第9話:死神の札殲滅作戦(9)
「で? 策って?」
みんなが戦っているあたりまで下がってきてノールに訊く。
「ノールには世界と似たような能力があるの」
戦いながらシンビィがそう言った。
「ああ……、そう。じゃあそういうのは早めに使ってくれると助かるんだけど」
「そういうわけにもいかないんだ」
「どういうことぉ?! さっさとこの状況どうにかしてほしいんだけど?!」
ファアニイが文句を言った。
「結界を敷くのに少し時間がかかるんだ」
「なるほどね。その時間を稼いでくれって?」
「そう言うことになる」
「おーけー」
「そういう事なら私たちもお力添えいたしますわ」
アルノも入ってきた。
全員でノールを守るようにして囲んで武器を構える。
『これならむしろ、私たちのパーティだけだった方が楽だったかもね』
『しゃーないさ。思う存分暴れるのは他の奴に任せよう』
そう。
俺の戦術や技は大雑把だったり派手だったりするものが多いから、対集団対軍には強い反面味方も多いと巻き込んでしまう。こういった場では本気を出すことが少し難しい。
だが他人との共闘が俺よりも苦手な奴がいる。暴れるのはそいつに任せておこう。
「ノア。お前だけは単独行動を許す。適当に暴れろ」
「わかった。じゃあ気に入らないの連れてく。二人話せると思う」
「? ああ。まあ頼んだ」
そう言って、"正義"とかって疑似超人を思いっきり蹴飛ばし遠くに飛んで行ってしまった。
制御のためかなにか、"悪魔"とかってやつもついて行った。
「なるほど。そういう事ね」
確かにそうなるか。
だがこれで7対8だったところ、6対6になったな。
「じゃあ、みんな頼んだ」
「はーい」
「任されました!」
「そういうのいいから早くやって!」
こうして俺たちの耐久戦が始まった。
*
キロフが私の首をめがけて短剣を振るう。
ギリギリのところ刀で受け流しながら少し後ろに下がって避けた。
まずい。強すぎる。
あまりの力量の差に、さっきまで早く他の人に加勢に行かないとなんて考えていたのが。
(誰かの戦いが終わるまで耐えて、数で押せれば……)
なんて弱気な思考に変わってしまっていた。
カキィン!
キロフの短剣を受け止める。これで何度目だろう。
そしてその次は、反対の手での追撃が来る。どうする? また後ろに退こうとした。
『いつかできるようになる』
その瞬間いつかのノアちゃんの言葉が頭の中に響く。
「……そうだよ」
ダンっ!
私に振り下ろされそうになった短剣を持った腕の手首を蹴り上げる。
反動で短剣を放し、近くに木に突き刺さった。
「!?」
キロフがジャンプし後退する。
「ダメだ私、このままじゃ」
「……は?」
「私だって超人なんだ……」
いつか、じゃダメなんだ。
「誰かに頼ってばっかじゃダメだ」
今こいつに勝てる位にならなきゃ、いつまでも白たちに頼り切りになっちゃう。
みんなと対等になるためにも。
「私一人で戦わなきゃ……」
態勢を立て直し、再度刀を構える。
「何言ってんだかわからないけれど」
キロフは話しながら、手放した短剣を念動力で手元に戻す。
「時々いるのよね。殺される恐怖にさらされている時ほど、そうやって格好つけてそれを紛らわせようよとする。本当に滑稽ね。そういえばあいつもそうだったかしら。ソラとかいう男も……」
「……」
「結局殺さずにおいてあげたのだから優しくしてあげたほうよね」
「ちっ」
自然と舌打ちが漏れた。
「でもよかった」
「? どうかしたのかしら? ああ、そうね私は優しいから、楽に殺してあげるわよ」
「そうだね。あんたが肥溜めに集るハエにも劣るド屑だったから、殺しても罪悪感を抱かずに済むよ」
「……よく言ったわ。じゃあ、私も本気であなたをあの世に送ってあげる!」
そういってキロフは短剣に氷の刃を纏わせた。
同時に辺り周辺の気温が一気に下がる。
私はキロフに聞こえないほど静かに自分に呟く。
「さあ、私、覚悟はいい?」
何って……。
「人殺しになる覚悟はっ!」
刀を構え、キロフに向けて走り出した。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。




