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極東の守護神〜日本再軍備〜  作者: 007


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5/11

守護神の決断

同時刻。東京都千代田区首相官邸執務室

執務室の窓からは、まだ薄明るい空が広がっていた。

外の喧騒はほとんど聞こえない。厚い防音ガラスと、官邸を取り囲む厳重な警備が、都心の朝を遠ざけている。

大野田喜美総理大臣は、執務机の前に座ったまま、静かに目を閉じていた。

右手の指先で、机の端を軽く叩く仕草だけが、彼女の内心のざわめきをわずかに表していた。

既に瀬戸内海では、新生日本海軍連合艦隊が出撃を開始しているはずだった。

四隻の原子力空母大和級を先頭に、灰色の鋼鉄の列がゆっくりと南西へと針路を取っている。

護衛のイージス巡洋艦長門級等の選抜徴兵で充足された若き水兵たちを乗せた艨艟が、今この瞬間も日本の運命を背負って進んでいる。

「極東の守護神……」

大野田総理は、小さく唇を動かした。

国民世論が新生日本軍に与えたその称号。13年前の屈辱と被害、そして覚醒の果てに生まれた言葉だった。

彼女はゆっくりと目を開け、壁に掛けられた日本の国旗と、隣に並ぶ新生日本軍の軍旗を見つめた。

13年前──2027年。

当時彼女は参議院議員であり、特命担当大臣(国家安全保障担当)として閣内にいた。

中国が台湾への大規模侵攻を開始しようとした時、世界はまだ『可能性の問題』だと楽観視していた。

しかし中国は動いた。通常弾頭による弾道ミサイルの飽和攻撃が台湾全土を襲い、アメリカは中東の泥沼化したイラン戦争に戦力を吸い取られ、対応が遅れた。

日本は史上初の存立危機事態を認定し、海上自衛隊を派遣した。

結果として護衛艦2隻を失い、本土にミサイルが着弾し、827名の死傷者を出した。

その後、中国の白紙講和を受け入れながらも、わずか3週間後に台湾が再侵攻され、完全制圧された。

アメリカとNATOは「これ以上の拡大をしなければ容認する」と表明し、日本を蚊帳の外にして決着をつけた。

あのときの無力感と怒り。

『梯子を外された』という国民の叫び。

ミュンヘン合意に匹敵する愚策だという非難の嵐。

大野田喜美は、そのすべてを間近で見た。

「もう二度と、他国に日本の命運を委ねることはない」

彼女はあのとき、心に固く誓った。

中市早苗美総理(当時)の下で、特命担当大臣として再軍備を全力で支援した。憲法改正の国民投票では、82%という驚異的な賛成率で第9条が改正され、日本は『普通の国』として軍隊の保有を認めた。

その後、大野田は衆議院への鞍替え選挙で当選し、再軍備の最前線に立った。

『再軍備計画』を推進し、選抜徴兵制の導入、原子力空母大和級の建造、イージス巡洋艦長門級等の建造、次世代戦闘機の開発を次々と現実のものとした。

やがて民自党幹事長に就任し、中市総理の信頼を一身に受けた。

中市早苗美総理の任期満了後、大野田は民自党総裁選に出馬。

圧倒的な支持を得て総裁に就任し、首班指名選挙で内閣総理大臣となった。

現在3期目。

中市総理が残した「日本は自らの手で自らを守る」という意思を、彼女は確実に受け継いでいた。

大野田喜美は、静かに息を吐いた。

「大丈夫……」

自分自身に言い聞かせるように、声に出さずに呟いた。

中国は依然として覇権を振りかざし、尖閣諸島周辺で武力示威を繰り返している。

13年前の屈辱を繰り返すわけにはいかない。

日本はもう、ただ守られるだけの国ではない。

極東の平和を、力で守る存在にならなければならない。

机の上に置かれた電話が、静かに光を点滅させた。

秘書官からの内線だ。

「総理、移動の時間です。国防省中央指揮所へお移りいただきます。」

秘書官の声は落ち着いていたが、わずかに緊張が混じっているのがわかった。

大野田総理はゆっくりと立ち上がり、執務机の上の書類を一瞥した。

最上段に置かれたのは、今日未明に発せられた中国に対する最後通牒の正式文書だった。

国民世論の圧倒的な支持のもと、日本はついに自らの手で戦争の火蓋を切った。

彼女は国旗に向かって軽く一礼し、執務室のドアに向かった。

背筋を伸ばし、足取りは力強い。

13年前の無力だった自分とは、もう違う。

「行きましょう」

大野田喜美総理は、短く答えた。

執務室のドアが静かに閉まる音が、首相官邸の朝に小さく響いた。

外では、すでに新たな時代の風が吹き始めていた。

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