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第28階層 二回目の面接官

佐藤「学生時代はサークル側で夏と冬の祭典に出てました」


 新しい事務方の人員を雇うための面接日がやって来た。

 面接用にダンジョンギルドから借りた一室の扉を小さく開け、待合室の様子を確認すると、緊張を解そうと深呼吸したり肩の力を抜くために何度も肩を上下させたりしている。

 今回の面接は前回同様、到着した順で受けてもらう。

 顔見知りだとラーナが五番目でヴィクトマが七番目だ。

 その様子を確認したら扉を閉め、一緒に面接官をするイーリアとアッテムの方を向く。


「さっ、もうすぐ面接開始だ。アッテム、心の準備は大丈夫か」

「は、ひっ」


 大丈夫じゃなさそうだ。

 だけど気持ちは分かる。

 前に面接した時に実感したけど、面接する側も緊張するんだよな。


「アッテム、落ち着くまでは気になった点を尋ねる程度でいい。必要な質問は俺達でやるから」

「ひゃ、ひゃい」


 とりあえずはこれでいくしかないか。

 無理に質問させて自滅したら、アッテムのような性格だと後に響きそうだし。


「じゃあ、そろそろ始めるか。イーリア、呼んでくれ」

「はい。最初の方、どうぞお入りください」


 さてと、二度目の面接官に望もうか。

 そう意気込んで望んだものの、一人目から四人目まで連続でハズレだった。

 書類の上では問題無いと思ったんだけど、直に会うとやっぱり違う。

 一人目は年上だからって偉そうな態度と上から目線で、自慢話や机上の空論みたいな話ばかり。

 二人目は緊張からか上手く喋れず、アピールそのものが成立せず。

 三人目は緊張こそしていなかったが、俯いてボソボソと小声で喋り、こっちが指摘しても声量は上がらず顔も上げないから、仕事の能力以前にコミュニケーション能力に問題があると判断した。

