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10話 兆し 5

今回は短いです。

目が覚めると、見知らぬベッドで寝ていた。


あれ?デ・ジャブ?


天井の様式や全体的なインテリアは記憶にある。

自室ではないどこかに寝かされているのか。


アダーラは納得し、体を起こそうとするがそれは叶わなかった。動かない右手を見ると、シリウスが手を握り寝息を立てており、反対に頭を巡らせると父がこちらに手を伸ばしうとうととしている。

その手はアダーラの額に当てられ、ひんやりと心地よい。


父様も兄様もついていてくれたんだ。


身じろぎをすると、それが伝わったのか父が目を覚ましたので、ゆっくりと微笑んでみせる。


「おう、元気そうじゃないか。」


額をぺちぺちと叩く父は、やや病みやつれたようすで中々のフェロモンを無駄にまき散らしているようだ。


眼福です父様!


「母様もシリウスも今寝てるから、ちょっと待ってろ。」


音もたてず立ち上がると、するりと父は部屋を出て行った。

残されたアダーラは近くに兄の寝息、遠くに母の寝息を感じゆっくりと目を閉じ考える。


この世界の事、アダーラの事、そして自分の事。


読んだ物語のままであれば、アダーラは16歳か17歳か、高等魔法学園へ進学をした後、数年内に死ぬ。

表情を失くした兄の手にかかった死の際で、アダーラは見たのだ。最後に目にするもの、それはアダーラの命を奪い立ち去るほんの一瞬、涙を流す兄の姿だ。

そしてその後のシリウスの足取りは掴めなくなる。

全てを諦め、全てを捨て、アダーラの命を奪う選択をするしかなかったシリウスの生死は語られなかったが、今のアダーラには分かる気がした。

物語の中では、幼少期のシリウスについては深く語られはしていない。

しかし、今の兄がアダーラを手に掛ける未来を選んだら、きっと生きてはいないだろう。


未来を変えよう。

せめて兄の命が助かるように。

せめて兄が悲しまなように。


まだ子供の体温をしているシリウスの手を、決意を込めて握りこむ。


きっと大丈夫だ、大丈夫。

ストーリーは思い出したし、後はそれをひたすら回避して行けば良いだけだ。

王子は避ける、騎士には近寄らない、魔術師につっかからない。

これを私の三原則としよう、そうしよう。


「ん、アダーラ・・・。」


とと、いけない。起しちゃうわ。


きっとずっと付いていたのだろう。

疲れて寝ているシリウスを起こさぬように、ゆっくりと息を吐く。


少し落ち着いてきた所で、扉がうっすらと開き、廊下のほのかな明かりが部屋に入り込むと、父が戻ってきた。

湯気を立てるカップを持っている。


「飲めそうか?」


差し出されたカップには乳白色の液体で満たされていた。

ホットミルクだ。


「はい、ありがとうございます。」


片手でカップを受けとり、ホットミルクを一口含むと温かさと蜂蜜の甘味が広がる。

この時間、使用人たちももう寝ているだろう。

父が、この父が1人調理場でミルクを温め蜂蜜で甘味をつけてくれたのだろう。

その姿を想像すると可笑しかった。


「良かった。」


心配をかけたのだろう、無理をさせたのだろう。

父の目の下にはクマが浮かび上がり、疲れがにじみ出ていた。

それでも微笑んでくれる事が申し訳なくもあり、そしてアダーラには何よりうれしかった。


「それを飲んだらもう少し寝ろ。皆ついているから。」


3歳児の体はまだまだ睡眠を欲しているようだ。

温かいミルクを飲んでうとうととしてきたアダーラは父の言葉にうなずき目を閉じた。



夢の中でも良い、アダーラに会えないかな?

会って言いたい事がある、大丈夫だと

私がアダーラの未来を変えると、約束するよ。


評価やご感想やご意見やブックマークや色々本当に有難う御座います。

日間総合とか入ってしまっていて我が目を疑いました。

マジですか?


少しでも楽しいお時間を提供できていたら幸いです。


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