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9話 兆し 4

ちょっと視点がころころします。

最初で最後の山場?

風が収まり、部屋中の物が捻れ破壊された部屋の真ん中で、アダーラは倒れていた。

そして高熱を出し昏睡状態となった。

まだ3歳になったばかりの体で、魔力の使い方も学ばずに為、無理に使った魔法の反動を受けているのだ。


そんなに嫌だったのならば、

アダーラの目が覚めたら伝えよう。

お前の兄様はずっとここにいるよと。

こうして、苦しむお前の手を握っていることしか無力な兄でも、お前が望んでくれるのならどこまでも供をしよう。

だから戻って来てくれ。


浅い息を繰返し苦しむアダーラの傍らで、シリウスはアダーラの手を握る。

その反対側では父が恐るべき集中力で、その手のひらに薄皮1枚の氷を張りアダーラの熱が上がりすぎないように、冷やし続けている。

40度を越える熱が続けば脳に障害が残る事がある。それは魔法のあるこの世界でも同様で、昼夜を問わず、熱を管理することが魔力枯渇をした際の対処方法である。


強い魔力を持つ場合、小さく力を使うのは難しい。

実際、この男は庭の一部を凍土に変えている。

それも愛娘の為ならば可能になると言うことだろう。


敵わないな。


まだまだ父には敵わない。

そう感じ、シリウスは気配を殺し、父の邪魔とならないように、アダーラの手をより強く握りしめた。





体か熱い。

体の中で炎が揺らめいている。

必死で押さえ込まなければ身を焼かれる。

そうして身の内の炎を押さえ込んでいると、その炎の中に記憶が見えた。

あれは私だ。

父がいて母がいて友達がいて学校に通っていてそして死んだ私の記憶だ。

父が耐えるように泣いていた。

母が溢れるように泣いていた。

もう名前も忘れてしまった私のために、泣いているのか。

ごめんなさい、ごめんなさい。

私は生まれ変わって、幸せに生まれ変わっているから、どうか泣かないで。

もう泣かないで。

そして私の意識は何かに引かれるように上へ上へと猛烈なスピードで動く。

頭の中には記憶の洪水が起こっていた。

それは1人の少女が産まれて生きてそして死んで行くまでの記憶。

人付き合いはあまり得意ではなかった少女、本が好きでお菓子を作るのが好きで、本当が学校が嫌いだった少女。


あ、あ、あ、あぁ


全ての情報が暴力的なスピードで私の中を駆け巡って行く。



学園に行けば兄の心は変わる。

知っているはずだ。

お前は知っているはずだ。

私を!

私の未来を!!



女の声が蘇る。


そうだ知っている、知っていたのだ。

父の事、母の事、シリウスの事、そしてアダーラの事。

あんなに好きだったのに、どうして忘れていたの?

思い出せなかった事の方が不思議な、大好きだったお話がある。

それはファンタジー小説で、少女が身分や能力に悩み成長して行くお話。

やがて国を憂い、王宮に巣食う悪に挑み打ち倒すのだ。彼女の意思に惹かれ、そして共に手を携え戦う仲間達。王子や騎士や魔術師との淡い恋。

わくわくして、胸をときめかせ何度も何度も読んだお話。

その作品は、小説なのにマルチエンドで、最終巻が何冊もあった。ゲームのように、仲間の中から1人を選んだ場合のお話が何パターンも書かれていた。お気に入りの登場人物の巻を買い、そして結局全員分を買い揃えてしまった。少いお小遣いをほとんど注ぎ込んで読んでいた。


ああ、アダーラ。

貴女はどのストーリーでも鮮やかに咲いていたね。

禍々しくも美しい悪の花。


知っているわ、貴女の未来を。

その鮮やかな黒髪を手に入れたいと望む者を手玉に取って、そして王宮に君臨した。

アダーラの毒がゆっくりと染み込むように、国は蝕まれて行った。

そして最後にはシリウス兄様に命を断たれ全てを終えたアダーラ。


だからこのアダーラの体はシリウス兄様の学園行きを拒否したのか。


すとんと、アダーラの気持ちが理解できた。

アダーラが望んでいたのは栄華ではなかった、唯一人、シリウスの心が欲しかったのか。

シリウス兄様が学園に行かなければ、あの女に出会わなければ、いつまでもアダーラだけのシリウス兄様でいてくれたと、そう思っていたのね?


どこかで泣いているアダーラを感じる。


一緒に行こう?

きっとシリウス兄様は大丈夫。

私も付いているし、一緒にアダーラとして生きて、そして見届けて欲しいわ。


そう願うと、温かい気配がした気がした。


誤字修正致しました。


これでこのお話の導入部分は終わりです。

何だか長かったです。


読んでいただいてありがとうございます。

あと、ブックマークとか評価とか何かの間違いじゃないのかとガクガクしております。

多分、明日は豪雪です。


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