第6話:かつて魔王と呼ばれた男(10)
「黒化5%っ!」
一度地面を蹴り飛び出す。
(ちっ。久々だと慣れないな)
気づいた時には、ラヴィスの後ろの家の壁に張り付いていた。
そこから壁を蹴ってラヴィスに背後から近づく。
流石に気づかれていたので鎌で攻撃を受ける体勢に入られた。
その柄を掴み、鉄棒の要領で回転してラヴィスを蹴った。
俺の手元に大鎌を残したままラヴィスの体が吹っ飛んでいく。
また川の反対側の家に突っ込みそうになった。そこで右手から闘気力を放出する。
黒の闘気力は放出するとタコの触手の塊のようになって現れる。
それを使ってラヴィスの体をまた俺の方に引き寄せ、90度左、つまり道の伸びている方向にラヴィスを殴った。
「ほらこれ返すよ」
大鎌を吹っ飛んで行ったラヴィスに投げた。
かなり強く投げたつもりだったのだが、それを取るだけの余裕がまだあるらしい。
俺はその鎌を追いかけるようにして駆け、地面に倒れていたラヴィスを殴る。
しかしラヴィスはその場を離脱しており、地面を砕いただけだった。
「6%っ!」
黒闘気力による強化を少し強めラヴィスを追いかける。
攻撃を続けるが時々当てられるものの、大きなダメージにはなっていない。
隙を突かれ、腹部に蹴りが飛んでくる。腕で受けるが痺れが残る。
すかさず追撃にきて鎌を支点に回し蹴りが飛んでくる。
「くぅっつ……」
左腕で蹴りを受ける。衝撃が体に走る。
その勢いのままラヴィスは回転し、鎌を振るう。
ステップが遅れ、左腕を軽く縦に割かれてしまう。
「がっ、、ってぇな!」
すぐに距離を取り回復を急ぐ。
「なんだか、さっきよりも痛がっていない? あまりさっきよりも強くなったという感じがしないけど、見た目だけ?」
「るせぇ!」
俺の黒化は俺のあらゆる事象を倍化させていく技だ。
どの事がどれくらいの倍率か、というのはその事象ごとに分かれる。
例えば筋力やそのばね、骨の強度といった身体能力は2%には1倍、4%で2倍と進んでいく。
その他、魔力や闘気力の量、視力や聴力といったものまで倍率は身体能力より倍率が下がりはするものの強化されていく。
ただし逆に受ける外的要素やダメージも増えてしまう。
その上黒闘気力は使用すればするほどに魂源:狂気に精神が汚染されていく。
多分黒化と精神汚染の影響で魅了も今の俺なら効いてしまうだろう。
まさに諸刃の剣な能力だし、使い終わったあと精神に異常が残るから、あまり使いたいとは思わない。
だがラヴィスがあまりに俺と相性が悪い相手であったため、そうも言っていられなくなったってわけだ。
「そんなにいうならもっと行くぞ」
『大丈夫? これ以上持たないんじゃない?』
「久しぶりの使用で心と体が驚いてるだけだ。まだいける」
『そういうならいいけど……』
「いくぞ! 黒化! 一気に8%っ!」
俺はさらに自信を強化する。
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