自業自得
放課後になり、部活に行くタケシと別れを告げた後、リンの教室に向かった。ところがリンは頼まれ事をやっているようで、終わるのに三十分は掛かるとリンのクラスメイトから教えられた。
それなら「玄関前で待ってる」と伝言を任せると、リンのクラスメイトは静かに涙を流しながら満足気に親指を立てた。相変わらず俺とリンの関係に熱中しているようだ。
玄関前で待っていると、昼休みに会った先輩方が玄関から出てきた。俺の顔を見るや否や、まるで化け物を見るような怯えっぷりで男性陣が逃げ出すと、それを追うように女性陣も逃げてった。
それから間を置いて、今度はリアナ先輩が出てきた。急いで来た様子のわりに、玄関前で足を止めた。視線の先は、もう姿が見えなくなった先輩方に向いている。
「……置いてかれたんですか?」
「うわぁ!? あ、あぁぁ!」
「奇声を上げて指をささないでください。失礼ですよ?」
「ア、アンタね! いくらなんでもやり過ぎだよ!」
「何の話ですか?」
「とぼけないで! アイツらの鼻折ったの、アンタなんでしょ!? 何もしてない相手の鼻を折るなんて、おかしいんじゃない!?」
やっぱりあの先輩方はリアナ先輩の差し金か。鼻血が出た程度で鼻を折ったとは過大化し過ぎな気がする。
「どうしてくれるの!?」
「どうしてくれるのって?」
「アンタの所為で、ウチが悪者扱いされてんの! もう仲間に入れてもらえないじゃない!」
「結構な事じゃないですか。悪だくみを止めずに協力するような人と縁を切れて」
「アンタには分かんないでしょうね! ウチがどれだけ頑張ってボッチにならずに立ち回ってきたか!」
「ええ、分かりませんよ」
「ッ!? アンタなんか……アンタ、なんか……!」
リアナ先輩は膝から崩れ落ちると、俺を見上げて泣き始めた。面倒臭い人だ。何をするつもりだったかは知らないが、その企みが失敗して自分が窮地に立たされると泣きだすなんて。この人はもう高校三年生なんだから、もっと賢くなるべきなのに。
いずれ去ると無視し続けたが、数分経ってもリアナ先輩はその場から動かず、相変わらず泣き続けていた。善悪関係なく、自分の傍で泣いてる人間を見向きもせず罪悪感が湧かない自分が嫌になった。
「……いい加減泣き止んでくださいよ。子供じゃないんだから」
「ウ、ウチ……明日から……ボッチ、なんだ……!」
「じゃあ新しく友達作ればいいじゃないですか。お得意の色仕掛けを駆使すれば、同性は無理でも異性を囲む事は出来るんじゃないですか?」
「他の人はイジメてたから無理~!」
「じゃあ自業自得ってわけですか。良かったですね」
「なんにも良くない~! 責任取ってよ~!」
「責任って、どんな?」
「ウチを一人にさせないで!」
嫌だと言えば簡単だが、そう言えば付きまとわれそうだ。いや、付きまとわれるならまだマシで、最悪引き籠ってしまうかもしれない。これから大学生か社会人になる人間を早々に人間不信にさせてしまうのは、流石に負い目を感じてしまう。
三年生が卒業するまで、あと五ヶ月。五ヶ月だけ友達になるか……いや、これ以上頭を悩ませる女性を増やしたくない。花咲さんだけで手一杯だし。
リンには悪いが、今日は先に帰ろう。このまま待ってても、この場を見られれば変な誤解されそうだし。
「ど、どこ行くの……?」
「帰るんですよ」
「ウ、ウチを置いてくの……?」
「置いていくも何も、俺と先輩は無関係ですから」
リンにメッセージを送り、一人で帰った。夕焼け空の下、一人で帰る家路は懐かしい寂しさがあった。




