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黒いドラゴンと、あべこべの剣。その三。

 城を守る者たちは、絶望していた。

 なぜなら。

 兵隊たちの目の前にいるのは、本来ならば彼らが命を捨てて守るべき。

 王女様その人だったのだから。


 豪華なドレスを身につけた王女様の左手から【電撃】が放たれる。

「王女様! お許し下さい!!」そう言って王女に剣で切りかかる者もいたが、その剣を王女は【魔法の盾】で防いでいた。


「酷い……」リンド・ルークは王女の目から、一滴のなみだが流れるのを見た。

 ふいに、王女様が空を見上げる。その顔の右半分はおどろきの表情をうかべており、左半分には邪悪な笑みがうかんでいた。

『あの王女はまだ半分しか心を乗っ取られていない!』ゴウラはそう言ってさらに続ける。

『だがそれも、時間の問題だ!』黒いドラゴンはそう言うと、サリアン・サイサル王女の左手が、ゴウラとリンドに向けられる。


 轟音をあげて【大電流】が放たれる。

「駄目だ! あれは避けられない!」リンド・ルークはそう叫ぶと、なぜか【大電流】はあさっての方向へ向かって行ってしまった。

『よくやった!』黒いドラゴンはリンドをほめるが、リンド・ルークには何がなんだか解らない。


「どうなっているんだ?」リンドはゴウラに聞く。

『なんだ、おまえの持っている小剣のチカラを知らなかったのか?』少々落胆した雰囲気で、ゴウラはしゃべり出す。

『おまえの持っている小剣は【あべこべの剣】と言って、持ち主が言ったことの反対をこの世界でおこす。神の剣に認定されている一振りなのだぞ』

「ぇえ?? 僕の住んでいる村では、【どんな願いでも、二回だけかなえてくれる剣】って言い伝わっているんだけど」リンド・ルークは、ベルトに挟んでいた小剣を手に取りまじまじと見る。

『私の眠っているあいだに、ずいぶんとくだらない言い伝えが付いたモノだなぁ……』そうゴウラは言う。

 リンドにとっては【ねがいをかなえてくれる小剣】の方が良かった。そう正直に思うと、なんだか小剣が光り始める。


『オ? なんだか【あべこべの剣】のチカラが上がったぞ?!』そうゴウラは興奮してしゃべり出す。

「ぼ、僕は【ねがいをかなえてくれる剣】の方が良かったって思っただけなんだけど……いけない事だったのかな」リンド・ルークは、正直にそう言った。

『ハッハハ! そんな使い方があったなんて! 私では思いもつかなかったぞ!!』ゴウラは本当に楽しそうにしゃべる。


 サリアン・サイサル王女に乗り移った【魔術師の亡霊】は【大電流の魔法】が、あさっての方向へ飛んで行ったのを見て。苦々しく思う。

「おのれ、あの【魔法の剣】を使われたか。忌々しい!」サリアン王女の口からガラガラの老人の声がひびく。

「ではこれでどうだ?」【魔術師の亡霊】はそう言うと、呪文をとなえ出す。


『ムウ、いかんな!』黒いドラゴンはそう言うと、背中からはえたコウモリのようなツバサを思いっきり使って。空の上に登ってゆく。


「フハハハハ、そうれ、これならどうだ!」【魔術師の亡霊】はそう言うと【かがやく黄金の魔法陣】を王都の上空に描いて見せた。

「黄金の魔法陣で眠るグレーターデーモンよ、我が生贄を持って目を覚ましたまえ! あの黒いドラゴンに勝てたあかつきには。この国の王女の魂を与えよう!」


 その瞬間、王都に大きな地震が起きる。レンガの建物が音を立てて崩れて行き、地面にひび割れができる。

【黄金の魔法陣】から四本の腕を組んで、光るからだを持つ魔神がゆっくりとあらわれる。

『ほう? 貴様が私の相手をすると言うのか! 光かがやく闇に堕ちた大魔神よ!!』黒いドラゴンのゴウラはそう言って笑う。

『その様だな、暗黒の聖なる竜よ』グレーターデーモンは、両目を閉じてその鍛え上げた腕を広げる。


 その瞬間、ゴウラの口から【黒い雷撃】が大魔神に向かって放たれる。

『なんの!』光のグレーターデーモンは、その【黒い電撃】を左手一本でつかむ。

【黒い電撃】はまるでソレだけで生きているかのように暴れまわり、荒廃した王都に更なる大打撃を与えた。

 大地は裂けて震え、天空からは真っ黒い雨が降り荒れる。

 人々はただその理不尽極まりない【魔法】に、逃げ惑うしかなかった。

「おお……」王女に乗り付いた【魔術師の亡霊】は両手を天にあげていた。

 王女の左顔はその天変地異に喜び、右顔はただ泣いていた。


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