1話 目覚め 1
初投稿です。
どうぞよろしくお願いいたします。
目が覚めると、見知らぬベッドで寝ていた。
恐ろしく天井の高い、天蓋付きのベッド。
おかしい、こんな場所知らない。
慌てて身を起こそうとするが、力が入らない。
本格的にヤバいかも知れない。
焦っている事を差し引いても、どうやら声もうまく出せないようだ。
先程から、自身の口からは、あーだとかうーだとか言う音しか発せられていない。
何故?
どうして?
疑問ばかりが渦巻いて、一向に状況は好転しない。
確か朝から学校へ行き、部活に顔を出し、帰宅したはずだ。
いつも行き合うにゃんこに挨拶をして、自宅に帰ったはずだ。
そう、帰ったはず・・・。
にゃんこに会ったのは覚えている。
今日もアゴを撫でて、胸元にある茶色い柄を見せてもらった。
うん、そこまでは覚えている。
でもそこから先は?
私、どうしたんだろう?
だんだんと不安が心を占める。
ほろりと涙か零れる感触があった。
だめだ、知らない場所で、どなたかのお家で、泣いてしまうなんて。
でも、不安は消えず、どうしようもない。
堪えきれず、とうとう私は声を上げて泣いてしまった。
おぎゃあ、おぎゃあ
え?
え?
え?
何で?
自身の口から発する泣き声に、益々パニックをおこした私は力の限り泣き続けた。
赤ちゃんの声で。
もう自分でも何が何やら分からない。
きっと夢だ。
夢なのだ。
力一杯泣けばきっと、自身の泣き声で目が覚めるはず。
とにかく私は、持てる力のすべてを使い泣き続けた。
どれくらい泣いていたのか、後から考えれば、当時の私の体力ではきっと5分にも満たない時間だったろう。
でも、この時はとてつもなく長い時間に感じていた。
体力の限界を感じ始めた頃、ぱたぱたぱたと軽い足音が聞こえたかと思うと、続けて人の声が届いた。
「お母様、お母様。アダーラが泣いている!早く、早く」
子供の声だ。
その軽い足音が近寄って来たと思うと、視界一杯に少年の顔が広がる。
美少年である。
誰?
こんな子供知らない。
見知らぬ天井の下、初めて遭遇した人の姿に、混乱は深まるばかりであった
こちらを覗き込む少年はとても特徴的な色彩を纏っていた。
やわらかそうな黄金色の髪の毛は、端に向かって若草色にグラデーションとなっている。
こちらを心配そうに見つめる瞳はよく晴れた夏の空の色である。
目鼻立ちだけでも、私の知る近所子供の顔と異なるばかりか、この色彩である。
お金持ちの外人さんの家の前で行き倒れたのか?
そんな考えが頭を過るが、そもそもご近所にお屋敷なんてなかった。
お屋敷じゃなくても良いが、こんな天使が日本家屋やアパートに住んでいる訳がない。
いや、探せばいるのかも知れないが、探したくない。
美少年で、その上、天使なのだ、そんな彼はお屋敷にいるべきだ。
それはともかく。
日本語上手いなぁ。
そんなとりとめのない事を考えつつ、美少年の顔をガン見していると、その天使がまさに天使のごとく微笑んだ。
殺される。
物騒な事この上ないが、まさに人をも殺せるキラースマイルだ。
「アダーラ?」
天使は優しく声をかける。
いえ、私はアダーラではありません。
(アダーラって人の名前だよね?この場合)
そう答えようとして、口から漏れたのは件のあーともうーともつかない声だ。
そう言えば声もでないんだった。
仕方ない、ジェスチャーで、と体を動かそうにも手足がばたばたと動くだけだ。
どうしよう?
非常に困った。
大いに困った。
とにかく困った。
そんな私の困惑をよそに、あろう事か、その少年は私の体に手を伸ばし・・・
抱き上げた
抱き上げたのだ
まだ幼さの残る少年が!しかも美少年がだ!
実は怪力無双だったのか?
実は着やせするタイプですとか言うのか?
美少年なのに?
しかし顔が近い。
天使は笑顔のままその頬を私の頬にすりよせてくる。
ぎゃーーーーー
「アダーラ、可愛い僕の妹。」
空耳だろうか?
天使が何か人外の言葉を囀った。
いや、気のせいでなければこの天使は私の兄だと主張したようだ。
思春期も終わりかけ、ぼちぼちと大人へと変化しつつある私に対してだ。
天使だから年齢なんか関係ないのか?
そうなのか?
どうしよう。
きょどきょどと視線を彷徨わせると、おぼろげな輪郭から部屋の入り口と思われる位置から、今度は女神がこちらを見ていた。
柔らかそうな黄金の髪の毛は天使とよく似ている。
しかし女神はほんのりと桜色のグラデーションとなっていた。
女神は髪の毛の色も女神なんだな。
ああ、そして私やっぱり死んだんだ。
だから天使が兄になったんだ。
死んだんならもう良いや。
この天使を堪能しよう、そうしよう。
そして私はぎゅーっと天使にしがみつく。
天使は天使なので嫌がるそぶりはなく、むしろさらにぎゅーっと私を抱きしめてくれる。
ああ、役得。
これが私の人生の最後の記憶になるなら良いや。
贅沢を言えば天使はもうちょっと青年が良かったけど。
いや、そんな贅沢は敵だ。
だって天使だし、良い香りがするし、軟らかいし、何だかミルクみたいな匂いもするし…。
天使に抱かれ、ふわふわとした気持ちでいると、忘れていた、女神が近寄ってきて私を抱き上げる。
ああ、女神さまに連れられ地獄かどっかに連れていかれるのか、六道通るのは良いけど、餓鬼道はちょっと嫌だなぁ、お腹が空くのは嫌だもんなぁ、などと宗教観めちゃくちゃな事を考えていると、事もあろうに女神はその衣服をはだけさせた。
ええ、ちょっと女神さま?エ?何?女神さまだから衣服なんていらない系?
眼福だけど女神さまは神々しすぎます!!
女神さまは私を見て微笑むとそのまま、その、豊満な乳房を私の口にねじ込みやがりました。
女神さまの乳房を吸う趣味はないですぅうううううううう
私の心の叫びとは裏腹に、私の体は女神さまのおっぱいをごきゅごきゅと飲み始めるではないですか?
自分のアブノーマルさ加減に呆れていると、視界に小さな小さなもみじのような手が見えた。
その小さな手は女神さまの乳房に添えられ、私が体を動かそうとすると、ひくひくと動いていた。
もしかして
もしかして
もしかしちゃう系?
女神さまがそのお体を離した後、自分の手をかざすように慎重に体を動かし、目に映ったのはまさしく赤子の手。にぎにぎしようと考えると、目の前の赤子の手がにぎにぎと動く。
「あは、アダーラ。自分の手が動くのが面白い?」
またもや天使がのぞきこんでくる。
いや、ちょっと
どういう事?
私は一体どうしちゃったの?
そこで私の意識は暗転した。
遠くで天使と女神が楽しそうに笑っている声が聞こえたような気がした。
見切り発車で書き出してみました。
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