第7話:フラウロウでの日々(2)
「じゃ、後の事は任せた」
「ぶー。私も帰りたいのに……」
愛歌をこっそり治安隊の人たちについて行かせて事の顛末を記録してもらおうって、白がいったらこれだ。
「こういうの得意なの愛歌なんだからしかたないだろ」
「もう、才能ってやはり不幸になる運命なのね」
ただの能力の違いだと思うけど。
何を言ってるんだと思いながら愛歌とわかれて、私たちはスラム街から出ようとした。
そして、さっさとそこから離れようと人通りのない路地に入って少し歩いた時の事だった。
タッタッタッタッタ。
訓練されて意識的に小さくされた物だけど、背後から確実に私たちに向かって走ってくる足音が聞こえた。
「ねえ白?」
「ああ」
そこまで話したとき、白が少し飛び上がった。
と同時に白と入れ違いに小柄な女の子がそこに走りこんできた。
「え?」
女の子が声を出したと同時に、ずしゃ、と私たちの前のところで転んだ。
「わかってる」
白が返事の続きを口にした。
どうやら飛び上がったときに、何かを放っていた。
女の子は起き上がれずもぞもぞしている。
「これって確か、白がヒーロー活動してた時に使ってたやつ?」
「そ。愛歌が作った拘束用の粘液だ」
「そっか。で、誰よこんなことするのは……、って」
そう話しながら、女の子を仰向けにひっくり返した。
「え、ファアニイさん?!」
見たことのある顔だったのでびっくりした。
「そ、そうよ。みんなのアイドル、ファアニイちゃんよ。サインでもあげましょうか?」
拘束されて地面を転がっているのにも関わらず、バチコーンなんて音が鳴りそうなウインクを飛ばしてくる。
「なに、これ? 知り合い?」
「ちょっと! これって何よ! これって! 失礼じゃないの?!」
「い、いや、知り合い……、じゃーないんだけど、ちょっとした有名人だよ。私たちと並べて、優秀な新人冒険者の一人って、言われてたはず。だから顔を見たことはあって」
自称アイドル冒険者。
実際男性からは結構支持を得てたはず。
「へー」
白が聞いといて興味なさそうに答えた。
「で? 冒険者ってことは俺を襲ったのも依頼か? 依頼主は?」
「つーん。あんたみたいなのに教えてあげないもん。ベー、だ」
むっかつく女……。
白も同じように思ったのか立ち上がって、その路地の出口に歩いて行こうとした。
「おい、夜空。こいつひん剥いて、適当な広場にでも吊るしとけ」
えーっと。
確かにムカつきはしたけどさ、それは同じ女として流石に……。
まあでも、そうでもしないと話しそうにない……、かな?
「やめてぇええ! わかった話す! 話すから!」
女騎士にはなれなそうな、この即堕ちっぷり。ちょっと服を脱がすフリをしたら一瞬でこれだ。
しかし聞いてみるとびっくり。依頼主はあのトルレンスさんなのだそう。
あの不倫事件の時の一件で逆上し、何でもいいから白の物を盗んで来い、って依頼したらしい。
「ホント、馬鹿ってどこまでも馬鹿なんだね……」
呆れてそんな事しか言えなかった。
「本当男って馬鹿よねぇ」
と何故か拘束を解かれ正座させられているファアニイも同調してくる。
あんたが言うな。
「なーんで、おめぇはその馬鹿の依頼なんか受けたんだよ」
「え、えーっと、その」
一瞬口ごもったが、観念したファアニイが口を開く。
「そのぉ、間接的に恩があったっていうか……、ちょーっと受けざるを得ない状況にあったといいますか……」
「はぁ?」
「それに! えっとその、ファアニイちゃんより目立ってる冒険者がいることにファアニイちゃん自身も、こームカついてたといいますか。同じ時期に冒険者を始めたってだけで比べられたりするし……」
「はぁ……」
この女……。
「ってなわけだから、許してよね」
そう言ってまたウインクしてきた。
「夜空、やっぱ剝いとけ」
「了解」
「わああああっ! やめてぇええっ!!!」
結局私たちは何となく、この女を許してしまったのだった。
次回も読みに来ていただけたら嬉しいです。




