第7話:フラウロウでの日々(5)
「つぎは……、これなんてどうです?」
そういいながら別に剣を渡してきた。
少し大きめだ。
「黄金鋼に精霊の大樹の葉を練りこんだ剣です。両刃ですし、夜空さんの剣と比べると少々幅広ですが、魔力をよく通すので魔法剣士に向いています。夜空さんは魔術も得意だと仰っていましたよね」
それは便利そうだけど……。
持ってみると、重さはさっきのと同じくらいだ。それが普通なのかもしれない。
また同じようにして試してみる。
うーん。
「振り心地がいまいち……」
気持ち良くないというか、気持ちが悪いというか。
「なるほど。やはり、細身の方が夜空さんには合っているようですね。……あ、そうだ。とっておきがあるんですよ! またちょっと待っててくださいね」
そういって、また下に下がっていった。
さらに次の剣を渡される。
「これは、アマノク大陸原産の紅金鋼製の刀で……」
そう話しながらセミさんが鞘から刀を抜いた。
今度は、日本刀っぽいやつだ。
「シンノミヤの有名な刀鍛冶が打った逸品です。『如月』の銘を与えられています」
刀を渡される。
綺麗な赤みを帯びた銀色が美しい刀身だった。柄が手に馴染む。
振るとヒュオ、という心地よい音が響いた。重さも丁度いい。
同じように一連の運動を試してみる。
「どうです?」
「めーーーっちゃいいです! これにします!!」
他のを試す間もなく即決し、購入してしまった。
その後軽く挨拶や世間話をして店を出た。
さて、せっかくなら試しに使ってみたい所だが武器である以上、電化製品や化粧品の様に簡単にはいかないのが難点だ。
休日はまだ続くしどうしたものかな……。
「あ、夜空ちゃんじゃん! 久しぶり」
街を出てウロウロしつつ適当に魔獣でも狩りにいこうかと思っていた時そんな風に話しかけられた。
「アルノ! 元気にしてた?」
冒険者友達のアルノ……、くん? ちゃん? まあ、どっちでもいいか。その子と会った。
前に数度、一緒に依頼をこなしていた事があってその時に仲良くなったのだ。
短い桃髪と褐色の肌が眩しいボクっ子。
「元気元気。うちのリーダーはまだまだお通夜みたいなテンションだけどね。あ、その説はお世話になりました」
そう。一緒に依頼をやっていた理由は、アルノが所属しているパーティが理由だ。
そこのリーダーがガイルって人なんだけど、覚えてるかな? あの不倫事件の事。
ある程度の知名度を持っていたガイルはあれ以来しばらくの間、冒険者として干されてしまい、活動がままならなくなってしまった。
でもパーティメンバーには非はないだろうって事で、このアルノにうちのパーティに入ってもらうことで収入が無くならないように図っていた、って時期があったんだ。
「いえいえ。調子もよさそうでよかったよ」
実際アルノはめっちゃいい人だしね。
元気なら何よりだ。
「そういう夜空ちゃんは、なんだか嬉しそうだね」
「あ、わかる?」
「もちろん」
「実は新しい刀買っちゃったんだよね」
そう言って、刀を取り出した。
「おお……。え、これ、すっごくいい刀じゃない?」
「わかる?」
「わかるよ、もちろん!」
そう言って興味深そうに刀を眺めている。
……実は分不相応の武器を買ってしまったのではなかろうか。
「アルノの得物は騎槍だったよね」
「うん。一応剣も使えるけどね」
「色々できるんだね」
「子どものころに色々と仕込まれてさ」
「へぇー」
結構いいとこの育ちなのかな。
なんで冒険者なんてやってんだろう。
「そうだ、試し斬りに行きたくない?」
「え?」
「丁度、討伐クエストに行こうと思ってたんだよね。1人でもいいけど手伝わない?」
「いいね、行こう!」
休日だったけど、結局クエストに向かってしまった。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。




