第1話: 拝啓、空の青さを知らぬ貴女へ(8)
―――フラウロウ北西・青水白
双頭竜の足元に到着し、大きく飛び上がる。
「ふっ!」
上空から落下し、根元から片方の首を斬り落とす。
すぐあと、もう片方の首が縦に真っ二つに斬れ、爆散した。ノアの攻撃だ。
「相変わらずだな、ノアは」
あのあたりにいた人には大量の血液が降り注いだことだろう。
「にしても、やけにあっさりだな」
『ちょっとフラグ立てないでよ』
愛歌にツッこまれた後、その二つの断面が盛り上がり新しい首が生えてきた。
『ほーら。あなたがあんなこと言うから』
「悪かったよ。んで、どうする? 首斬っても再生されるんじゃ、厄介だぞ」
『接触時にスキャンしてみた感じ、胴体の方に脳も心臓もあるんでしょうね。そっちを潰せば倒せるんじゃないかしら?』
そうは言っても、双頭竜の胴は肉も鱗も厚くなっている。
首を落としたときのような攻撃じゃ、弾かれるだけだろう。
「時間かけりゃ倒すだけなら苦労はしないが、被害がでかくなる一方だ。一か八か、水闘気全部使って、体力を奪えるだけ奪う。そこをノアにとどめ指してもらおう」
『了解。今調整するから』
生えてきた竜の首に乗り胴を目指し走る。
腕に9割以上のの水闘気力を流し込み、跳びあがった。
「山墜としっ」
闘気力の弾を作り出し、ドラゴンの身体にゼロ距離で押し付けようとしたとき、身体に打撃による衝撃を感じ吹き飛ばされ、気づいた時には強く地面に叩きつけられていた。
「いった……。くっそなんだ?」
砂埃を払いながら立ち上がる。
作り出していた技を構成していた闘気力は霧散してしまった。気力を一気に消費してしまった脱力感に襲われる。
飛ばされた場所は公園のようだ。
「困るな。長い時間をかけ懐かせたペットをそんなに簡単に殺してもらっては」
前には男が立っていた。こいつに蹴り飛ばされたらしい。
眉間の皺が深く、目つきの鋭い硬派そうな印象の男だった。
「ペット? ってことは、お前があいつを侵入させたのか」
人のいる場所で暴れるなんて迷い込んだにしては不自然だとは思ったけど、まさか手引きしてる奴がいるとはな。
「ああ、あるエルフと数十年ぶりに再会するためにな」
「……まさか、まだルトを追って……?」
40年前だぞ? いかれてんのか?
「ただの目立ちたがり屋の冒険者かと思ったが、あの女を知っているのか。面白い。私は"力"のゲンゼ。お手合わせ願おう」
そういって、両腕を胸の高さに構えた。格闘家か?
いや、強化魔術を使ったな。肉弾戦が得意な魔術師ってとこか。
「二人組って聞いてたが一人しかいないな」
『もう一人は追跡呪を追って、夜空ちゃんの方に行ったかも』
「ちっ」
夜空を一人にしたのは失策だったな。
早めに援護に行きたいとこだが、逃がしてくれる気はなさそうだ。
―――世利長愛歌の記憶領域:file.8【気力と闘気力、魂源】―――
人の生命エネルギーを気力って呼ぶの。その流れをうまく使う事で身体能力を強化できる。私たちの世界で気功法とか呼ばれるものね。
気力は修練の果てに覚醒し魂の力、魂源を乗せることができるようになる事がある。
そうすると固有の色と性質が発現し、この状態の気力を闘気力と呼ぶ。
例えば白の魂源は"消滅"と”流動”。
闘気力の色はネオンブルー。
その性質と色から水闘気力と呼称しているわ。
【愛歌からの謝罪】
今回説明文が少し長くなっちゃったごめんね。
記憶領域での説明は後に物語の中で説明されることばかりなので、今は飛ばしてもらっても問題ありません。