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その愛、猟奇的につき。  作者: ようかん
10/26

その9



引きずられるようにランジュに連れて来られた部屋の前で、

ルルーシアは最後の抵抗といわんばかりに足に力を込め、

その場で踏ん張りながら部屋に入るのを拒否していた。


「…………ルル。いい加減にして。」

「いぃぃ………やだぁぁ…………!!」


意地でもここから動くものかと、

渾身の力を振り絞って動こうとしないルルーシアと、

その姿を呆れた目つきで見ながら彼女の腕を掴み、

部屋へと引きずりこもうとしているランジュを、

扉の横で待機していた護衛がオロオロと見ている。


「…………ルル。言うこと聞いて。」

「む、むりっ………ムリムリムリっ。」

 

首を横にブンブンと振りながら抵抗するルルーシアに

苛立ちを募らせたランジュはさらに力を込めて

彼女の腕をグイッと引っ張る。


最初から勝てるはずがないとわかりきっているのに、

この"ウサギ"は昔っからこうだった。

おとなしく捕食された方が痛みも少ないというのに、

なぜこんなにも抵抗の意思を見せるのか。

そしていつになったらその態度が、行動が、

こちらの気持ちを煽っていると気づくのだろう。


「…………ルルーシア。」

「!」

「…………痛いこと、されたいの?」

「ヒッ…………?!」


低くつぶやかれたランジュの声に、

ルルーシアは怯み、足に込めていた力を抜いてしまう。

その瞬間をランジュが見逃すハズはなく、

ここぞとばかりに自分の方へとルルーシアを引き寄せる。

…………が、しかし。


「ムリぃ………っ!!」


部屋へと引きずり込まれるあと一歩というところで、

バタバタと振り回していたルルーシアの手が、

そばに立っていた護衛の服をバシッと掴んだ。

これ幸いと、ギョッとした表情で自分を見る護衛に、

ルルーシアは涙目になりながら懇願する。


「お、お願いっ。助けてっ。」

「え、え?い、いや。でも………この方は。」

「助けてくれないなら一生恨んでやるからっ!!」

「え、えぇぇぇ………。」

「大丈夫、気にしなくていいよ。

 ………この子は僕の、大事な子だから。」

「や、やだ………お願いだからっ。」


もうわたしを救えるのはアナタしかいない。

そんな気持ちを込めて護衛を見つめるが、

彼は懇願するルルーシアからそっと視線を外し、

ゆっくりとした動きで斜め下に顔を向けた。

どうやら彼は、ランジュに逆らいたくないらしい。

 

「誰が来たとしても通さなくていい。」

「…………承知しました。」


ルルーシアの悲痛な叫び声と共に、

パタンと部屋の扉が閉められる。

その音を確認し護衛は、ふぅ。とゆっくりと顔を上げた。


………この部屋、防音になってるんだよな。しかも鍵付き。


誰か来ても通すなと言われたが、

どうせ部屋をノックしたところで

その音すら聞こえるかどうか定かではない。

つまり中にいる人物が自ら扉を開けない限り、

この部屋に入ることはもう難しい。


………あのご令嬢。無事に出られるといいけど。


護衛はルルーシアの身の安全を祈りながら、

自分に与えられた職務をまっとうすることにした。



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