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第1話 選ばれし者《イマジナリーワン》

以前に公開した「妄想英雄」イマジナリー・ヒーローの構成を一から見直して

ストーリーを改訂したバージョンです。

二周目のパラレルワールド的な感じで書いてますので、新作扱いですがご容赦くださいませ!

 教室の窓から見える空は、いつだって灰色の光を放っていた。


 巨大な球体の要塞ネオ・オムニスフィアが、まるで月のようについて回る。


 現在の地球の為政者こと支配者オーバーマインドのシンボルだ。


 この世界では、思考停止が美徳とされた。


 放課後の教室で、級友たちはスマホを眺めていた。彼らは、ニュースアプリに表示された、


 【今日の精神エネルギー量:管理区域23-β、成長率89%】


 という見出しを見ても、眉一つ動かさない。

 ただ「へえ」「すごいね」と呟くばかりだ。


 この数字が何を意味しているのか深く考えようともせず、まるで感情を失った人形のようだった。


 俺は机に突っ伏しながら、小さく呟いた。


「くだらねぇ……」


 教室のスピーカーから、朝の放送が流れてくる。


 いつもの「忠誠ポイントのお知らせ」だ。


「本日の課題:支配者オーバーマインドへの感謝をSNSに投稿。ポイント2倍キャンペーン実施中!」──ふざけんなよ。


 スマホを握る級友たちの指が、まるで機械みたいにカタカタ動く。誰も文句ひとつ言わない。まるで、頭の中が空っぽのロボットだ。


 窓の外では、監視ドローンがブーンって不気味な音を立てて校庭を旋回してる。


 銀色のボディに赤い光がチカチカ光って、まるで俺たちを睨んでるみたいだ。

 ドローンはご丁寧に毎日、朝7時と昼12時にピッタリ現れる。


 まるで「逆らうなよ」って脅してるみたいに。

 

 昨日、コンビニで買った弁当のパッケージにも、「支配者オーバーマインド監修済み」のマークがデカデカと印刷されてた。


 噂じゃ、弁当の中のチップが俺たちの生活習慣を記録してるらしい。

 俺たちは家畜かよ。

 なのにだ、むしろ健康に良いからとかいって誰もそんなこと気にしてねぇ。


 街中の電光掲示板には、「服従のなかにある幸福」「無意識という平和」なんてスローガンが24時間流れ続けてる。


 大手メディアも、企業も、まるで支配者オーバーマインドの飼い犬みたいに忠実に、奴らのプロパガンダを垂れ流す。


 この世界、全部が灰色だ。


 空も、人も、未来も。誰も疑問を持たねぇ。誰も戦おうとしねぇ。


 けど、俺は違う。


 こんなクソくらえな世界、俺が変えてやるって決めてる。



 俺の名前は、神崎シン。



 教室の誰も、俺に話しかけない。

 ていうか机に近寄ろうとすらしない。

 人は自分と違う、異様な存在を敬遠するもなのだ。


 つまり俺は”ぼっち”だ。


 昔からそうだった。


 公園で子供たちがキャッチボールをする中、一人だけ木陰に座って空を見上げていた。


 ──空の向こうには、人類に見えざる天空の城がある。

 闇に包まれた次元の狭間。その最奥にある玉座で、封じられし魔王が目を覚ますのを待っている……。


 俺には分かっていた。


 この世界の裏には"真の理"が隠されていて、俺たちは強力な闇の力によって支配されていることを。


 そして、俺こそがその秘密を解き明かす"選ばれし者"だということ。

 これは陰謀論じゃない。断じて違う。

 俺の中の、この世界の"設定"なのだ。


 何を言ってるか分からないって?

