第6話:かつて魔王と呼ばれた男(11)
「黒化! 8%っ!」
強化されたスピードで一気に距離を縮め拳を繰り出す。
数度攻撃し軽くラヴィスの周囲をステップして回り、攻撃を繰り返す。
「ったくこの鎌邪魔だな。返さなきゃよかった」
『なにしてんのよ……』
「るせぇ。壊す! 10%っ!!」
先ほどから何度も攻撃していた箇所を、さらに強化した力で攻撃する。
3度目で何とか鎌破壊することに成功する。
「っ?!」
「こうなっちゃあ、さっきまでほど優しかぁねぇぞ!」
それに驚いているラヴィスの頭を掴み、川の柵に頭を打ち付けた。
ガンっ、ガンっ、ガンっ、ガン……。
頭を掴んだまま道を走り、ダメージを与え続けた。
ラヴィスの頭から足に持ち替え、地面に何度か叩きつけた。
そしてまた倒れているラヴィスの頭を掴み、顔面の中央に膝蹴りを叩き込んだ。
そのまま足を伸ばして、腹を蹴りこんだ。
「ごっはぁぉっ」
さっきまでの美声からは想像できない声と共に吹っ飛んで行った。
地面すれすれを滑っていくラヴィスに追いつき、頭を地面に押し付けた。
ラヴィスの頭が地面を削り取っていく。
少し離れ、様子を見た。
「ぐぅう……」
起き上がってきたラヴィスは頭からだくだくと血を流しながら、なおも俺の事を睨んでいた。
壊れた鎌は刃の方はもう使えないと判断したのか、長い方の柄を棍の様にして持っている。
「驚いたな。その頭蓋、3度は砕いたつもりだったがまだ形を保ってるとは」
「……あ、あんた……、女に対して少しは手加減とかないわけ?」
「言ったろ。本気出したらさっきほど紳士的じゃいらんねぇぞ」
「そうみたいね。殺せるときに殺しておくべきだった」
「そんなときがあったかな」
「……」
舐められたもんだ。一瞬そう思った。
しかし……。
「っ!」
追いつけるギリギリのスピードで鎌の柄を振り回してきた。
急なことで腕と腕で挟む、みたいな変な受け方になってしまった。
「生ける炎の一滴」
黒闘気力を鎌を伝って流し込んだ。
するとラヴィスの体に火が付き燃え上がる。
「ああああ……っ?!」
すぐに地面を転がりながら俺から離れるが、火が消えることはない。
「ちっ!」
この方法での消火が無理と判断したらしく、川に飛び込んだ。
「はぁはぁ……」
「バーカ。水中は俺のテリトリーだ」
「!」
俺は水中では抵抗を人より受けずに動ける。
高速な水闘気の"流動"も、空中ではコントロールが困難だが、水中であれば御しやすい。
一度黒化を解き、水闘気の速さを使って何発か覚えていられないほどの連撃を浴びせる。
「人が少ない川に降りてくれたのは好都合だったぜ」
「これ以上なにを……」
「じゃあな。てめぇの強さにだけは敬意を表して、これ以上苦しませず送ってやるよ。分黒化(ヨグ=ソトース):50%」
左手の親指の腹を軽く嚙みちぎり、流れ出る血で右腕の内側に線を引いた。
するとその血液から無数の黒い触手が出てきて、俺の腕を包み込み、一回り大きい腕を形成した。
「ちょ、まっ! もうやめる! だから許して! マスター権をあなたに譲渡するから……っ!」
演技か本気かわからないが、急に涙を流しながら懇願し始めた。
「今更おせぇ! |空虚なる神の鍵(ヨグ=ソトース・ロック)っ!!」
その腕をラヴィスに叩きつける。
すると文字通り、ラヴィスの体が蒸発して消えた。
「ったく……っ」
あんな女のマスターなんぞ、こっちが嫌だっての。
そのあとの後始末がこれまた大変だった。
思ったよりも二人の戦いが長引いてしまった……。
戦闘シーンをもっとコンパクトかつかっこよく魅せられるよう、頑張りたいですね。
明日も読みに来ていただけたら嬉しいです




