第6話:かつて魔王と呼ばれた男(6)
「なぜ? 私は今、確実に首を裂いたはず」
ラヴィスが困惑している。
「顔だって、確認した。あのハクとかいう男だったはず……」
「どうした? ここはキッチンじゃないぞ」
ラヴィスがこちらに振り返る。
「な、なぜ?! あなたは確かにここに……」
「ごめんね。私の言霊魔術:テクスチャマッピング。あと物理攻撃効かないの」
ベッドから文字通り跳び起きた愛歌がそういいながら変身を解く。
そして、光の玉になり俺の体の中に戻ってきた。
「いつからバレていたの……」
「最初からだ。そんな悪魔の臭いプンプンに匂わせたやつ、怪しまないほうがおかしいだろ」
『ゲロ以下の臭いがプ』
『愛歌はいったん黙っててくれ』
愛歌の文句を聞き流しながら続ける。
「私は魅了をかけたんだけど?」
「へえ、そうだったのか。わりぃな。俺は妖淫魔の魅了には体制があるんだ。俺の師匠は妖淫魔だったもんで。その力借りてるだけのパチモンの魅了なんか気づきもしないな」
「……まあいいわっ!」
ラヴィスがナイフを突き刺そうとしてくる。
それを左から右に受け流す。
そちらの腕をつかんで抑えながら、反対の手で殴る。が逆にそれはラヴィスに受け流される。
ラヴィスがナイフを小さな動きで上に投げ、俺の腕をつかんでいた手を放し、そのナイフをキャッチする。
そのまま首を逆手で突いてきたのを、軽く後ろに頭を下げて避け、そのまま口で加えた。
顎と歯を全力で強化し、ナイフを折った。
「あんた人間なの?!」
「ぺっ。バケモンなのはお互い様だろー、がっ!」
掴んでる腕を引き寄せて、腹を蹴飛ばした。
ラヴィスが窓を割って、外に吹っ飛んでいく。
「あーあーもう。大家さんにあとで謝らないとなぁ」
『まあいいじゃない。あなたはこういう狭い部屋での戦闘は苦手でしょ』
「まあな」
ノアに戦闘になったということだけ伝え俺も外に出た。
次回も読みに来ていただけたら嬉しいです。




