その15
「…………海だぁ。」
その日の午後。
ルルーシアはひとり、海辺に面した公園で一息ついていた。
特に何もすることがなくてヒマだったのもあり、
5年ぶりの町を散策した後、この公園へと辿り着いたのだ。
「ここは変わってないんだ…………。」
自分の記憶に残る景色と何も変わっていない。
町には知らない店や建物がたくさん増えていたが、
変わらない景色もあるのだとホッとする。
そんな懐かしさのようなものを感じつつ、
先ほど散策途中で買ったドーナツを食べながら
ポーッと海を眺めていたルルーシアだったが、
「…………ってか、
ここってデートスポットだったの?」
小さな声でつぶやいて、キョロキョロと辺りを見回す。
………き、気まずい。
どこのベンチでも男女が仲良さげに密着して座り、
顔を見合わせてはウフフと見つめ合う。
そろそろ日が暮れ始め、
海の向こうに夕陽が沈み始めているという
なんともロマンチックな情景の中、自分は一人。
……………いいなぁ。
あんなふうに自分も、
いつか誰かを好きになる日がくるのだろうか。
どこぞの悪魔のせいで男性に苦手意識はあるものの、
結婚したくないわけではない。
もちろん恋人同士としての時間も味わってみたい。
だがどうしても、男性と知り合い仲良くなり、
それじゃあお付き合いを。となると、
なぜかあの悪魔のことを思い出し、躊躇してしまう。
それぐらい自分にとってランジュの存在は、
恐怖の塊として強く根付いているのだ。
「………………帰ろ。」
ハァ。と小さなため息をついて、ルルーシアは立ち上がる。
もしかしたら自分は、
一生恋愛とは無縁で生きていくのかもしれないと
どんよりとした気持ちを抱えたルルーシアの耳に、
「あぁぁぁっ?!」
悲痛な叫び声が聞こえた。