 複数人との共同生活を強いられるダンジョン運営で、コミュニケーション能力に問題がある奴は雇いたくない。

 書類の上での能力はいいと思っただけに、ちょっと残念だ。

 四人目はというと、あらかじめ作った解答を述べるだけ。

 だからちょっと不意を突いた質問をしたら、化けの皮が剥がれて自滅した。


「今の方も駄目ですね。突発的事項にも弱そうですし」

「何が起きるか分からないダンジョン運営で、そういうのは雇いたくないな」

「じゃあ、不採用、ですね」


 まだ六人残っているとはいえ、この調子で大丈夫だろうか。


「では次の方、どうぞ」

「はい」


 さて、いよいよ知り合いの登場か。

 彼女なら大丈夫と期待したい。


「ラーナと申します。本日はよろしくお願いします」


 呼ばれたラーナは入室して扉を閉めると、落ち着いた口調での挨拶と丁寧なお辞儀をした。

 着席を促して座る姿勢も、背筋がピンとしてしっかりしている。


「まずは、当ダンジョンを志望した動機をお願いします」

「以前に別のダンジョンで勤務していたので、その際の経験を活かせればと思ったのと、こちらのダンジョンが今後成長をすると見込んで応募させていただきました」


 どんな形であれダンジョン勤務経験者なのは、プラス要素だ。

 だけどそれだけで採用と決める訳にはいかないから、もっと話を聞かないと。


「今回は事務員の募集なんですが、以前の職場では護衛見習いをされていたそうですね」

「はい。事務員は人手が足りていたので、一つとはいえ戦闘向けのスキルを持っていましたこともあり、人手の足りない護衛の方へ回されていたんです」


 スキルの割に護衛へ回っていたのは、そういうことか。

 だとしたら勿体ないな。いくら人手が足りているからって、彼女を事務方に使わないだなんて。


「ですが見習いの下っ端ということもあり、護衛以外の雑務も一通り経験しています」


 だからダンジョンギルドへ顔を出して、売却とかをしていたのか。

 護衛の割にはギルドで顔を合わせていたから、ちょっと不思議だったんだよな。

 じゃあここらで一つ不意打ちを。


「奴隷の扱いついて、君自身はどう考えている?」

「大事な労働力ですので、無下に扱って労働に対する意欲を失わせないようにしたいです」


 虚を突かれて戸惑う様子も無く、冷静に返したのは評価できる。

 イーリアも頷いているから、良い印象を与えるための嘘って訳でもなさそうだし、これならうちでの奴隷の扱いにも馴染めそうだ。


「では次に」


 さらに質問を重ねて面接は終了し、先の四人よりずっと好印象を残してくれた。

 おまけに護衛以外の仕事の経験もあるから、十分戦力になってくれそうだ。

 それともう一つ、終盤になってようやくアッテムが質問に参加してくれるようになったのも、収穫と言えるだろう。


「この後の五人次第だけど、ラーナは現時点では採用候補だな」

「そうですね。条件面にも不満は無さそうでしたし、看破スキルにも反応はありませんでした」

「つ、次は、もっと質問、したい、です」


 その意気だアッテム。お前はもっと張り切っていい。


「では次の方、どうぞ」


 六人目の受け答え至って平凡。

 特別喋るのが上手い訳ではなく、かと言って下手という訳でもない。

 突発的な質問にも、ちょっと間は置いたけどちゃんと回答してくれたし、その内容も悪くない。

 ただ、面接が終わった後でイーリアが事実を教えてくれた。


「あの方の喋っていた内容、ほとんど全部嘘です」

「なら不採用」


 看破スキルで嘘を見抜けるイーリアは誤魔化せない。

 同じ看破スキルを持っているアッテムも、こくこくと頷いて同意している。

 面接で建前を語るのが悪いとは言わないけど、それで内容が平凡ならたかが知れている。


「次は……あの堕天使だったな」


 暴食を犯したから堕天使になってしまった、と言っていたヴィクトマの番が回ってきた。

 ちょっと不安ではあるけど、応募書類によると鑑定や治癒魔法が使えるみたいだから、教会では事務をやっていたっていうから書面上での印象は悪くないんだよな。

 ただ、天使なら誰もが使える光魔法は堕天使になったから失い、代わりに闇魔法を習得しているようだ。

 というか、光魔法は失っても解呪スキルは失わないのか。


「では次の方、お入りください」

「はぁい」


 喋り方の癖なんだろうけど、面接の時くらいは間延びせずにハッキリ言ってくれ。

 これはちょっとマイナスポイントかな。


「失礼しまぁす。ヴィクトマと申します、よろしくお願いしまぁす」


 うん、待て、ちょっと待て、本気で待て。

 何だその胸の巨大な塊は。

 前はダボダボで余裕のある服だったから気付かなかったけど、こいつミリーナ以上じゃね?

