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「これが依頼の物だ。本当に、頼めるかね?」

 ふくよか体付きをした年配の男性から私に差し出したのは、黒い光沢を放つアタッシュケースだ。

 両手で取っ手を掴んで荷物を受け取る。

 女の細腕には厳しい重量であったが、 依頼主を不安にさせないためにおくびにも出さずに笑みを浮かべる。

「はい。必ず、お時間までにお届けします」

「本当に、本当にお願いします。私たちがここで生き残るためには、今回失敗するわけにはいかないんです」

 四十は年齢が下の私に向かって、何度も頭を下げるスーツ姿の男性からは強い真剣みが伝わってくる。

 人気のないビジネスホテルの廊下とはいえ、中々できることではない。

「安心してください。依頼は必ず達成します」

 そう言うと同時に、脇にあったエレベーターが開いた。

 サイドテールに結った栗色の髪を揺らしながら、一人の少女が歩み出てくる。

「円香先輩、奏太先輩が地下の駐車場に車を回してるよ」

「小春ちゃん。時間通りだね」

 現れたのは後輩である早乙女小春ちゃん。

 私はもう一度、手の中のアタッシュケースの重みを感じる。

 運べませんでしたではすまない。

 私たちが私たちであるために、失敗をするわけにはいかない。

「では、失礼します」

 私は小春ちゃんが開いて待ってくれていたエレベーターに乗り込むと、依頼主の男性に一礼をして扉を閉める。

 扉越しに頭を下げ続ける男性が見えなくなると同時に、どすっと床にアタッシュケースを下ろす。

「重かったぁ……」

 まだ手がじんじんしている。

 腕時計の時間を再度確認する。

 既に時刻は夕方の五時を回っている。

 約束の時間は六時。

「円香先輩、この仕事、結構危なそうだけど大丈夫?」

 小春ちゃんが心配そうな顔で下から見上げてくる。

「今聞いた限りじゃ、相手さん、本土のちょっといけない組織と繋がりがあるらしいね。結構な悪人らしいよ」

 全く厄介な組織が相手になったもんだと自嘲気味な笑みを浮かべる。

「私たち、全然人のこと言えないですけどね」

「何を言うか。私たちは悪人みたいなちんけな連中ではないよ」

 階数を示すデジタル表示が地下一階に変わった。

 まばらに止まっている地下駐車場の中を歩いて行き、隅に止められている黒いスポーツトラックへ行く。

 スポーツトラックには運転手である奏太が背中を預けている。

 いつも身につけている赤いヘッドホンを耳に当て、なにやら音楽を聴いていた。

 私たちが到着したことに気づくと、奏太はヘッドホンを外しながら車の鍵を開けた。「ここに来るまで、尾行されていた気がしたんだけど。すっごい独特なエンジン音の車」

「ホント? 相手さんも本気だね。ちゃんと撒いてきてくれた?」

「うん、もちろん……あ、あれ?」

 奏太が素っ頓狂な声を出す。

「なんですか? そのやっちまったみたいな声は」

 小春ちゃんが尋ねると同時に、一台のワンボックスカーが回ってきた。

 軽快なエンジン音の車だ。

 私と小春ちゃんは即座に判断した。

「二人とも早く乗って!」

「全然撒いてないじゃん!」

「奏太先輩のドジ!」

 二人そろって荷台に飛び乗ると同時に、スポーツトラックのエンジンがかかり、即座に車は発進した。


    Θ    Θ    Θ


「この授業もぱっとしなかったな」

 一番後ろの席で一人、人類文化論という授業を受けていた俺は、誰にも聞こえないように小さく呟くと、筆記用具とノートをまとめて席を立つ。

