第8話:大樹の巫女祭(7)
今回は世界観の説明が主になってしまいました。
あまり深く考えずに読んでいただけたら幸いです。
心の中のもやもやは残るものの荷物をフラウロウに持って帰り、無事に依頼は達成することができた。
当たり前の事ではある気がするけど、あの荷物の中には依頼主の物以外の荷物もあって、その礼金も国からもらうことができた。
うーん。運送業という点では、日本の方がより優れている気がするな。どちらの国も一長一短ではあるんだけど。
とにかくそんなこんなで私たちは無事、大晦日を迎えることができたのだった。
「ねぇ白?」
「なんだ?」
「そろそろ落ち着いたわけだし聞いておきたいんだけど、死神が言ってた無の力ってなに?」
大晦日のステージ、私たちはVIP席を用意してもらっていた。
開演を待っている間、愛歌とノアは夕食を買ってきてくれている。その間に聞いておこうと思い出したんだ。
「あーえっと、正直難しい話だから何となくで理解してくれればいいんだけど」
そう前置きして話始めた。
「属性っていうものの話ってしたよな」
「火氷地風、それに光闇でしょ」
魔術を使うときに使うものだ。
「そうだ。本来はその6つの総称を精霊六属性という。精霊から借りている力であって、人間が本来持っている属性ではない。あまりその事について意識していなかったり、気づいていない世界の方がほとんどだけど」
確かにそうだ。魔術を使うときの工程には属性付与、という過程がある。私たちが存在している次元と少し位相がずれた空間に生息する精霊、彼らから力を借りることで魔術の行使を可能としている。
それぞれの属性の精霊との相性の良し悪しなんかはあるものの、人が持っている属性じゃない。だから氷属性が得意な人間に対して火属性魔術を使えば大ダメージ! なんてことは起こりえないわけだ。
「つまるところ属性ってのには、放出型と保有型の2種類が存在する。保有型の方は魂源の利用など例外がない限りは魔術には乗せられない」
「なるほど」
「そして人が保有する属性は2種類。1つ目が神聖六属性。神、人、獣、竜、精霊、植物。それぞれに特徴がある。人の場合であれば魂……、闘気を保有できる、とかな」
じゃあ私も一応、それに該当するわけだ。
「2つ目は、生物属性。これが生、死、無、の三つで成り立ってるってわけだ。人や獣といった動物は生を、死神や細菌なんかが死を、植物や微生物とかが無を保有している」
細菌って微生物の一種なんじゃって思ったけど、魔法学的には保有属性によって別物と考えられるらしい。
「これは明確な三竦みが存在している。生は無に強く、無は死に強く、死は生に強い。俺の水闘気力は無属性の力を持っているし、死神なんかは行動そのものに死属性が纏わりつく。つまるところこれらはさっきの例外によって放出型に転じた保有型、通称放出系保有型属性として使えるわけだな」
どんどん学問的な話になってきて頭痛くなってきたな……。
でも精霊六属性の時とは違ってこちらは基本的に保有型だから、いわゆる「こうかはばつぐんだ」的なことが発生してしまうんだろう。死神は人の……、いや生物の天敵ってことになる。
「んでこの3つは放出にしたとき、生属性は稲妻、死属性はウイルス、無属性は水の姿となって現れる。俺の闘気力は放出した時に水になるから水闘気って呼んでいるが、本来は無属性を操るための闘気なんだ。だから無の力ってあいつは言ったんだろうな」
「なるほどね……」
言葉だけで聞いていると難しかったが何となく理解できたし、聞きたかったことはわかった。
だけど新たに聞きたいことが生まれる。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。




