特命機関夏目リサーチー特別編
絹を引き裂くような?榊の叫び声に、笠置が厨房に駆けつけると、笠置はぎょっとした。
榊が冷蔵庫に吸い込まれようとしている。
笠置は、引き戻そうとしたが、抵抗が大きすぎる。
「みんな、来てくれー!!」
「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 =========================
笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。分室リーダー。
高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。Web小説ライターでもある。
榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。分室のまかない担当?
夏目警視正・・・夏目リサーチのオーナー。
夏目優香・・・夏目の妻。夏目リサーチの社長。
夏目朱美・・・優香の妹。夏目リサーチの副社長。
真中瞳・・・池上病院看護師長。
===============================================
絹を引き裂くような?榊の叫び声に、笠置が厨房に駆けつけると、笠置はぎょっとした。
榊が冷蔵庫に吸い込まれようとしている。
笠置は、引き戻そうとしたが、抵抗が大きすぎる。
「みんな、来てくれー!!」
マッチングシステムのマシンの周りにいた、高山、夏目、優香、朱美が駆けつけ、笠置の体に順々にしがみついた。
吸引力は、予想以上に大きかった。
何もない空間に、6人の男女は放り出された。
いや、元6人と言うべきか。
榊は牛に、笠置は馬に、高山は猪に、朱美は羊に、夏目は豚に、優香は鶏に変身、いや、変貌していた、顔が。
一同は、冷蔵庫のあった場所に行ったが、大きな鍵穴があるのみで、扉は無かった。
「SFの世界みたいだな。」と、夏目が言い、「アニメの世界だわ。」と優香が言った。
「いや、ゲームの世界でしょう。何者かが、我々を嵌めたんだ。」
高山の言葉に、「毎晩、肉食ってたから、祟られたかな?」と榊が情けない言葉を吐いた。
「とにかく、脱出しなくちゃな。どうした?笠置さん。」夏目が問うと、「何となく、見た景色のような気がします。でも、思い出せない。」と笠置は言った。
「大きな鍵穴があったわね。どんな鍵なのかしら?」と、朱美が言い、「そうよ。鍵が見つかればいいんだ。」と、優香が膝をポンと叩いた。
前後左右上下、真っ白な景色の空間を、一同は列をなして、進んだ。
100メートルほど先に、それはあった。鍵だ。
一同は、山勘で戻るよりは、真っ直ぐ進むことにした。
目印が無いのである。
また、100メートル先を進むと、それはあった。鍵穴だ。
見た所、皆が入り込んだときに出現した鍵穴と、そっくりだった。
笠置が、持っている鍵を差し込んだ。回らない。
夏目が子細に調べて、「やはりな。鍵穴と鍵の厚さが違う。『合せ鍵』だよ。」と、溜息をついた。
また、100メートルほど進むと、違う鍵が落ちていた。
そして、更に進むと、鍵穴があった。
今度は、夏目が試してみた。
2枚併せて鍵穴に差し込む。入らない。
夏目は、深呼吸をすると、鍵の併せ方を変えて、差し込んだ。
「やった!!」
皆が喜び、鍵穴の向こうに移動した。
まばゆい光を笠置は感じた。
「目が覚めた?」覗き込んでいたのは、池上病院の真中瞳看護師長だった。
「夢を見ていたのか。」「これで、9回目よ。過労プラスインフルエンザ。夏目さんの話じゃ楽な仕事の筈だけど。」
「実は、回顧録を書いててね。終活だな。しかし、あの夢を見たのは、これで9回目だった、か。」
「治療薬服用しているから、その内治るわ。仕事は、休暇を取りなさい、って社長命令が下ったわよ。」
真中は、笑って、病室を出て行った。
笠置は目を閉じた。「10回目になるかな?」と思いながら。
―完―
「実は、回顧録を書いててね。終活だな。しかし、あの夢を見たのは、これで9回目だった、か。」