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野菜スープ

 目を閉じてしばらくジッとしていたおかげで、頭以外は万全となった。後頭部の傷は痛みというより違和感で、常時と違うその違和感にイライラしてしまう。閉じ込められてる身で言うのもなんだが、閉じ込められていて良かった。拘束程度なら、這ってでもあの女を殺しかねない。 


 檻の強度を確かめてみた。鉄筋が天井から床に突き刺さっており、頑丈に固定されているようでビクともしない。出入り口部分はガンガンと音を鳴らすが、単純な力でこじ開けられる脆さではない。ならば鉄筋が刺さっている床か天井を壊そうとしたが、天井は手が届かず、床はカーペットに隠されているが硬い事から察するにコンクリートのようだ。


 窓から出ようとしたものの、窓は小さく、完全に開けても通り抜けられない。叫んで助けを呼ぼうにも、外は強風と共に雪が降っていて、声はかき消されてしまう。


 今の所、ここから出る事は不可能。出られるとしたら、外の悪天候が晴れた後か、あの女が再びこの部屋に来る時。檻に近付いたタイミングでどうにかして気絶させ、持っている鍵を奪う。どちらにせよ、時を待つ他無い。


 それからしばらく経っても、外の悪天候は止まず、あの女も部屋に来ない。暖房を置くほど俺を重要視していないのか、あるいは余裕が無かったのか、部屋は寒くなる一方。幸い人形が被っていた毛布が多少温めてくれるが、このままでは風邪をひきそうだ。


 毛布に包まっていると、部屋の扉が開いた。やっとあの女が現れた。


「あの……これ」


 そう言って持ってきたのは、薄暗い部屋の中でも目立つ湯気が立ったスープ。女はトレーの上に乗せたスープをこぼさないように慎重に檻に近付き、一旦床に置いた。


 そのタイミングで檻の隙間から手を伸ばし、女の髪を掴んで思いっきり檻にぶつけた。確実に気絶させる為、それからイライラ発散の為、何度も女の頭を檻にぶつけた。


 掴んでいた髪を離すと、女は力無く倒れた。その隙に女のポケットを探ってみたが、何処にも鍵らしき物は無い。落胆しかけたその時、女の前髪に留めてあるヘアピンが目に入った。パチリと留めるタイプじゃなく、挟めるタイプのヘアピン。これで鍵を開けられるんじゃないか?


 そう思い実行したが、それは楽観的思考だとすぐに気付かされた。品行方正な俺がピッキングのやり方など分かるはずもなく、鍵穴にヘアピンを差してガチャガチャするだけで終わった。


 さて、どうしようか。鍵を持ってるものだと思って暴力を行ってしまったが、結果的に檻から出られず、これによって女は俺に危機感を持つようになってしまう。自分で自分の首を絞めてしまった。


 とりあえず、食事にしよう。檻の近くに置いてあるスープは隙間から手を伸ばせば食べられる。スープは野菜と鶏肉が沢山入った野菜スープ。味は生姜が効いているが薄味で、食べられないほどじゃないが食べたい味ではない。病院食は薄味というが、こういう風なのか? まぁ、温かいだけ食う価値はある。


 空腹という事もあり、スープはあっという間に食べ終わった。食べ始めた時は薄味だとケチつけたが、生姜のおかげか、ただ温かいスープを飲むよりも体が温まった。せっかく温まった体が再び冷えぬよう毛布に包まり、とりあえず女が起きるのを待った。


 いつまで経っても動かない女に若干焦りが生まれていたが、ピクリと指先が動くと、ムクリと体を起こした。痛みが走る頭を抑えながら、何が起きたのかを整理している様子の女がこちらに振り向くと、その瞬間に思い出したのか、まるで化け物を見たような悲鳴を上げて後退りした。


「……謝っても意味無いと思うけど……すみませんでした。頭、痛みますよね?」 


 そう言った後、俺はどうして謝って心配しているのだろうと、自分自身が不思議に思えた。


 すると、女は頭上に?が浮かんだような表情を浮かべ、頭の痛みに顔を歪ませながら座り直した。


「……謝らないで、ください。閉じ込められて、良い気はしないですもんね」


「そうと分かっていながら、俺を出す気は無いんですね?」


「……ごめんなさい」


「改めて聞きたいんですけど、どうして俺を閉じ込めるんです? 何か聞きたい事があるのなら、普通に聞けばいいじゃないですか」


「……スープ。飲んでくれたんですね」


「腹、減ってますから……用意してもらって、ありがとうございます」


「……これ、片付けてきます。その後、また来ます。その時に、お話ししましょう」

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