第6話:かつて魔王と呼ばれた男(4)
「さて、あとはどう殺すかね」
ターゲットの拠点に忍び込むことはできた。あとはそれが問題だ。
連れていかれた場所は活動開始から一年たっていないパーティにしてはかなり広い下宿だった。
リビングダイニングキッチンは当然、水浴び所、男女別れた寝室、などなど、子持ちの一家族が不自由なく生活できるであろう場所だった。
先に水浴びを促され出てきた時には、ハクがリビングにいなかった。
代わりにヨゾラというのと、もう一人の仲間の少女がいた。
「ふっ。これでどう? フルハウスだよ!」
「残念、フォーカード。明日の昼は夜空のおごり」
「げぇ?! なんで?! 愛歌に教えてもらったようにしたのに?!」
何やら見慣れない札遊びをしているようだった。
「やっぱりイカサマしてた」
「あ、バレた?」
「もちろん。やられたらやり返すだけだけ」
「え?」
「あの……」
タイミングが掴めず変な間で声をかけてしまった。
「あ、ラヴィスさん。ごめんなさい。急の雨だったからお風呂沸かしてなくて」
ラヴィスというのはこの国で生活するために作った偽名だ。
本来の名は昔に忘れた。
「いえ、その先ほどの御礼を改めて申し上げておきたくて」
この二人の暗殺は命令にない。
普通にふるまっておこうと思う。
「それは全然大丈夫なのですが、白さんに少し話がありまして……」
「ん? ああ、そういうこと……」
どういう事なんだ。
「そこの部屋にいるよ」
「そうですかありがとう」
その扉の前まで行き手をかける。
「一応魔法で防音加工してあるんだけど、気を付けてね」
一瞬心臓が跳ねる。
暗殺がバレたのかと思ったからだ。
だけどすぐに別の意味だと理解する。
「な、何のことだか……。私はあの方にもお礼を言わなくては」
笑顔でそう言った。
「わかってますよ。何と勘違いを?」
「……」
随分とお節介な人もいたもんだと思った。
扉に目を戻す途中、一瞬もう一人のフードを被った少女目が合った気がしてまた心臓が強く鼓動を打ったが、気にしないフリをして扉を開け中に入った。
「? ノアちゃんどうしたの?」
「いや、別に」
「そっか。あ、そういえば」
パタン。
その辺りで扉が閉まる。本当に防音遮音効果のある何かを施しているようだ。
「……」
その部屋は真っ暗になっていた。
ベッドに人一人分のふくらみができている。
扉とは反対側、窓の方を向きながら寝ているようだ。
(なんだ。魅了をかけるまでもないじゃない)
彼女はベッドに近づいていきナイフを取り出す。
そしてハクの首を搔き切った。
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