第6話:かつて魔王と呼ばれた男(7)
大通りに出てラヴィスを追いかけた。
「あー、まず。やりすぎたか」
俺の部屋の窓の先は、真ん中に川を挟む大きな通りがある。
軽くやったつもりだったのだが、その大通りを飛び越えて対岸の家の二階の中にまで吹き飛んで行ってしまったようだ。
「愛歌、人は?」
『まってね……。……生体反応なし』
「? もう殺されたってことか?」
『いえ、たまたまと言っていいのか、人がいなかったみたい』
「ならいいけど」
そう話しているといきなり、その家が炎上し始めた。
「家の持ち主が帰ってきて、卒倒しなきゃぁいいけどな」
「やってくれるじゃない」
そういってラヴィスは大鎌を構え、歩いて出てくる。
「はあ、やっぱそうか」
「そうって?」
「昔から長柄使いにはいい思い出がなくてね」
俺も全力を出そう。
剣を四本すべて取り出す。
「騒がしくなってきたな……」
火の粉が家々に飛んで行ったためか、避難しようとする人々が道に出てき始めた。
こんな状態で戦うのはまずいか……?
いや、そういう人の誘導なんかはノアに任せてる。
今頃、夜空を連れてそっちに回っているだろう。
俺はこいつを止める。
人がいなくなった瞬間をついて、浮かせていた剣2本を飛ばす。
走って近づきながらその2本が弾かれるのを見た。すぐに両手の2本をまた投げる。
それも綺麗な動作で叩き落された。
「ヒュドラっ!」
連撃を浴びせるが、鎌の柄や体をうまく使い全て避けられる。
ラヴィスが少しステップして後ろに下がる。
(あ、まず)
急いで剣を手元に戻すが、
顔を鎌が掠める。
「っぶねぇ」
この距離間だと鎌の方が有利だ。
俺もさらに間合いを取ろうとするが、ラヴィスは俺についてくる。自分にとって有利な間合いをピッタリと維持しながら
「ちっ」
戦闘にも自信があるみたいなことを言ってたけど、これはマジだな。
気を抜けば死ねる。
こりゃ今んとこ、この世界に来て一番ピンチかもな。
水闘気を一瞬だけ足に流し込み距離を取る。
「っ?!」
あまりのスピードにラヴィスも驚いたみたいだ。
この速さを制御できてるなら、この戦いも簡単だったのにな……。
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