第6話:かつて魔王と呼ばれた男(5)
―――数十分前・青水白
その女に話しかけられたとき、妙な気配と違和感がしたと思った。
嫌な気配、というよりも懐かしさに近かった。
大雨に打たれながら帰る中、そのラヴィスとかいう女が纏う気配と違和感について考えていた。
妙な気配については妖淫魔の気配だ。
人に似た姿をした魔界の知的生命体だが、俺は何かとこの"妖淫魔"と縁がある。
俺はできないが、魔界出身でなくとも魔界や天界の生物と契約することで力を得ることのできる人間がいるし、フラウロウの冒険者にも同じことをする者は時々いる。多分それだろう。
その上での違和感。
なぜそんな事ができるほどの人間が、暴漢に襲われた程度で逃げていたのか?
妖淫魔の力を使えば魅了して従順な犬にしてしまえただろうし、そんな事をしなくても戦闘で勝つことができただろう。
なぜあんなことになっていたのか。
つまるところ、俺か俺のパーティか誰かに近づくためだったんじゃあないか?
あまり魔力や闘気力を感じないから確かじゃないが。
そう考えながら自分の部屋に入った。
『白、あいつ、疑似超人だよ』
すぐにノアからテレパシーが入った。
『やっぱそうか。でも思ったより闘気力や魔力が小さいよな。今までの奴より戦闘能力がないから暗殺でも狙いに来たのか?』
ノアと話しながら愛歌と作戦を立てる。
『逆、多分あいつは完成形の一人』
『完成形?』
『死神の技術はあまりわからないけど、この世界で今まで出会って来た疑似超人は私とは違う。不完全な製法で作られた疑似超人ばかりだった。けどあいつは違う』
そうだったのか。
今までの奴らがノアと戦闘能力に差がありすぎることに違和感を感じていたけど。
ノアが特別だったというわけでもなさそうか。
『ノアにも匹敵すると考えたほうがいいか?』
『一応。私なら負けるつもりはないけど、魔界ノ契リがどう作用するかわからないからできれば戦闘をさけたい』
ノアと同等の強さを持っているかもしれないとなると、かなり厄介だ。
面倒だな。
『わかったこっちで何とかする。戦闘になったら夜空と外の人たちを頼んだ。できる限り被害を減らせ』
『ん』
「ノアちゃんどうしたの?」
「いや、別に」
そこまで話したとき扉が開き女が入ってきた。
扉の陰に隠れ、様子を伺う。
ベッドの方に歩いていき、そして俺の首にナイフを当てていた。
(やっぱ、そうなるのか)
心の中で面倒だとため息を吐いた。
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