 あまりの大きさに、さほどでもないイーリアとアッテムが固まってるぞ。


「……お座りください」


 俺が着席を促すと、イーリアとアッテムがハッとして正気に戻った。


「で、では、志望動機をお願いします」

「はぁい。えっとですねぇ」


 相変わらずのんびりして間延びした口調だけど、受け答えそのものはしっかりしている。

 内容はちゃんとしたものだし、前に聞いた堕天使になった理由も改めて話してくれた。


「一生懸命働きますから、どうかよろしくお願いしますぅ」


 真剣なのは伝わってくるし、これまでの感じで何か裏があるとは考え難い。

 懸念する点を上げるなら、やっぱり堕天使になって教会をクビになった原因の暴食と酒かな。

 本人も自覚していて体を壊さないよう自制もできているから、採用候補に入れておいて、採用した場合はそれに注意するってところでいいかな。


「では、本日はお疲れ様でした」

「失礼しまぁす」


 退室するのを見送ったら三人で話し合う。

 看破スキルに反応は無く、二人が受けた印象も悪くないようだ。

 暴食と酒の点はちょっと気にしていたものの、自重は出来ているから採用候補に入れて問題無しということになった。

 これで採用候補はラーナも含めて二人。

 残っている三人が駄目だとしても、必要な人数は確保できそうだ。


「よし。残るは三人だ。もうひとふんばりしよう」

「はい!」

「はい」


 ところがその三人の中に、とても欲しい奴が出てきた。


「自分、アビーラと言います。よろしくお願いします!」


 最後に面接をしたアビーラという、精悍な顔つきをしたドワーフの青年だ。

 年齢は二十台前半で、種族の関係で背丈が百五十センチにも満たない割に腕は太いし、足腰もしっかりしているように見える。

 一見すれば事務方には見えないけど、応募書類には事務経験有りとあるんだよな。


「事務経験有りとありますが、どちらの方で?」

「うっす! 実家の鍛冶屋で鍛冶だけでなく、事務仕事も一通り叩き込まれたっす!」


 なるほど、実家でやっていたのか。

 言葉遣いはちょっとアレだけど、事務経験が有るのはプラスポイントだな。

 それに鍛冶ができるのも良い。

 実を言うと、鍛冶のできる奴が密かに欲しかった。

 冒険者から入手する武器にも限りがあるし、育成スペースでの訓練に使う武器の消耗も馬鹿にならない。

 いくら安い数打ちとはいえ買えば経費はかかる上に、使えなくなった武器の処理も簡単にはいかない。

 だから前々から、鍛冶の出来る奴がいればなと思っていた。


「鍛冶はどの程度できるんですか?」

「基本は習得しているっす。ただ独自色を出せなくて、親父から今のままだと模倣品を作る二流で終わるって言われたっす」


 たまにいるよな、そういうの。

 模倣や細部の改良はできるけど、オリジナル性を出せない奴って。


「そんな時に姉貴から、環境を変えてみたらどうかと言われて応募を決めたっす!」

「実家とご両親は?」

「実家は姉貴の婿さんが継ぐんで大丈夫っす! それに親父とおふくろとも話し合って、納得してもらったっす!」


 なら採用したとしても問題は無い訳か。

 一通りの鍛冶ができるのなら、武器の修繕だけじゃなくて欲しい武器の製作もできる。

 肝心の事務能力も、実家での経験があるのならいけそうだな。


「いずれここで鍛冶の仕事もやれるとしたら、やってくれますか?」

「是非やりたいっす! その時は異世界の知識を貸していただけたら嬉しいっす!」


 ということは、採用するならまずは事務員としてやってもらって、余裕が出来たら鍛冶に着手ってところかな。

 居住部に作業用の部屋を用意して、そこに必要な物を揃えればいいだろう。


「分かりました。本日はお疲れ様でした」


 こうして面接は全て終わり、合格者選定へ移る。

 その中で二人にアビーラの採用を推して、理由として鍛冶について考えていた事を伝えた。


「確かに。魔物が武器を使う点を考慮すると、鍛冶スキル持ちがいると便利ですね」

「買ったり、修理したり、すると、お金が割と、かかりますます、もんね」


 支出についても月次報告でまとめておいたから、二人とも武器に関する経費については分かってくれている。

 だからこそアビーラを採用する空気になったものの、もう一人は誰にしよう。。

