼む」

「承知しました」


 さてと、そろそろアッテムが仮眠から起きて来る頃だろうし、気は重いけど育成スペースに行く心の準備をしておこう。

 でないとバイソンオーガの嫁さんに、面と向かって死体の処理の話をできる気がしない。

 それから少しして、起きてきたアッテムに司令室業務を引き継いだら、重い足取りで育成スペースへ向かった。


「……そいつ、どうしてやる?」


 バイソンオーガの亡骸の前に座っている嫁さんに、死体の扱いを率直に尋ねた。


「ブォ……」


 嫁さんはボロボロになった魔面・蟻走を抱え、悲しそうな目でバイソンオーガの亡骸を見ている。

 空気が重いから、早く返答してくれ。


「ブオゥ」


 しばらくバイソンオーガの亡骸を見つめた嫁さんは、こっちに頭を下げながら返答した。

 使役スキルにより、何を言いたいのかが伝わってくる。

 武装化して、生まれてくる子供に持たせてやってくれと。


「いいんだな、それで」


 確認を取ると、再度頷いた。


「分かった」


 そうと決まれば早速取り掛かろう。

 魔心晶のある心臓付近を切開して、そこに触れて形状をイメージしながら魔力を流す。

 バイソンオーガの体は光に包まれ、イメージした通りの形状をした武器になった。


「できたぞ。こんな風にした」


 完成した武器は、バイソンオーガが使っていたのと同じ斧状の武器。

 柄の部分をあえて長く作り、先端には斧の刃とは別に、突きに使える細長い棘が付いている。

 この武器を嫁さんに見せてやると、望みを叶えてくれてありがとうと頭を下げられた。

 なお、この武器は子供がある程度成長するまでは、こっちで預かる運びになった。


(こっちはどうにか済んだか。さて、次は……)


 続いて育成スペースの端に放置されている、アンノウンオーガの死体の下へ向かう。

 こいつを武装化したら、どんな武器ができるんだろうか。

 一応形状は剣にするつもりだけど、魔剣・腐滅以上に禍々しい見た目になるんじゃないかと思う。


「……とりあえず、やってみるか」


 切開して魔心晶を露出させると、通常と違って歪な形状をしていた。

 それでも魔心晶には違いないから、触れて魔力を流していく。

 さっきのバイソンオーガと同じく死体は光に包まれ、一メートル半はある巨大な剣になった。

 いやいや、デカすぎだって。

 こんなに大きいと、よほどの大きな魔物でないと振れないぞ。

 刀身はやや厚く、呪われているんじゃないかと思えるほど禍々しい文様が刻まれていて、柄のところには呪われそうな宝石が埋め込まれている。


「アンデッドを使った訳じゃないから、呪われてはいないだろうけど……」


 だとしてもどんな効果なのか気になるから、早く調べてみよう。

 近くにいたオークに協力してもらい、どうにか収納袋へ入れたら司令室へ移動。

 事情を説明して魔石盤を借り、武器の詳細を調べてみた。

 まずはバイソンオーガを使った斧は……。




 名称:魔斧槍・魂豪こんごう

 属性:土

 品質:中品質

 製作者:ヒイラギ・リョウ

 効果:この武器を装備すると身体能力を上昇させる

    装備中は筋力と体力が通常よりも鍛えられやすくなる

    魔力を流せば刃の切れ味と槍の貫通力が上昇する




 へぇ、体力と筋力を成長しやすくする効果があるのか。

 おまけに魔力を流せば性能がアップするとはね。

 さてと、もう一方の剣は……。




 名称:魔剣・災襲血閃さいしゅうけっせん

 属性:火

 品質:超品質

 製作者:ヒイラギ・リョウ

 効果:刀身に付着した血液は剣へ吸収される

    その量に応じて切れ味と強度と持ち主の身体能力を強化

    刀身は持ち主の意思で伸縮自在、変幻自在に操ることが可能

    柄の宝石に魔力を流せば、防御壁が展開される

    また、刀身に魔力を流せば炎を纏わせることも可能




「ちょっと待てえぇぇっ!」


 思わず叫び声を上げてしまった。

 本当になんだ、この効果は。

 血液が吸収されるのはともかく、それによって性能だけでなく持ち主を強化するだと?

 しかも文面からして、一時的にという訳じゃなさそうだ。


(こんなの、誰に渡すかな……)


 もしもロードンに持たせたら、どうなってしまうんだろう。

 ただでさえ狂化なんて危なっかしいスキルもあるのに、こんな物まで持たせたら……。

 だけど、ダンジョン防衛という意味では有りだ。

 魔剣・腐滅のように意識を乗っ取られる訳じゃないし、切り札をより強化すると考えればこれ以上の組み合わせは無い。

 あいつは体がデカいから、あんな大剣でも平然と振れるだろうし。


「あの、どうかしたんですか?」


 不安そうな表情でユーリットが声をかけてきて、ようやくさっきの叫びで皆が驚いているのに気づいた。

 研修中のイーリア達も、何事だろうかと顔を向けている。


「悪い。さっき作った、新しい魔剣の効果に驚いてな」

「「新しい魔剣ですかっ!?」」


 うわぁ、イーリアとラーナが揃って目を輝かせてるし。

 どんな反応するかは目に見えているけど、どうせ報告書にして皆が見られるようにするんだし、教えておくか。


「昨夜侵入してきたアンノウンオーガを魔剣にしたら、こんなのになった」


 魔石盤を表示させたまま手渡すと、やっぱりというか何と言うか、全員が驚いていた。

 さてと、魔剣をロードンへ渡しに行くか。


 名前:ラーナ

 種族:豚人族

 性別:女

 スキル:短剣術、俊敏上昇、看破、鑑定、解析、算術



 名前:アビーラ

 種族:ドワーフ

 性別:男

 スキル:鍛冶、運搬、装飾、彫刻

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