第8話:大樹の巫女祭(4)
「それで? 結局目的は何なの?」
「いったであろう。今日は顔を見に来ただけだ」
男は立ち上がった。
「しかしそうだな。もし貴様らが我の持ち駒を全て倒し、もう一度我の前に現れる事ができたのなら……、その時は相手をしてやってもいいだろう」
そう言い終わると翼を広げ私に背を向けた。
「ちょっと待って! あんたの目的は何?! 駒って?! 死神の札の事? それとも他にいるの?! どれくらい? ってかあんたはどこにいるの!?」
「教えてやる義理があると思うか?」
「ぅ……」
そりゃあ、ないけど……。
「今日、貴様らの相手をするのは我の持ち駒だ。せいぜい、生き抜いてみせろ」
そういって、男はどこかに飛んで行ってしまった。
「あ、……もう……っ。……持ち駒?」
瞬間、全身に鳥肌が立つ。霊力からの危険信号だ。
(あ、これやばい)
今までにないくらい強い反応だった。
とにかくその場にいてはいけないと思い、地面に転がった。
ひゅっという、何かが空を斬る音を耳にした。
自分がいた所を見るとまた別の男が大鎌をもって立っていた。あのまま動かなかったら今頃、私の上半身と下半身は別々のとこにあっただろう。
すぐに立ち上がって、間合いを取って刀を抜いた。
「あんたなに?」
そいつは大柄の異形だが人に似た姿の生物だった。
そういえば、ドラゴンが街に入れた女を連れ帰ったのもこいつだったかも。一年も前の事だから覚えてないけど、声が似てる気がする。
「キヒヒヒ。なに、ときましたか。生物学的にいうなら、死神、ですね」
「死神……、ってことは、この世界で疑似超人を沢山作ってるのって」
「ええ、私ですよ」
ってことは……。
「サニちゃんを作ったのも……」
「ああ、そういえば、そのような者もいましたね。忘れていましたが、そういえばあなたがたに捕らえられていたのでした」
……コイツ……っ。
「あんたを倒せば……。サニちゃんを自由にしてあげられる……」
「あまり、無理な夢は見ないことをお勧めしますよ」
「るさいっ!」
とはいえこいつもヤバい……。
それも本能でキャッチしていた。
少し後ずさりしたとき、急に死神が動き鎌が首を取ろうとしてきた。
ギリギリのところで受け止める。
急に回転し、今度は反対から鎌を振り上げてきた。
後ろに回転して飛び退き、避ける。
なんていうか気持ち悪い動きをする奴だ。
静から動へ、動から静への動きが急すぎる。人間の感覚に反する動きをするから気持ち悪い、と思ってしまうのだろう。
その後も、ただ攻撃を受け続けることしかできなかった。が、こんな強敵相手にまだ生き残っていられるだけ、自分も成長した……。と思いたい。
しかし5分も打ち合い続けた時、体全体がピリピリと痺れ始めた。
「キッヒッヒッヒッヒ」
「耳障りな笑い声……」
イラっとしたがそれどころではない。
何かされたのは明白だ。
それがわからなければ、それに対抗策を講じなければ殺される
大振りを屈んでよけ、少し走って距離を取る。
体の状態を調べる間もなく追撃が飛んでくる。
あー、本当にまずい……。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。




