表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/124

帰路

 歩いても歩いても見知らぬ道。民家は無く、車の通りも無い。携帯は充電切れ。


 外へ出れたのはいいが、これでは状況を打破したとは言い切れない。車で移動中に外の景色を眺めていたけど、だからといって帰れるわけじゃない。寒さと一文無しな事からして、動けるのは二日。それ以降は野垂れ死にだ。


「リン、怒るよな~」


 こうして歩き続けている理由が花咲さんな事は黙っていよう。


 そもそも、今どうなってるんだろう。監禁されて今日に至るまで掛かった日数が分からない。一週間程度なら、そんなに大きく騒がれていないんじゃないかな。二週間とかになると、然るべき場所に連絡をされてると思うけど。でも水瀬さんの死に際の言葉から察するに、騒がれてるんだろうな。


 しばらく歩き続けていくと、ようやく建物が点々と存在するようになった。訪ねて電話を借りればすぐに済むが、どうも不在のよう。楽をするなと言われてるようだ。


 暗くなり、雪が降り始めた頃。ようやく見知った道まで戻ってこれた。ここまで来れば日を跨ぐ前に家に着きそうだ。


「あ」


「あ……」


 ちょうど曲がり角で、花咲さんと出くわした。着ている暖かそうなコートに見覚えがある。いつかの買い物付き合いで買った物だろうか。 

     

「久しぶり。見知った顔を見れてホッとしたよ」


「……カナタ君」


「まぁ、いつもの事ながら面倒ごとに巻き込まれてさ。やっぱり厄年なのかな?」


「……カナタ君だ」


「それ二度目。そんなに変わってないでしょ? 鏡見てないけど」


 花咲さんは恐る恐る俺の頬に手を伸ばし、感触を確かめた後、勢いよく胸に抱き着いてきた。


「なんでそんなに平気でいるの……! なんでいつも危ない目に遭ってるの……!」


「だから厄年―――」


「うるさい!! 色んな人を心配にさせてさ、そのくせ自分は飄々として……! 心配……してたんだよ……!?」 


「……アオってさ。生きてたり、するよな?」


「……」


「だよな……そう、なんだよな……」


 花咲さんを強く抱きしめた。寒かったからか、胸の奥から温まる感覚が全身に広がっていく。忘れてた人の温もりだ。自分で自分を抱きしめて寒さを凌ぐのとは、やっぱり違うな。


 すると、腹の音が鳴った。安心したおかげで、俺の体が正常に戻ったようだ。


「腹減った。花咲さん、財布持ってる?」


「……何でも奢ってあげるよ」


「ごめんね。今度ちゃんと返すから」


「いいよ、返さなくて。元を辿れば、財布の中身はカナタ君の家のお金だし……」


「じゃあ遠慮なく頼ませてもらうよ」


「あ、えっと、でも、上限があるからね? その上限をちょうど良い感じで使い尽くさないようにっていうか」


「元を辿れば俺の家の金だろ?」


「そりゃそうだけど。私の、お小遣いだし……」


「ケチ言うなよ。久しぶりの再会だぞ? 財布の紐を緩める絶好の機会じゃないか」


「……そうだよね。今日は荒遣いしちゃおっかな!」


「そうこなくっちゃ。で、いつ離れてくれるの?」


「んん~?」


 最初こそ花咲さんの温もりで暖を取っていたが、段々と窮屈に感じてきた。手で離そうとしたが、力負けしてしまっている。マトモな食事も摂れず、監禁生活が続いた弊害だ。


「花咲さん」


「もうちょっといいじゃない。久しぶりにカナタ君を抱きしめてるんだから。本当に、久しぶり……本当に」


「……なぁ、俺ってどれくらい行方不明になってたんだ?」


「ほぼ一ヵ月。もう十二月になるよ」


「一ヵ月……一ヵ月か……」


「知らなかったの? 厄介ごとに巻き込まれてたって、一体どうしてたのよ?」


「ちゃんと話すよ、ご飯食べながら。もうとにかく行こう。この際、抱きしめたままでいいから」


「やった! じゃあ、いつものファミレス行こうね!」


 そうして花咲さんは離れると、今度は腕に抱き着いてきた。


 一ヵ月か。やっぱり狂ってたんだな、色々と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