第6話:かつて魔王と呼ばれた男(2)
「もう……、ぐっちょぐっちょ。傘持ってくるんだったな」
スコールの中を急いでいた時のこと。
大通りを歩いていると、路地から1人の女性が出てきて白にぶつかった。
20代前半くらいに見える女性だった。
「あ、あの、助けてください」
女性が白に言った。
後に続くように二人の男が路地から出てくる。
どちらも大柄で人相が悪く、片方は斧を担いでいて、もう片方は2本の短剣を持っていた。
「ぅわ、何だこのテンプレ」
白がぼやく。
いや気持ちはわかるけどさ。
「助けてってのは、こいつらを追い払えってこと?」
「え? えぇ……」
何を当たり前のことを……。
ほら女性も何を当たり前のことをって顔してるよ。
「俺ら冒険者だから高くつくけど、それでいいなら」
「は?」
「バカ。手間にもならないんだからササッとやっちゃえばいいでしょ?」
何を言い出すかと思えば、本当にこの男は……。
「わかってる。ちょっとふざけただけだ」
「おいおい。手間にもならないって? 言ってくれるじゃねぇか」
「てか、こっちの女も割と上玉だぜ」
「キモ……」
割とで悪かったね。
「はぁ……、仕方ない」
白が霊砲で突き飛ばすと、2人とも壁に叩きつけられその場で気を失った。
「これでいいんだろ?」
「そそ」
女性は呆然としていた。
「ほら、こいつらが起きないうちにさっさと帰んな」
改めてみると綺麗な女性だった。
二つ結びの髪がよく似合っている。
「あ、は、はい。ありがとうございます。で、ですが、その、帰る場所が無くて……。よろしければ一晩泊めていただけませんか?」
「は? いやだけど? あんたみたいな女を連れ込んだら碌なことにならな痛?!」
何か口走りそうになっていた白の頬をつねる。
「何すんだよ」
「何言いだすの……」
「男に負いかえられてて変える場所がない女なんて絶対めんどくさいぞ。俺は嫌だね」
「いいじゃん。1日くらい泊めてあげれば」
「じゃあ、夜空がつれかえりゃいいだろ」
いや、一緒のとこ住んでるんですけど?
「じゃ、そうしますよ。ほらいきましょ」
「あ、ありがとうございます」
うん。まあ。
だからモテないんだろうな、この男は。
それが白の味ではあるんだけど……。
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