デートの開幕台詞
お茶会の所為で夜更かしした俺達が起きたのは、午後二時。出掛けるにも昼ご飯を食べるにも微妙な時間だ。
「二人揃って午後までグッスリだったね……」
「午後二時か。ちょい遅いけど、朝昼合わせたご飯食べるか。せっかくだから外にする?」
「ッ!? ま、任せて! オススメのお店を見つけてあるから!」
「へぇ、そうか。ならそこ行こう」
「うん! それじゃあ一時間―――いや五―――三十分待って!!」
そう言うと、花咲さんは急いで自分の部屋―――と思いきや、風呂場に向かった。昼ご飯を食べる為だけにシャワーを浴びるのか。俺は外用の服に着替えるだけなのに。これは女性にしか分からない常識なのだろうな。
服を着替えて玄関で待っていると、ドタドタと足音を鳴らして花咲さんがやって来た。
下着姿で。
「カナタ君! シックとカジュアル、どっちが良い!?」
「……見てて寒そうじゃない服」
「分かっ、た? うん、分かった!」
納得したようなしなかったようなまま、花咲さんは部屋に駆け戻っていった。シックとカジュアルの二択を迫られても、そもそもその二つがどんな服なのか分からん俺に聞かれても困る。
それにしても、あの下着のまま服を重ねるのか。あんなスケスケ見せられたんじゃ、滅茶苦茶防寒具を着込んでも(でも下着スケスケなんだもんな)とチラついてしまう。
それから十分後。花咲さんは宣言通り三十分で身支度を終えて来た。漫画家みたいな帽子。落ち着いた色のコートの下に、体型の良さが映える上下の服。真のオシャレかどうかは分からんが、俺はオシャレだと思う。
「お待たせ。それじゃあ、行こっか」
さっきまで慌てふためいてた人間とは思えぬクールさ。ここで指摘しては機嫌を損ねるので、出かかってた言葉を出さぬよう口を抑えて頷いた。
家の鍵を掛け、いざ店へ……と思い振り返ると、花咲さんが若干コートを着崩して決めポーズを取っていた。
「……なにさ」
「いや? 別に?」
そう言いつつも、花咲さんは別のポーズを決めるだけで、俺に何かを訴え続けている。
ああ、そうか。
「服。似合ってるよ」
「……どんな風に?」
「コートの色が秋らしい。帽子がなんか良い。限られた時間の中で選んだにしてはシャレてる。まだ必要?」
「肝心な事がまだだよ?」
肝心な事って、なんだ? てっきり服を褒めてほしい女心だと思ってたのに。
まじまじと花咲さんを観察しながら考え込んでいると、突然花咲さんが髪を手でなびかせた。
「「……」」
「あ、あれ……? ふ、ふん! 早く行こ!」
花咲さんは怒って先に行ってしまった。結局何を言わせたかったのか分からないまま。
「分からんものだな。女心というものは」
再度家の鍵を閉めたか確認した後、花咲さんを追いかけた。




