第9話:死神の札殲滅作戦(2)
翌日昼、手紙をもって天帝の元へ向かった。
ここフラエル皇国の中央都市フラウロウの象徴、精霊の大樹。内部を問題ない程度に切り抜く等の改造を施したそれが、この国の"城"の役割を持っている。
何千年前って昔からこんな感じなのだそうで、大樹の異常な生命力の高さを伺える。
木の匂いのする大樹の内部を進み、道管エレベーターに乗って上階にある巫女の間に案内された。
エルフ文明ではかつて、"大樹の巫女"に選ばれた者が政を行っていたらしい。現在では巫女=天帝であり、巫女の間という名前はその当時からの名残であると考えられる。いわゆる玉座の間と同じ役割の部屋だ。
小さめの体育館くらいのサイズの部屋で、肝心の玉座があるらしき場所は天蓋で覆われていて中が見えないようになっている。
その前に椅子が並べられていて、数名の冒険者が座っていた。
「あれ、そんなに多くない?」
結構な数の人に声をかけているのかと思った。実際のとこ新蜂だけしか呼ばれていないらしい。
だからノアちゃんや愛歌さんは呼ばれなかったのか。
まあ愛歌さんは白の中にいるし、ノアちゃんは緊急時に備えて近くで待機中だけど。
「お、夜空ちゃん、白クン。昨日ぶり」
奥に進むと、アルノが話しかけてきた。
ファアニィと一緒にいる。
「昨日ぶり」
「へぇ、あんたたちも来たの。よく呼ばれたね。せいぜい頑張って私の引き立て役になりなさいよね」
ファアニィはいつもの調子だ。
……本当に剥いて逆さづりにしてやろうか、このメスガキは……。
「皆様、お集まりいただけたようですので始めさせていただきます」
アルノたちと話していると、カーテンのある場所の脇に立っているエルフの男性が話始めた。
まだ話したことがない新蜂の3人と話してみたかったけど後にするとしよう。
「私は近衛兵団長のレイです。よろしくお願いいたします」
「なんだ。天帝には会えないのか」
その際白が小さい声で文句を言った。
「仕方ないよ。政府所属のエルフですら、そのご尊顔を拝することができる者は一握りって言われているからね。でもきっと、あの後ろからうちらのことを御覧になってくださってると思うよ」
その文句を聞いていたのか私の隣に座った人がそう言った。
ダークエルフの女性だった。
「こんにちは。冒険団『ファンタジア』のシンビィだよ。よろしく」
あー! シンビィさんか。
「白だ、よろしく」
「夜空です。よろしくお願いします」
「皆様にお越しいただいたのは、秘密裏にとある依頼をしたいためです。皆様は約一年前の街にドラゴンが入り込んだ事件を覚えていらっしゃいますでしょうか」
みんな肯定するような反応を見せる。
「そちらの白様と夜空様のパーティの活躍で、あの事件を起こした組織の存在と彼らがこの国の中で暗躍していることがわかりました。そしてそのアジトと思しき場所がわかったため、その組織に奇襲をかけ潰す、その依頼をさせていただきたいのです」
私たちは大体予想をしていたが、他のみんなはざわざわとし始めた。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。




