第6話:かつて魔王と呼ばれた男(8)
20メートル弱距離を取って、またラヴィスの方に向き構える。
「全力で行く」
『ええ』
「光属性魔術:女神の栄光」
俺のできる最強の強化魔術を自分に施す。
「ふっ」
「っ?!」
そして一気に距離を詰める。
甲高い音が響き、またも受け止められた。
そこで止まらず、体を回転させつつ連撃を繰り出す。
最初は急な強化に戸惑っていたラヴィスだが、すぐにそれにも慣れだす。
「これにもついてくんのか……」
俺の戦闘の得意とするのは、スピードと攻撃の回数の多さ、4本の剣と跳躍、変則的な動き、そういった物を織り交ぜた敵の事を翻弄する戦闘だ。
故に度胸で慣れられてしまうと、こっちが先に疲れてしまう。
かと言ってこいつ相手に一歩引けばその瞬間またさっきの様に、大鎌の間合いで攻められるだろう。
それはそれで面倒だ。
また水闘気を使い、今度は逆に前に踏み込んでラヴィスの後ろに回った。
そこから斬りこもうとするも、また攻撃を止められる。
「ちっ。一度離脱する」
同じように水闘気で距離を取った。
見るとそこはいつの間にか、フラウロウ内に作られた森林公園だった。
木の陰に隠れ武器を一度全て終い、指に更なる強化を施す。
「銃爪」
指で空気を弾き、銃弾の様にして攻撃する得意技の一つだ。
もともとは針を使っていたのだが、使い捨てになってしまって経済的に厳しかったため開発した。
「くっ?!」
一つが足を掠め、傷を負わせた。
その後、木々の間を飛び回りながら、銃爪を撃ち続けた。
警戒されてしまうと、あまり傷にはならないのだが、ダメージを与えることにはなっているはずだ。
そして、ある程度のとこまで攻撃を続けた後、全ての剣を取り出し一気に距離を詰める。
「十二の試練っ!」
水闘気の超スピードを使い、全ての剣でほぼ同時に何十という斬撃を与える、俺の必殺剣だ。
大抵の敵はこれで細切れになるわけだが……。
「うっそだろ、お前……」
どうやらその全てを防がれてしまったらしい。
ちょっと笑いすら出てきたな。
その上、急に全身にピリっとした痛みが駆け巡る。
「ぅっ……、なんだこれ……」
『?! 呪い?! いつの間に』
愛歌も今気づいたらしい、微弱な呪いに俺の体は侵されていた。
「てめぇのその鎌、死神の体質でも再現してんのか?」
「よく知っていたわね。死神の物よりもかなり弱いけれど」
死神は他の生物に対して呪いの体質を持っている。
触れるだけで、いやお互いの持つ武器が交わっただけでも相手に小さな呪いを刻み込んでゆく。
戦闘するだけでも厄介な相手なんだ。
その体質を再現した鎌らしい。
「面倒なことだ。お前、マジに強ぇな……」
どうしたものかと悩むことになってしまった。
私事ですが38℃の熱を出してしまいました。
病院に行ったらコロナでもインフルでもなくただの風邪なのだそう。
季節の変わり目ですし、これから寒くなりますので皆様お体にお気を付けください。
「まずはあなたが気をつけなさいよ」




