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その愛、猟奇的につき。  作者: ようかん
6/26

その5



「み、見つかってるって…………?」

「ランジュ様はね、

 ずっとあなたに会いたかったのよ、ルル。

 12歳の時に別れたあの日からずっと………

 私があなたと友人だって知ってるから、

 ここを出てからの様子を何度も聞かれたわ。」

「は?」

「でもランジュ様は

 自分からあなたに連絡をとろうとはしなかった。

 なんでだろうって不思議に思って聞いたの、

 どうしてルルーシアに直接連絡をとらないのかって。」

「……………………………。」

「あの方、なんて言ったと思う?」

「……………いい、聞きたくない。」

「……………ランジュ様は紳士的な方よ。

 自分に言い寄ってくるご令嬢たちを邪険にせず、

 みんな"平等"に接してくれる。

 オマケに高身長の美丈夫で、次期宰相候補の筆頭。

 そりゃあご令嬢達が熱を上げるのもムリないわよね。」

「………………エマ。」

「勝手に自分の婚約者を名乗るジュリア様を

 ランジュ様は優しく諌めるだけで、

 決して婚約者であると断言したりはしない。

 ………なぜって?

 ジュリア様に"女避け"してもらってるからよ。」

「……………"女避け"?」

「あぁやってジュリア様が騒いでくれれば、

 ほかのご令嬢達が自分に言い寄ってこれないでしょ?

 しかも彼女はあんな感じの性格だから、

 なにを勘違いしたのか勝手に婚約者だって宣言して、

 ランジュ様に近づく女を蹴散らしてる。」


エマはクスッと笑って、

少し離れた場所で何やら喚いているジュリアを、

冷ややかな目で見た。


「…………馬鹿よね、ジュリア様も。

 ランジュ様からすれば彼女は、

 自分に集るうっとおしい"虫たち"を排除してくれる

 都合のいい女でしかないのに。」

「…………エ、エマ?」


自分を支えるように隣に立つ友人を、

ルルーシアは怪訝そうな表情を浮かべ見つめる。

…………いったい彼女は、何を言っているのだろう。

ワケがわからないと戸惑うルルーシアの耳に、


「どういうことですの?!ランジュ様!!」


ジュリアの、怒りに満ちた叫び声が聞こえた。


「………今お伝えしたとおりですよ、ジュリア様。

 僕はあなたと婚約するつもりも、

 あなたがおっしゃる婚約者になった覚えもない。」


シーンと静まり返る会場に、彼の声はよく響く。

記憶に残る声より、幾分低くなったその声に、

ルルーシアはピクリと体を揺らした。


「………ちょうどいい機会ですから、

 僕の"本当の婚約者"を紹介しましょうか?」

「?!」

「まぁ、正式に決まっているわけではありませんが、

 僕はその女性以外と結婚するつもりはありませんよ。」

「なっ…………。」

「彼女はこの国から離れていたものですから、 

 なかなか婚約を申し入れ出来なかったのですが、

 ようやく…………戻ってきたようなので。」


そう言ってうっすらと笑みを浮かべた彼が、

ルルーシアを自身の視界に捉える。

その鋭い視線は、幼い頃のルルーシアを恐怖に陥れた、

あの獰猛な獣のような捕食者の視線だった。



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