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 朝になると、雨は止んでいた。眠ったはずなのに、眠れた気がしない。映画のカット割りのように、物事が進んでいく。今は、車で帰ってる途中か。


「ゆっくり出来なかったみたいだね。二人共」


 トウカさんに言われ、バックミラーから後部座席の様子をうかがうと、花咲さんはグッスリと眠っていた。


「ハルったら。せっかく二人きりにさせてあげたのに」


「俺と花咲さんをくっつける為だったと?」


「そうじゃなきゃ、キャンプなんか連れてこないって。アタシってハルの友達だし。ちなみに前に海の家でバイトさせたのも、今回同様」


「仲人ですか、アナタは……」


「恋のキューピットと呼んでよ。まぁ、前回も今回も、君を自分の物に出来なかったようだけど」


「俺の事情も、少しは考えてくださいよ……」


「……あぁ、そういう事。ごめん、盲点だった。もう相手がいたんだね」


 言葉だけかと思ってトウカさんの方を見ると、意外にも申し訳なさそうにしていた。赤信号で停車すると、トウカさんは眉間を指で突っつき。唸るようなため息を吐いた。


「意外、ですね。その、そういう事を考えて……」


「軽い女だと思ってた? まぁ、無理もないよね。でも一応、超えちゃいけないラインってのは自覚してるつもり」


 信号が青になり、再び車を走らせると、トウカさんはタバコを吸い始めた。


「そっか~。君とハルは、お似合いだと思ったんだけどね」


「どうして?」


「なんていうかな……知り合い同士が付き合う時って、そういう予感があるじゃない。そういう予感が君とハルにもあったんだけどな~」


「それはトウカさんの願望じゃないですか」


「でも当たるんだよ? そのおかげで、今まで男女のトラブルに遭った事ないし。見たり聞いたりはしたけど」


 タバコを吸い終えると、トウカさんはコンビニに寄った。タバコが切れたのだろうか?


 コンビニでコーヒーを買い、出来上がるまで待っていると、トウカさんがポテトを差し出してきた。


「そういうのは車に戻ってからにしてくださいよ」


「ちょっとくらいならセーフだよ。君はルールを厳守するタイプなの?」


「普通そうですよ」


「へぇ。もっと軽い人間に見えるけど」


「これでも規則違反をした事はありません。問題は……まぁ、少し起こしましたけど」


「ねぇ、ここだけの話さ! ぶっちゃけハルの事、どう思ってるの?」


 脈絡の無い話の切り出し方。それが本題なのだろう。


 出来上がったコーヒーにカップを被せ、車に戻った。後部座席にいる花咲さんはまだ眠っている。


 トウカさんが運転席に座ると、エンジンだけを点けてポテトを食べ始めた。まさか花咲さんについてを聞き出す為に買ったポテトじゃないだろうな。


「それで? ハルの事、どう思ってるの?」


「……好きですよ。多分、恋愛の好きだと思います」


「多分て?」


「俺には恋人がいるのに、花咲さんの事を捨てきれない。同じくらい大切な存在だと思ってたのが、ここ最近だと、花咲さんの方が大切に思えてならないんです」


「二股か~。恋人に不満があるんだね」


「何も。むしろ、俺にはもったいない女性ですよ」


「ふ~ん。それでハルを助けちゃうのか」


「あれは友人なら誰だって動きますよ」


「そうかな? いくら仲の良い友人でも、家族のゴタゴタに首を突っ込まないと思うよ。しかも解決しちゃうなんて。アタシがハルなら、何が何でも君を手に入れちゃうね」


 簡単に言ってくれる。当事者からすれば、そんな簡単にいく問題じゃないのに。


 コーヒーを一口飲むと、その味に驚いた。カフェなんかで頼むよりも低価格なのにずっと美味しい。コンビニだからと馬鹿に出来ないな。


「つまり、君はハルと恋人になるつもりはないんだよね?」


「まぁ、そうですね」


「……実はさ、アタシの友人にハルの事を狙ってる男がいるんだ。そいつにハルを紹介してもいい?」


「どうして俺に聞くんです? 花咲さんに聞けばいいじゃないですか」


「じゃあ、紹介していいんだね? 彼、結構良い男だから。後で後悔してもしらないよ?」


「決めるのは彼女です。俺には何の決定権もありませんよ」


「……冷たいんだ」


「勝手な事を言う……」   


 明日から学校へ行こう。花咲さんが行かずとも、俺だけは行かないと。そうしてこのモヤモヤを掻き消して、元の生活を取り戻すんだ。花咲さんに心を完全に支配される前に。


 俺の心から、花咲ハルを消さないと。 

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