 同じように帰宅を始める学生や、その場で話をしている学生など、学生たちは自分たちのグループでお互いにお互いが気ままに過ごす。

「この間からニュースでやってた痴漢警察官、罪認めたらしいぞ。今ネットで燃え上がってる」

 そんな中、出入り口付近の席で話していた生徒たちの会話が耳に入ってきた。

「あんだけ違うって喚いてたのに?」

「あれだろ? 昔地域の紹介番組で、日本一の善人とかって取り上げられたんだろ?」

「ばっかみたいだよね。何が善人だよって感じ。女の敵で最低の悪人じゃん」

「しかも、その子どもが今、海神学園にいるって噂!」

 それ以上その話を聞きたくなかったため、足早に教室を出る。

「ああいうやつことを――」

 後ろ手に扉を閉め、俺は帰宅する生徒に溶け込んだ。

 海神島は、本土から十キロ離れた場所に浮かぶ人工島だ。

 空港などに用いられてきたメガフロートを街として機能するまでに発達させた、超巨大浮遊式人工島。

 未来都市モデルの巨大実験場としても作られた海神島は、本土から海路以外は海上列車しか交通手段がない。

 海上都市としてどこまで成長することができるか、どのような問題点があるか、実際に人が生活することができるか。

 それらを検証するために、海神市は外部からの人間を積極的に取り入れている。建造されてから十五年近くたつが、今でもそれは変わらない。

 簡単な試験項目への同意やいくつかの審査さえ通れば、ほとんど誰でも移り住むことができる。

 かくいう俺も、つい先日海上列車に揺られ、一人海神島へと降り立った。

 高校二年生、十六歳。

 大人から見ればまだ子どもでしかないその年齢で、転校も転居も全て自分一人で決断し、実行し、単身海神島にやってきた。

 この島で生活するには様々条件こそあるものの、もう俺がまともに生活できるとされる場所はここしか残されていなかった。

 急速に発展を遂げる海神島は、当初の推測を遙かに超える大都市として成長しており、土地拡大のため増改築が進んでいる。

 生活をするには、ここは十分すぎる基盤だ。

 俺は、海神島の海神市が造った中高校一環の海神学園に転校してきた。

 午後は、一日適当に街をぶらついて過ごした。

 海神学園の高等部はカリキュラム制だ。自らが取得したい授業を選択し、自分の人生に役立つものだけを受講し、それ以外を求められることはない。

 午前中だけのカリキュラムを受けるだけで卒業することができる。

 午後を遊んでいればいいかと言えば、そういうわけでもないのだが、基本的に高等部は午前中だけで終わる。

 俺は本年度から転校してきたということもあり、四月は仮授業ということでまだ正式にカリキュラムが決まっていない身だ。

 五月頭には自分が受けるカリキュラムを決めなければいけないが、それまではまだ半月ある。

 今はまだ仕事をしていない。このまま仕事をしなければ、生活ができなくなるのは必至だが、五月までは猶予がある。

 夕暮れまで自分にあった仕事がないか、やりたいと思える仕事がないかと模索したが、結局見つけられなかった。

「ここでも、変わらないよな」

 コンビニで牛乳とおにぎりを二つ買うと、現在住んでいるアパートへと足を向ける。

 結局自分が変わりはしない限り、変わることはないとわかっている。

 それでも、受け身でいようとする自分に嘆息を吐き、俺は一人海神島の街を歩く。 高層ビルが建ち並ぶ街を抜け、路地へと入る。人気のない道だが、このルートがアパートへと戻るのが一番早い。

