その24
「わ、わかってるんですからね?!
そうやって優しくしておいて、
最後は痛めつけてやろうと思ってるんですよね?!」
プルプルと震えながらランジュを睨みながら、
ルルーシアは勇気を振り絞って反撃する。
口でも勝てない、力ではさらに勝てない。
自分に勝ち目のない相手に口撃するのはやっぱり怖い。
だが彼相手に黙っているのも得策ではないことを、
ルルーシアは長年の経験から学んでいる。
「なに言ってるの?ルル。
僕はキミを痛めつけようなんて思ってないよ?
可愛い可愛い、愛するルルーシアと結婚したいって、
正直な気持ちを言ってるだけだよ?
キミにならどんな事だってしてあげたいし、
宝石もドレスも、望むものは全部与えてあげる。」
「…………キ、キモチワル。」
「今なんて言った?」
「なっ、なにも言ってません!!」
「…………………。
だからね、ルルーシア。
キミの王子様になれるのは僕だけなんだよ。
5歳で知り合った時から未来永劫、
なんなら生まれ変わってもそうだよ。」
「…………こ、怖。」
きれいな顔をして、甘い声で囁く彼に、
きっと普通のご令嬢ならイチコロだろう。
まさに絵本に出てくる王子様を具現化したような彼なら、
自分なんかを婚約者に選ばなくとも
数多のご令嬢たちから選べるだろうに。
…………だからなおさら怖い。
きっと子供の頃のように自分を
痛めつける為に支配下に置きたいだけなのだ。
「た、大変申し訳ないのですがっ、
わたしにはランジュ様の相手は務まりません!
ましてや次期宰相になられる方の奥様なんて………!」
「なれるよ。
ルルは宴席にも慣れてるし、他国の言語にも詳しい。
家柄も公爵家で申し分ないし、
うちとフォルティー家は昔から交流もある。
きっとうちの両親も両手をあげて大喜びするよ。」
「…………………………。」
「あとはルルが頷くだけでいいんだよ?
"ランちゃんのお嫁さんになる"って、
あの時ちゃんと約束してくれたでしょ?」
「………いつの話をしてるんですか?
あなたと結婚の約束なんて世間話と同じレベルで
何度もした気がしますけど…………
それにあれは約束じゃなくて脅しですよね。」
そう、実は今まで何度もランジュはルルーシアに、
自分と結婚するんだと脅迫してきている。
もちろん幼い頃の話だが、
大抵は痛い思いか怖い思いをさせられている時で、
しかも"うん"と言わないと解放してもらえないという、
なんとも恐ろしいプロポーズの数々だった。
「でも本気だよ?…………逃がす気もない。」
「!」
「ルルは本気に受け取ってなかったかもしれないけど、
何度も言ったはずだよ?
………キミは、
僕のお嫁さんになるんだよ、って。」
「………………!」
「約束、守ってよ。…………僕の夢、叶えて?」
耳元で囁かれ、背中にゾクゾクと不思議な感覚が走る。
いつもの恐怖からくるソレとは違い、
自分の心臓を跳ねさせたその感覚がなんなのか、
わからないまま困惑するルルーシアには見えないように。
「……………結婚しよ。ルルーシア。」
ランジュは口元を歪め、ニタリと笑った。




