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バッドコミュニケーション

 昼休みになって、昼ご飯を持ってきてない事に気付いた。スタートダッシュが遅れた今、購買に向かった所で買える物はほぼ無いだろう。


「カナタ! 久しぶりに一緒に飯食べようぜ!」    


「そうしたいが、持ってくるのを忘れた。久しぶりに登校した所為で、色々忘れてるな」


「教科書も筆記用具も持ってきてなかったもんな。そういうのは借りて何とか出来たが、昼飯ばかりはな。今からだと、パンの耳を揚げたやつなら買えると思うぞ?」


「そんなのあるのか。じゃあ、それとコーヒーにしておくか」


「オッケ! じゃあ、教室―――いや、リンも誘って屋上にするか!」


 そうして、タケシを先に屋上に行かせ、俺は購買に向かった。


 購買は予想通り混雑していた。商品が並んだテーブルと会計のテーブルは別。そして商品が並んでるはずのテーブルには、タケシが言っていたパンの耳が三袋残ってるだけ。既に争奪戦は終わりを迎えていたようだ。元々期待はしていなかったから、どうせなら争奪戦の真っ最中を目撃したかった。きっとイナゴの群れのように、あっという間なのだろう。


 パンの耳の袋を一つ取り、会計の列に並んだ。待っていると、前にいた女子が不意に俺の方へ振り返った。


「あれ? 君って噂になってるカナタ君じゃ~ん!」


「なんで俺の名前を―――ッ!?」


 どういうわけか彼女はやたらデカい胸を当ててきた。風船でも入れてるのかと疑ってしまう程、少し恐怖を覚える胸だ。  


「うちの学校の女の子を助ける為に、単身乗り込んだんでしょ? カッコイイ~」


 派手な金髪に、日に焼けた肌。大人の色気を帯びた表情と意地の悪い笑み。過剰な服装の着崩し。トウカさんと似たタイプだが、よりオープンな女だ。多分、三年の先輩。


「うわっ、それパンの耳じゃん。出遅れてゴミ買うしかなかったんだ~。かわいそ~」


「……初対面、で合ってますよね?」


「なぁに? ウチに興味湧いちゃった?」


「ええ。アナタ、三年の方ですよね? そんな先輩が服もマトモに着れないんだな、と」 


「……は?」


「脳が体の発育と比べて劣っていて、正常な距離を分からずにいる。男の誰もが胸を押し当てられて喜ぶと思っているなら勘違いです。迷惑に思う男もいると知っていただきたい」


「ッ!? ウッザ! 年下のくせに!」


 先輩は手に持っていたホットドッグを床に投げ捨てて去っていった。潰れてしまったが、ラップでくるまってるからギリギリセーフだろ。


 パンの耳と潰れたホットドッグを買って屋上に行くと、リンとタケシが待っていた。


「お! 来た来た!」


「せんぱ~い!」


「ごめん。遅くなった」


「なに、待ったといっても数分程度だ」


「それより先輩。ご飯、買えました? 本当は僕が作ってきたかったんですけど、ちょうど食材を切らしてて……」


「大丈夫大丈夫。ほら、この通り」


「おぉ! パンの耳と……潰れたホットドッグ?」


「まぁ、ゴミもついてないし食えるだろ。手は汚れるかもだけどな」


 そうして、俺達は昼ご飯を食べ始めた。先に潰れたホットドッグを食べた。味は問題無かったが、気を付けて食べてもやはり手が汚れてしまった。


「先輩。このティッシュで拭いてください」


「ありがとう。やっぱりハンカチくらい持ってなきゃ駄目だよな」


「それにしてもカナタ。それどうしたんだよ? 落っことしたのか?」


「落とした、というより、落ちたのを拾ったが正しいな」


「先輩!! バッチイですよ!?」


「でも、もったいなかったし。列に並んでる時、変な先輩に絡まれてさ。タケシは知ってるか? 派手な金髪で、褐色。あと無駄に胸がデカい」


「金髪、褐色、デカいオッパイ……もしかして、リアナ先輩じゃないか?」


「なんだそれ。ハーフか?」


「いや、今時こういう名前も普通だろ。それでさ、リアナ先輩って人は結構有名なんだぜ? まぁ、悪い意味でだけど。色んな男と付き合ってるとか、よく補導されてるとか。俺達のような品行方正な良い子ちゃんとは真逆な人だよ」


 見た目通りの人間というわけか。分かり易くて逆に好印象だな。


「……先輩」


 リンが俺に疑惑の目を向けてきた。勘付かれたか。無駄だろうが、リアナ先輩の話を早々に打ち切って、話を逸らしてみるか。


「どうしたリン。別に俺はあの人に惹かれてないさ。それより、今日の天気はすこぶる―――」


「その人に、何か余計な事を言ってませんよね?」 


「……ちょっとだけ」


「何言ったんですか?」


「……迷惑ですって言った。それだけ」


「絶対それだけじゃないですよね? カフェでタケシ先輩に言ったように、悪い言い方したでしょ」


「え? 俺がなんだって?」


「この人は馬鹿だから気にしませんが、噂が噂だけに、目をつけられちゃったりしたらどうするんですか!?」


「大丈夫だよ。何かしてくるようなら、それ相応の対応をしてやるだけさ」


「はぁ……ようやく学校に戻ってきたかと思ったらこれですか。先が思いやられますね」


「ンンッ!? お前ら見ろよ!! カツだと思ったら衣だけ! スッカスカだ! ハズレ弁当だよハズレ弁当! ウッヒョ! なんかテンション上がるぅ!」


 リアナ先輩か。問題を起こさず平穏に過ごそうと思ってたのに、予想外の刺客だ。幸い学年が違うのもあり、向こうから来る以外で会う事は無いと思う。仮に対面した時は、今日の事を謝っておこう。謝るだけで済めばいいが。

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