 誰も知り合いがいないこの島で、自分で見つけた近道。

 左手に小さな運動公園がある。

 海上に浮かぶ人工島であるにも関わらず、花木が生い茂る綺麗な場所だ。

 夕方という子どもが本来多い時間であるが、今は誰も遊んでいない。

 車が一台も通らない車道の脇を歩きながら、空を見上げる。

 半分ほど赤く染まりつつある空は、以前住んでいた場所で見上げていた空とほとんど変わりはしない。

 住む場所が変わっても、自分が見る目を、考え方を変えない限り、何も変化しない。


 だが時に、望む望まないに限らず、きっかけが舞い込むことがある。


 後方で、何かが吹き飛ぶ音と車のブレーキ音が聞こえた、

 弾かれたように視線を向けると、黒いスポーツトラックが車道のゴミ箱を吹き飛ばし、蛇行しながら駆け抜ける。

 ゴミ箱から大量の空き缶が撒き散らされ、路上に散らばる。

「え――」

 ハンドルを取られているのかスポーツトラックは体勢を立て直すことができず、俺が立っている場所に突っ込んでくる。

 やば、死ぬ――。

 無意識に車の進行方向を目で追い、大きく跳び退く。

 スポーツトラックは跳び退いた俺の前で曲がり、先ほどまで立っていた場所を横切ると急停車した。

「きゃあああっ!」

 女の子の叫び声が聞こえた。

 それは、目の前の女の子からだ。

 俺の前には車が停まったばかりなのに、なぜ女の子が目の前にいるか。

 女の子は、スポーツトラックの荷台に乗っていた。

 それがスポーツトラックが急停車したことによって投げ出され、路上に向かって飛んできたのだ。

 咄嗟に投げ出された先へと回り込み、女の子を受け止める。

「がっ――」

 女の子とは言え、人一人を受け止めたことで一瞬息が止まり、意識が飛びかけた。

 車から投げ出されてアスファルトへ叩きつけられでもしたら、大怪我ではすまない。 危なかった。

 そんな安堵した気持ちが頭をよぎったとき、視界に黒い物が映った。

 それは、黒いアタッシュケース。

 おそらくは女の子とともに投げ出された物であったのだろうが、何の恨みがあるのか一直線に俺に向かって飛来する。

 さすがに避けることも受け止めることもできず、アタッシュケースが額に直撃した。

    Θ    Θ    Θ


「いったたた……」

 体中がずきずきと痛み、視界を揺らしながら地面に両手を付く。

 だが、ぐにゅっというアスファルトではない感触が伝わってきた。

 眉をひそめながらようやく定まってきた視線を下に向けると、男の人が伸びていた。

「円香先輩大丈夫!?」

 トラックの荷台に乗っていた相方から声がかかる。

「私は問題なし。この人が庇ってくれたから」

 私は相方に無事を告げながら、自分の下で気を失っている男の子に目を向ける。

 茶色の髪に整った顔、歳はおそらく自分と同じくらい。カジュアルな服装をしているが、海神島の高校は全て私服登校になっているため高校生か大学生かはたまた社会人かはわからない。