 つまり俺は、この世界の"設定"を、幼少の頃からひたすら脳内で組み上げ、想像し、その地図を広げ続けているんだ。


 幼稚園の頃は、それでも許された。


 むしろ、「想像力が豊かな子」として、優しい先生や、好奇心旺盛な女子たちに囲まれることすらあった。


 だが、小学生になると──「ちょっと変なヤツ」認定。

 中学生になる頃には──「ヤバいヤツ」認定。

 そして現在、高校では──「関わらない方がいいヤツ」認定だ。





 気づけば、俺の居場所はクラスの隅に"固定"されていた。



 誰も話しかけてこない。担任の先生ですらスルーしている。

 べつにリア充どもの輪に入りたいわけじゃない。

 俺は一人で妄想してるのが好きだし、友達が欲しいとも思ってない。


 昼休みに机を寄せ合って、恋愛だのゲームだのしてる連中を見ても、何も羨ましいとは思わない。



 むしろ、俺は──そんな"小さな世界"に収まる男じゃない。


 何せ、俺は世界を救った英雄の転生者。この体には "魔王" を倒すための偉大な力が封じられているのだからな……。


「──俺の能力が覚醒する時、世界の理は書き換わる……」


 そう小声でつぶやいた瞬間、視界の端がぐにゃりと歪んだ。


 一瞬、教科書に載っているはずの「支配者オーバーマインド」の紋様が、漆黒の炎に包まれて砕け散る幻覚を見た気がした。


 ゾクリと、背筋に冷たいものが走る。

 気のせいか?いや、最近、こんな"異常"な感覚が時々起こる。

 まるで、俺の妄想が、本当に世界を侵食しようとしているかのように。


「うわ、神崎がまた何かブツブツ言ってるぞ……」

「やっべぇ、本当にあいつ病気じゃね?」

「ていうか《奴ら》に地球が支配されてんのに、まだ妄想とかしてんの?」


 ──はい、来ました。お決まりの反応。

 そして、それを聞きつけた "もう一人" が、俺のそばにやってくる。


「……ねえ、何がアナタをそうしちゃったわけ?」


 背後から、呆れたような声がした。

 俺は振り返る。


 露崎ユリ──俺の幼馴染であり、かつて 『唯一の理解者』だった存在。

 今ではクラスカーストのトップ枠に座る "美女" だ。


 ユリは、サラサラと風に揺れる黒髪を指先で弄びながら、俺を見下ろしていた。

 透き通るような白い肌に、凛とした切れ長の瞳。整った顔立ちは、大人びた美しさを醸し出し、同時にどこか冷たさも感じさせる。

 実際、彼女はクールな性格で、表情を大きく崩すことはあまりない。


「……何がだよ」


「厨二病って中学生まででしょ……もう高校生なのに」


「子供の頃はみんな同じように妄想してたろ……特に"おまえ"は」

 俺はため息混じりに答える。


「な、どういう意味よ」


「お姫様の"おまえ"が、閉じ込められてる塔に、俺が"勇者"になって助けに行く遊びとか、地球を支配する悪魔を倒すために"秘密基地"でやった作戦会議とか、"おまえ"の身長を伸ばすために"進化の石"を探す冒険とか──ユリ……おまえだって、そういう設定が大好きだったじゃないか」


「ちょ……それは、子供の頃の話でしょ!小さい頃は誰でもそんなものじゃない!」


「つまり俺は変わってない、それを続けてるだけだ。俺以外が、おまえらが変わっちゃったんだよ」


 ユリは、じっと俺を見つめた。

 その瞳には、冷たさと、わずかな迷いが入り混じっていた。


 すると彼女は、一瞬遠い過去を見るような目で、ぶつぶつとつぶやいた。


「あの時の、アナタは、もっと眩しかった……のに」


 そして、まるで"答えに詰まった"かのように、一瞬だけ視線が揺れる。


「え?なに」


「……もういい」


 ユリはそれ以上何も言わず、くるりと踵を返して去っていった。

 

 俺は小さく笑う。


 こんな俺の言葉でも、少しくらいはユリに届いたらしい。

 (最後のはなんて言ったかわからなかったが)


 だが、それでも彼女は俺の"設定"には、もう帰ってこない。

 あの頃の"秘密基地"には俺以外……もう誰もいない。


 それでもいい。


 何せ、俺は "選ばれし者" だからな。


 ……こうして、俺の妄想は昔から、常に止まることがない。

 そう、俺が変なんじゃない。周りが勝手に、変わったんだ。

誰もが一度は患う厨二病。

学校の行き帰り、授業中、いろんな妄想で世界を壊そうとしたあの恥ずかしい日々・・・

そんな馬鹿げた黒歴史なチート能力が本当にあったとしたら・・・

世界は、クソゲー化するみたいな感じ、みんなありましたよね??


ボクはそんなバカな妄想なんかしたことないですよ。

リアリストですあらね!ほんとですよ!

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【妄想英雄】キターーー!!! 待ってましたよ、『俺たちの戦いはこれからだ!』でスリープモード(休載)した第1シーズン(改稿前)からの復活を! 待ってる間、「宇宙人の超弩級母艦、丸ごと圧縮してピンポン…
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