第8話:大樹の巫女祭(6)
「そこまでわかってて襲ってきたのが今日か。いい性格してんな」
「お褒めにあずかり光栄です。ですが、今日のここにいるのは私の判断ではございません」
「は? 部下か何かの計画か?」
あ、そうか。
「白、違うんだ。あいつ、トップじゃないの」
「? そうなのか? 死神の札なんて組織だから、てっきり死神がボスかと」
「死神の札はもっと大きい組織の一部、でしかないんだと思う。あいつの上司らしきやつがさっきまでここにいたの」
「ってこたぁ、死神なんてヤバい生物を御してるのがいるってことか。また面倒なことだな……」
そうだ。ボスでなくてこの強さ。
さっきの翼の男が敵と戦うことになってたらと思うと、恐ろしい。
「とはいえ」
死神が口を挟む。
「あなたを警戒するのは当たり前の事ではありませんか?」
「ああ?」
死神が話を引き戻す。
「あなたの部下の疑似超人。あの者は私にも覚えがある。いえ、魔界の……、とりわけ死神においてあの者を知らぬ者はいない。何せ"魔界の最強兵器"ですからね」
「……へえ。あいつマジに有名だったんだな」
白が死神に聞こえない程度の音量でつぶやいた。
「私ですら本気でぶつかれば勝てるか危うい。しかもあれを従えているとなれば、あなたは元の所有者である死神を殺した……、それだけの力を持ってたことになる。警戒するのも当然でしょう」
「事はもっと複雑だったんだけどな……」
白はため息を吐きながらまた呟いた。
「今、てめぇが間違った点は2つある」
「ほう?」
「1つ目は別に黒の能力は使えないわけじゃない。あまり好んで俺が使わないだけだ。精神の汚染が酷いんでね」
そういった白の首元に黒い触手の入れ墨の様なものが伸びていった。
「2つ目は」
ドォーーンっ!!!
瞬間、白の体の合った場所には大きく削れた地面だけが残り、死神は白によって巨木に叩きつけられていた。木の幹が抉れてしまっている。
「俺の前で、ノアを兵器だあれだと物扱いして侮辱したことだッ!!!」
そのままよくわからない攻撃をつづけ、最終的に地面に投げ飛ばされていた。
ほら……、白の前でノアちゃんについてあれこれいうからこうなる……。
「が、ぁああ……」
死神は右腕の先と、右脚が失われていた。
靄が纏わりついているので回復はそれでもするようだが、今までのダメージほど簡単には治らないようだ。
「てめぇら死神は人間はおろか、同じ魔界の生物ですら見下している。てめぇが作り出す疑似超人に対してだってな。だから足元を掬われるんだ」
「き、キッヒッヒッヒッヒ。耳に痛いですねぇ」
少し飛び退いて宙に浮かんだ。
「今日はこのくらいでいいでしょう。私への命令はあなたがたの力を直接見極めることですから。では」
「逃がすかよっ!!」
白が追いかけ攻撃するが、今度は体全体が靄に覆われ消えた。
ルトさんと私の前からキロフを逃がしたときと同じだ。
「ち。"座標転移"か。本当にイライラする生物だ」
白の文句だけが森に響いた。
確かに敵は逃がしてしまったけど、とりあえず依頼だけは達成できた。から結果オーライかな?
次回も読んでいただけたら嬉しいです。