「円香、追っ手が近づいてきてるらしいよ。早く乗って」

 開けられたスモークガラスの向こうから男の運転手が声を飛ばす。

 わかっている、と舌打ちを落とす。

 手の届くところに黒のアタッシュケースが落ちている。これをあと一時間以内に届けることが今回の依頼だ。

 時間がない上、追っ手はすぐそこまで来ている。

 でもだからといって、この男の子をここに放置するわけにはいかない。

「小春ちゃん、パス!」

 私は掴んだアタッシュケースを相方の女の子、小春ちゃんに向かって放り投げる。

「うわっと!」

 ずっしりと重いアタッシュケースを小春ちゃんはなんとか両手で受け止める。

 その間にトラックの後ろに回り、荷台の枠を固定している留め具を外す。

「小春ちゃん! この人荷台に上げて!」

「ええ!? 連れて行くんですか!?」

「こんなところに置いておくわけにいかないでしょ!」

 女二人の力ではあったが、ほとんど引きずられるようにして少年の体はトラックの荷台へと運び込まれた。

 息はあるようだが、脳震盪でも起こしているのか少年は目を覚ます様子はない。

「円香先輩! あれ!」

 小春が指さす先で、ワンボックスカーが猛スピードで向かってくる。

「奏太! アゲイン!」

「わかってる! 今度は振り落とされないでよ!」

 言うが早く、運転手の奏太と呼ばれる少年はスポーツトラックを発進させる。

 私は荷台の少年の上に覆い被さるようにして体を押さえつけていた。

「小春ちゃんそれはよろしくね!」

「はい! 任せてください!」

 この荷物を届けるだけ。

 今回の依頼はそれだけで終わる。

 後ろからワンボックスカーが追いかけてくるが、スポーツトラックの速度には追いつけない。

 奏太は普通にしていれば運転技能は抜群にいいのだ。

 目的地はすぐ目の前だ。

 このまま滑り込めば、それで依頼は達成される。

 だが、希望を打ち砕くように前の路地からもう一台の車が顔を覗かせた。

 奏太が慌てて急停車するが、この車道には左右に抜けられるような道はない。

 いち早く判断すると、小春ちゃんが持っていたアタッシュケースを掴み取り、荷台から飛び降りた。

「小春ちゃん走るよ! 運動公園を突っ切れば目的地はすぐそこだから!」

「了解!」

 気持ちのいい返事とともに、小春ちゃんは私に続き荷台から体を踊らせる。

「奏太は安全運転でその男の子を連れて退避!」

「そんなことできるわけが――」

「リーダー命令!」

 反論しようとする奏太を怒鳴りつけ、私は小春ちゃんを伴い運動公園へと駆けていく。

 しかし、さらに先回りをされ、私たちの前に二人の男が立ちはだかった。

「もう逃がさないぜ。嬢ちゃんたち」

 先頭にいた恰幅のいい男が嫌な笑みを顔に貼り付ける。

 どちらも二十代から三十代前後の男だが、どう見てもただの一般人ではない。

 アタッシュケースを胸に抱える。

「これは私たちの物です。あなたたちにとやかく言われるいわれはないはずですが」

 臆さずに男たちを睨み付ける。

 小春ちゃんが私の背中に隠れるように体を縮こまらせる。その体は、恐怖に怯え震えていた。

 一緒に来させたことを後悔した。

 この状況は非常にまずい。

「まど――、ぐっ!」

 少し離れた場所で、退避しろと言われたにも変わらず追いかけてきた奏太が追跡車両を運転していた男に押さえつけられている。

 男たちの目的は私たちに危害を加えることではない。

 目的はあくまでこのアタッシュケースの中身だ。

 それも、男たちは奪いたいわけでもそれを自分たちの物にしたいわけでもない。

 ただ私たちの依頼主まで届けさせない。それだけで男たちの目的は完了する。

 私たちが抵抗をするなら暴力をいとわない。そういう連中だ。

 だがそれでも、ここでやめるわけにはいかない。ここでやめるということは、私たちの存在意義を否定することになる。

 だから――

 男の手がアタッシュケースへと伸びる。

 私は後退して避けるが、横から伸びてきた腕が私の腕を掴んだ。

「離した方が身のためだぜ?」

 下卑た笑みを浮かべながら、小柄なチンピラ風の男が言う。

 振り払おうとするが、男たちは強引にアタッシュケースを奪おうとする。

「いいから離せって言ってんだ! 俺たちの邪魔をするんじゃねぇ! この偽善者が!」

