第1話: 拝啓、空の青さを知らぬ貴女へ(7)
ルトさんを連れて、数日かけフラウロウに戻った。
「変わりませんね。この街の騒がしさは」
ずっと静かなところにいたから、なんだか私まで騒がしいと思ってしまった。
久々に東京の都心に行った時の気分を思い出した。
「トレントットさんに会うためには、仲介店を通さないといけないんで」
「存じております。少し時間がかかるのでしょう?」
「はい。その前に仲間と合流しますね」
街の北西側のとあるカフェで愛歌さんたちと落ち合った。
「あなたがルト・イェリヒですね。世利長愛歌っていいます」
「よ、よろしくお願いします……。あ、あなた人間ですか……?」
ルトさんが引き攣った顔をしている。
「どーでしょう。私一度死んでますからねー」
愛歌さんは一度死んだ後に世界を渡るとき半霊体になったらしいから、霊視覚では異形の何かに映るだろう。
「もう一人の方はとても幼いようですし、不思議な方々ですね……」
ノアちゃんの方を見ていった。
見かけが幼いだけでパーティの中では一番年上なんだけどね。白が4500歳とか言ってたから。本当なのか冗談なのかわからないけど。
「そうだ。そんなことより、ソラのことよ。新しいことがわかったの!」
愛歌さんが興奮したように話始める。
「実はソラは40年前、ルトさんと別れたであろう時から声が」
そこまで聞いた時、外で爆音がなった。
「な、なに?!」
思わずそう大声を出してしまった。
辺りが騒然とし始める。
「話は後だ」
外に出ると、人々が街の東側に向かって走っていた。まるで何かから逃げているように。
人々が流れてくる方を見ると、怪獣映画の怪獣のように巨大な双頭のドラゴンがいた。
「この街の防衛はどうなってんだ。侵入されるまで警報も鳴らさないなんて……」
白が文句を言った。
「夜空、ルトさんを安全なところへ。あいつは俺とノアで何とかする」
「ん」
「了解」
私とルトさんはできるだけ遠くに離れようと走り始めた。
* * *
「さーてと、ノア、三分やるから左の首を切り落とせ」
「三分? 一分もいらない」
となりの少女は表情一つ変えずにそう返し、弾丸のように飛び出していった。
「ははっ。んじゃ、俺も頑張らないとな」
『それにしても興味深いわね。炎はどこからどんな原理で吐き出しているのかしら』
俺にとり憑いて、俺の中からサポートをしている愛歌の声が頭に響いた。
「さあな。俺もドラゴンを見るのははじめてだから」
『そう。じゃあよかったわね。やっと異世界ファンタジーものらしくなってきて』
「それで殺されちゃ、たまったもんじゃないけどな」
俺も屋根の上に跳びあがり、ドラゴンに向かって駆ける。
―――世利長愛歌の記憶領域:file.7【仲間紹介:ノア①】―――
無口な女の子なので、ここで軽くご紹介。
とある事情により故郷を離れることになり、紆余曲折あり白に忠誠を誓うことになったの。
パーティ最強の戦闘力を有しており、討伐依頼などは基本任されがち。
逆に人と話したり心を開いたりするのが苦手なので、コミュニケーションが必要な仕事にはあまり参加しないかな。
前作を読んでくださった方がいれば愛歌の状態について疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それについては僕もよく知らないのでまた愛歌の方から説明があると思います。
また明日もよろしくお願いします