 今のところの候補はアビーラを除けば、ヴィクトマかラーナ。どちらも欲しいけど、採用予定は二人だからどっちかを切らなくちゃならない。


「二人はどっちが良い?」

「私はラーナさんを推します」

「わ、私も、ラーナさんが、いいです」


 俺も同じ意見だ。

 ヴィクトマも捨て難いけど、実際にダンジョン勤務経験のあるラーナの方が即戦力になってくれそうだ。


「分かった。今回の採用者はアビーラとラーナにしよう」

「合格通知は明日、私が伝えに行きます」

「頼む。それじゃあ、後片付けをして引き上げるぞ」

「「はい」」


 話し合いを終え、利用した部屋の片づけをする。

 それを済ませたら受付で利用終了の旨を伝えて帰路へ着く。

 道中でベアングのおっちゃんの所へ寄って、前に提案した折りたたみ式の椅子とテーブルの売れ行きを確認しに行くことにした。

 作業の手を止めて対応してくれたおっちゃんによると、売り上げは順調らしい。


「それはなによりです」

「蒸篭ほど爆発的じゃねぇけどよ、便利だって買っていく大家族が多いんだよ。他にも、大手ダンジョンの使いとかいう奴も何人か来てたな」


 大手のダンジョンは雇っている人が多いから、人数分の椅子とテーブルだけでも場所を取りそうだもんな。

 なんにしろ、需要が有るのは良い事だ。


「単価は蒸篭よりも高く売ってるから、次にそっちへ入る金も期待しててくれ。蒸篭もまだまだ売れてるしよ」


 期待させてもらいます。


「そうだ。礼ってほどのモンじゃねぇけど、こいつを持っていけ」


 ベアングのおっちゃんが取り出したのは、蒸篭が完成して使い方を教えている時、いずれこうした物も作ってもらいたいと呟いた麺棒だった。

 差し出されたそれを両手で受け取ると、重めだけど手触りが滑らかで丁寧に仕上げられたのが分かる。


「前に坊主が言っていた、細長い円柱型で水気に強い木で作ったぜ。それと、同じく水気に強い板の台だ」


 マジか、麺台まで作ってくれたのか。


「いいんですか? 貰っちゃって」

「坊主には稼がせてもらってるからな。気にせず受け取れ」


 だったら遠慮なく貰っておこう。

 これがあれば、大抵の麺料理は作れるはずだ。

 確か台所に小麦粉が大量にあったはずだから、早速うどんでも作ってみようかな。


「ありがとうございます。大切に使います」

「おう。今後も頼むぜ」


 お礼を言って麺棒と麺台をマジックバックに放り込み、ちょっと浮かれ気味に帰路を行く。

 それから帰宅して書類の片づけをしたら、ちょうど手が空いていた戸倉に手伝いを頼み、うどん作りへ取り掛かる。


「小麦粉と塩と水。うん、あるな」

「柊君、何を作るの?」

「うどん」

「「「えっ!?」」」


 作る物を伝えると、洗濯を終えた先生と、リンクスの五目並べの相手をしていた香苗も反応した。


「作れるの? この世界に麺は無いから、諦めてたのに」

「先生、味噌煮込みうどんが好き!」

「サトちゃん、味噌がねぇって」


 あっ、先生が落ち込んだ。無い物は無いんだから我慢してもらおう。

 さてと、まずは小麦粉の仕込まなくちゃ始まらない

 本当は中力粉か強力粉がいいんだけど、こっちの小麦粉はそういった区別をしていないから、仕方ないけど気にせず有る物を使おう。

 大きめのボウルに入れた小麦粉へ水と塩を少しずつ加えながら、全体に行き渡るようにかき混ぜていく。

 それを固めて大きな塊にしたら、ここからは力勝負だ。

 麺台の上に塊を移し、力を込めてこねていく。


「ぐっ、思ったよりも力を使うな……」


 作り方は元の世界で記憶した料理漫画で知っているけど、実際に作った経験は無い。

 まさかこんなに力が必要だとは思わなかった。


「なぁ涼。ビニールか何かに入れて踏めばいいんじゃね? 田舎のじっちゃんがそうやってたぞ」

「宮田さんは浅はか。この世界にはビニールは無い」


 香苗の言っている事は正しいけど、戸倉の言う事も正しい。

 俺だって最初は踏んで生地をこねようと思ったよ。

 でも肝心のビニールが無いから、手でやるしかない。


「香苗、手でもみこむ時のコツは聞いてないか?」

「えっと、体重をかけて腰を入れて、手の付け根辺りで押すようにするだったかな?」


 なるほど、やってみよう。

 うん、少しやり易くなった。

 一応料理漫画で覚えた内容通りの割合で水と塩は入れたけど、ひょっとして水が足りなかったか?