「やかましい! 私たちは好きでやってるの! あんたたちみたいな小悪党にバカされるいわれはないやい!」

 私は暴れに暴れ、持っていたアタッシュケースを振り回す。

 それが近くにいた男の顎に入った。

「があっ!」

 かけていた眼鏡が飛び、草むらへと落ちる。

 その隙に走り出そうとするが、すぐに腕を掴まれ地面へと押さえつけられた。

「あぐっ」

 上から体重をかけて押さえつけられ、這い出ようとするが男が許すはずもない。

「このガキ……」

 口の端を赤くしながら、男の目にはっきりとした怒気が浮かぶ。

「おとなしく渡せばいいものを……」

 他に手立てがないか周囲に視線を配る。

 奏太は押さえ込まれて動ける状態でもなく、小春ちゃんは怯えきって体を震わせている。

 やはり、自分が行くしかないと自分に言い聞かせる。

 再び男の顔に拳を振り上げる。

 だがその細腕はあっさりと掴まれてしまう。

「じっとしてろ!」

 しびれを切らした男の拳が、振り下ろされる。

 放たれた暴力に、きつく目を閉じた。

 だが、痛みがやってくることはなかった。

「ぐぼっ!」

 男のうめき声が響き、同時に私を覆っていた重しがふっとなくなった。

 先ほどまで私を押さえていた男は、顔を押さえながら地面をのたうち回っている。

 小春ちゃんも奏太も、動いてはいない。

 その代わり、私の傍らに、一人の少年が立っていた。

「円香先輩!」

 小春ちゃんがここぞとばかりに駆け寄ってくると、倒れていた私を抱え起こした。

「なにしやがんだてめぇ!」

 仲間が攻撃を受けて、男たちが一気に殺気立つ。

 長身であるがどう見ても私と大して年齢が変わらない少年は、男たちに敵意を向けられてもひるむことなく、私たちを庇うように前に踏み出した。

 一瞬、長い茶色の前髪から、少年の目が見えた。

 背筋に、ぞくっと冷たいものが走り抜ける。

 垣間見えた少年の瞳からは、恐怖や怒りはおろか、その他あらゆる感情が抜け落ちていた。

 ただただ、空虚だった。

「俺はな……」

 少年は、ぞっとするほど冷ややかな声を出す。

「偽善者って言葉が、善人って言葉の次に嫌いなんだよ」

「何わからねぇこと言ってやがる……!」

 私も全く同意見だった。

 この少年は一体何を言っているのだろうか。

 先ほどまで私を押さえつけていた男が憎悪の感情とともに言葉を吐く。

「もうめんどくせぇ! 力尽くでケースを奪え!」

 男の声が引き金となり、とどめられていた男たちの暴力が放たれた。

 その全てが、私の前に立つ少年に向けられる。

 

 数分とたたない。

 それほど短い間だった。

 私たちを取り囲んでいた男たちが、運動公園の地面に倒れていた。

 先ほどまで奏太を押さえていた男も応戦するために動いたが、ほとんど意味をなさなかった。

 たった一人の少年が、大の男たちを瞬く間に叩きのめした。

 それほどまでに圧倒的に、暴虐なまでに一方的に。

 おそらく、私たちは助けられた。

 だがそれでも、目の前で起きたことに唖然とせずにはいられなかった。

 遠慮も、容赦も、手加減も。

 襲いかかってきているとはいえ、相手を気遣う気持ちなど欠片も感じさせないそのやり方は、どこまでも薄ら寒いものを感じさせた。

 少年は息一つ乱しておらず、歩き出した。

 私たちがいる方ではなく、運動公園の外に向かってだ。

「――待って!」

 咄嗟に制止の言葉が口から漏れていた。

 少年は足を止め、こちらに視線を向けた。

 茶髪の隙間から目が覗く。

 だがその目は、先ほどまでの空っぽの瞳ではなく、戸惑ったような揺れる感情が宿っていた。

 その目に、何も言えなくなってしまった。

 少年はそのまま、足早に運動公園を出て行き、すぐに姿が見えなくなる。

 私たちを邪魔する存在はいなくなった。

「円香先輩……」

 小春ちゃんがそっと私の腕に触れた。

「……うん。わかってるよ。奏太、車、出して」

 私たちは再び奏太の運転する車に乗り、目的地に向かって走り出した。

 小春ちゃんには助手席にアタッシュケースともに乗ってもらい、私は一人荷台に乗っていた。

 奏太の運転するスポーツトラックに揺られながら、私は口を緩めた。


 ――何あの子、面白い。

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