汚色
川の水面が微かに揺れる
それは鱗を真似る
死んだ川は自らを魚に化して
寂しさを緩和する
見つめた僕はただの通りすがりで
死んだ川に興味はない
桜の葉は枯れてしまった
縮れ上がった落ち葉は
渇いた色で名残を叫ぶ
僕は惜しみなく踵を下す
落ち葉がグサッとないた
僕には来たる春は見透せない
彼は寂しさをギャンブルで垂れ流す
溢れ出る快楽は
刹那に消える
激痛の嘲笑い
血走った目は虚像を積む
僕は彼の曲がった背中を見ながら左折した
彼女は寂しさを溜めこむことで
それを安心に置き換えた
ドレスやバッグに靴
ペットボトルにカップ麺
部屋を埋め尽くす安心に上限はない
僕は彼女の横腹を通り抜ける
足の踏み場などない
鏡の先で僕を見かけた
死んだ魚の目をしていた
きれいな水が飲みたい