プロローグ
可能性が高い事態ですが、あくまで架空戦記です。
2040年6月15日午前6時、瀬戸内海。朝靄がまだ立ち込める湾口に、巨大な影が四つ、静かに浮かんでいた。
原子力空母大和・武蔵・信濃・大鳳。新生日本海軍、連合艦隊の主力である4隻の原子力空母大和級は、まだ薄暗い空の下で灰色の艦体を朝の光に濡らしていた。各艦の飛行甲板には、艦載機が整然と並び、待機している。艦橋の最上部では、軍艦旗が風に勢いよくはためいていた。
その4隻の巨艦を囲むように、護衛の各種艦艇が静かに隊列を組む。そして選抜徴兵で充足された新世代の水兵たちが、甲板に整列して敬礼を捧げていた。
原子力空母大和の艦橋指揮所に立つ大和空母打撃群司令官黒崎信一郎中将は、双眼鏡を下ろし、低く静かな声で命じた。
「全艦、順次出港。針路、南西。」
号令一下。
まず大和が動き始めた。巨大な艦体がゆっくりと湾内の水を切り、波を立てながら前進する。
続いて武蔵・信濃・大鳳が続き、その後ろに各種艦艇が続き隊列に加わる。新生日本海軍が、これまでの歳月をかけて育て上げた、極東最大級の海上打撃集団だった。
岸壁には、数万人の国民が見送りに詰めかけていた。
誰もが無言で、ただ静かに手を振っている。
13年前に味わった戦後初の本土被害、台湾が中国の支配下に落ちた屈辱、そして『もう二度と他国に命運を委ねない』という固い決意が、彼らの胸に刻まれていた。
大和の艦橋から黒崎司令官は、ゆっくりと振り返った。
後方には、まだ朝焼けに染まる日本の本土が遠ざかっていく。
「我々は守るためだけに生まれたのではない」
彼は独りごちるように小さく呟いた。
「我々は、極東の平和を、力で守るために生まれたのだ」
風が強くなった。
4隻の原子力空母大和級を先頭に、連合艦隊はゆっくりと瀬戸内海を航行する。
灰色の艦列は、まるで新たな時代の始まりを告げる鋼鉄の龍のようだった。
針路は南西──東シナ海。
そしてその先には、依然として覇権を振りかざし続ける中国が待ち受けている。
新生日本軍は、今日、この瞬間から、
自らの手で、自らの運命を切り拓く。