 どうにかこうにかやってるけど、段々と腕と手が疲れてきた。


「主様、交代しましょう。力には少し自信があります」

「悪いけど頼む。腕がキツイ……」

「お任せください」


 そう意気込んだローウィだったけど、こねだしたら驚きの表情を浮かべた。


「あ、主様は、こんなものを、先ほどからずっとこねていたのですか?」


 ちょっとは力に自信があるとは言っても、やっぱり女性だけあって悪戦苦闘しているな。


「キツクなったら言ってください。次は俺がやります」

「ならオレもやる!」


 ローウィのキツそうな表情を見て、フェルトと香苗も名乗りを上げた。

 そうだよな、交代でやるしかないよな。


「じゃあ先生は今のうちに、出汁でも作っておくね」


 お願いします。どうせまだ、こねた後の生地の寝かしとかがあるんで。

 そういう訳で交代しながらこねていき、ようやく完成した頃には俺とローウィとフェルトと香苗は、ぐったりと椅子やテーブルに身を預けていた。


「どうにかできたな」

「主様、もう腕がパンパンです」

「やべぇ。握力が入らねぇ……」

「なあ涼、やっぱ足で踏んだ方がいいって」


 全くもって同感だ。

 うどんを作るたびにこの調子じゃ、気軽に作れない。


「ビニール以外で代用できる物ってあるか?」

「清潔な袋でいいんじゃね? 踏む時は靴下でも履いておけば、衛生面も大丈夫だろ」


 それが無難な所かな。

 

「あ、あの……」

「どうした、ミリーナ」

「今思ったんですけど、育成スペースへ持って行って、バイソンオーガかサイクロプスパンダにやってもらえばよかったんじゃ……」


 あっ……。


「その通りだよ、ちくしょう!」


 そうだよ! 俺達の力が足りないなら、力自慢のあいつらに頼めば良かったじゃないか!


「次からはそうしよう」


 この決定に異論が出るはずもなく、香苗とローウィとフェルトは黙って頷いた。



 *****



 時間が経って夕食時。

 寝かせておいた生地を麺台の上に乗せ、麺棒で伸ばして折りたたむ。

 それを太めに切ったら麺を茹で、器へ盛ったら先生が準備してくれた、あっさりめの鶏がら出汁を入れる。これに鳥肉を数個乗せ、肉うどんの完成だ。

 おかずは今日「異界寄せ」したアスパラを使った料理で、シンプルに茹でて塩を振っただけの物、自家製ウスターソースで他の野菜と炒めた物、薄切り肉を巻いて焼いた物の三品が並ぶ。


「じゃあ、いただきます」

『いただきます』


 恒例のあいさつをして食事が始まる。

 麺料理を食べたは経験の無い異世界組は麺を上手く啜れず、少しずつ口へ含んでいく一方、俺達は音を立てて豪快に啜っていく。


「あぁ……久し振りに麺が食べられた……」


 泣くな香苗。もち米の時もそうだったけど、こいつ意外と涙もろいな。


「柊君、次回は焼きうどんを」


 それはいいかも。

 野菜と肉をたっぷり入れて、味付けは自家製ウスターソースで作ろう。

 上に乗せる鰹節と青海苔が無いのが残念だ。


「先生はカレーうどんがいい」

「無理です。カレーを作れる自信が無い」


 香辛料を調合すればいいのは分かっていても、それがとても難しいらしい。

 とてもじゃないけど、素人には出来る気がしない。

 そんな調子で騒がしい夕食を終えると、明日からの予定を伝えた。

 明後日には新人が二人来て、一緒に働くようになる事。

 その二人が仕事に慣れるまでの研修について。

 ついでに、来集には新しく買った土地の整備についても。


「他に皆から伝えたい事は無いか? 連絡し忘れた事でも構わないぞ」


 確認をして全員を見渡しても、誰も挙手しない。

 迷ったり困ったりしている様子も、後ろめたそうな様子も無い。


「じゃあ解散だ。遅番の奴は早めに寝て、寝坊しないように」


 最後に夜勤の注意事項を伝えて解散。

 遅番のリンクスとフェルトは早めに睡眠へ向かい、香苗達女性奴隷一同は洗い物と食器の片付け。

 俺は運動不足解消と魔物の訓練について打ち合わせするため、ローウィと育成スペースへ。

 イーリアとアッテムは、明後日からの新人研修について打ち合わせを始めた。

 残ったユーリットは研究のため、育成スペースで育てている薬草をいくつか採取して部屋へ戻っていった。

 この時の俺達は夢にも思わなかった。

 とんでもない存在がダンジョンへ乗り込んでくる事も、大事な仲間を失うことになるという事も。


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