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自分探しの旅

 久しぶりに見た我が家の外観は、とても大きく見えた。自分の家なのに、他人の家のように思える。


「ねぇ、本当にやるの?」


「ああ。俺のワガママに付き合ってくれるんだろ?」


「私はいいけど、カナタ君のご両親が納得するかな……? ご両親だけじゃなく、リンちゃんとタケシ君もそうだし……」


「もう降り切れてるんだ。反抗期ってやつだよ。非行したくてたまらないんだ」


 玄関の扉を開け、真っ直ぐ二階の自分の部屋に向かった。部屋の明かりを点けると、心なしか部屋が綺麗になってる。ゴミどころか、埃一つ見当たらない。


 とりあえず制服を脱ぎ捨て、冬用の服にコートを着込んだ。花咲さんの買い物に付き合ったのが、ここで役立つとは。


 カバンに服数着と歯磨き等が入った旅行セットを詰め、貯金していた金を全て財布に突っ込んだ。携帯を充電して持っていこうか考えたが、使う機会がもう無いので置いていく事にした。


 荷造りは数分で終わり、一階の花咲さんの部屋に向かった。階段を下りていくと、花咲さんの部屋から話し声が聞こえてきた。


「何処へ行くのハルちゃん? まさか、出ていくなんて、言わないよね?」   


「居てもいいんだよ君は。君はもう僕達の娘同然だ!」


「……オジサン、オバサン。ごめんなさい。私、ついていくって決めたんです」


「ついていくって、誰に?」


 今あそこに行けば、面倒な事になりそうだ。それこそまた監禁されかねない。広い家で一人過ごすのも酷だが、檻の中の生活も同じようなものだった。


 足音を立てずに玄関へと行き、花咲さんが部屋から出てくるのを待った。


 しばらくして、花咲さんは二人の静止を振り切って玄関へ駆けて来た。その際、出ていこうとする花咲さんを目で追った二人と目が合った。父さんも母さんも、まるで死人を見たかのような呆気に取られた表情で、その場を動けずにいた。


「お待たせ! じゃあ行こう!」


「だな。そういう事だ、父さん母さん。俺は今日からしばらく反抗期だ。目障りなのが消えて、これで好きな仕事に没頭出来るな」


 かねてより抱えていた両親への不満を分かりづらく、かつ不躾に吐き捨てた。


 そうだというのに、父さんも母さんも、笑みを浮かべていた。互いを抱き合って、非行に走る俺の姿を嬉しそうに眺めていた。


 親が親なら子も子という言葉のように、あの二人も結局は俺を息子としてでなく、そういう作品として愛していたんだ。


 不思議だ。悲しいはずなのに、全く胸が苦しくならない。むしろ清々しい開放感。結局俺は心の底で、あの二人を憎んでいたのだろう。


「元気でな! クソジジイ! クソババア!」


 俺の言葉に嬉しそうに泣いて見送る二人に背を向け、花咲さんを連れて家出した。


 夜の十一時。あと一時間で次の日に変わる夜更け。


 俺は自分探しの旅に出た。

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